研究者は本当に世間的に思われている程高給取りでかっこいい仕事か?

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イメージと実際はやはり違うのか?

実験室での白衣を着ての仕事、試験管やフラスコ等実験器具を使っての実験、いかにも高そうな機械を使っての作業等々、やっている内容について知らない人が見ても、大概は、「すげ~!」とか、「かっこいい!」とか、「給料いいんでしょ?」等といった印象を持つことが多いようですね。しかし、その分野の仕事をしてきた筆者としては、「そうでもないんですよ」と答えたいところです。確かに、そういったスタイルの仕事でも、大学教授や、薬剤師等は、印象通り給料が多い人もいるでしょう。でも、大抵の研究者、いわゆる17号業務と言われている仕事は、それほど給料がいいものではありません。むしろ、営業マンや商社マン、証券会社よりずっと給料が安いことが現状なのです。では、仕事の実態について、筆者の経験から追跡してみましょう。

バイオ系や化学系は仕事に非常に経費が掛かる

まず、バイオ系について見てみましょう。この写真からは、どんなことをしていることが想像されますか? バイオといえば、無菌操作と、バイオハザードが必ず関係してきます。無菌操作といえば、例えば、動物細胞の培養には、高栄養の培地が使われます。様々なアミノ酸や糖、ミネラル、ビタミン等の生理活性物質が含まれている液に牛などの血清を加えた培地です。そう、高栄養と聞いて、ピンと来た方もいるでしょう。栄養が高いということは、それだけ雑菌が入りやすいということです。雑菌が入ってしまったら実験そのものがパーになってしまうのです。動物細胞よりも、雑菌の方がはるかに増殖し易いので、雑菌に汚染されたら元も子もありません。バイオでは、汚染されることを、コンタミネーション(略してコンタミ)と言っています。ちなみに、化学分析では、分析試料に違う物が混入して汚染されることをコンタミと言っています。このコンタミとなる原因は、まず、作業者の呼気、飛沫、手指、服等です。なので、この写真では、呼気が入らないように、フードの付いた実験台で、シャッターを下ろして手だけを入れて作業しています。更に、手指も実験する上では汚いという認識でいなければならないので、手指から雑菌が入らないよう、ゴム手袋をしています。また、少量ずつ分注出来るように、マイクロピペットで操作しています。無菌操作だけでなく、バイオハザードにも細心の注意を払う為、実験室内で扱ったものを決して外には出さないという封じ込め設備も必要です。封じ込めは、普通の化学の実験室にオートクレーブ等の滅菌器を置けば十分なものから、エボラウイルスや天然痘ウイルスのように、致死性が高く厳重な設備で作業を行わなければならないものまで様々です。何が言いたいかというと、これらの作業には、まず、高額な設備が必要とし、消耗品も、かなり高額なものを湯水の如く使いますので、ランニングコストも高く付きます。コンタミを極力抑える為に、使い捨ての器具も多く、それらも、使い捨てにしては決して安くはありません。また、扱うものを物理的封じ込めをする為にも、大がかりな設備を作らなければなりません。作業そのものも、やってみれば、写真や映像で見る程華やかではなく、単純作業も結構多く、泥臭い仕事です。そう、仕事をする上で、大変経費がかかります。経費がかかるということは、余程の当たりが出ない限り、労力の割に給料は高くないことが多いのです。なので、イメージの華やかさだけで憧れる人は、実態を知ったら嫌気がさしてやっていられなくなります。それでもこの分野をやろうとするのは、もちろん、スキルや知識、能力も求められますが、やはり、給料以前に、「好きだから」ということになります。

化学系もやはりイメージより給料が低いか?

化学系も、バイオ系ほどではありませんが、やはり設備や消耗品に大変経費がかかります。分析の場合、特定の物質を分析するには、標準試料というものが必ず必要になってきます。まず、鉛(Pb)を分析したいとしましょう。それには、鉛の標準溶液で、0.1ppmとか、1ppm等といった感じに、予め濃度が決定している試料を作ります。そして、それらで検量線を作り、ターゲットの試料を分析して濃度を求めるということになりますが、その標準試料が結構高いです。また、その分析機器としては、原子吸光分析装置またはICP(発光プラズマ)を用いますが、特にICPは比較的安い機種でも1000万円は超えます。更に、有機化学となると、分析においては、ガスクロマトグラフィー(ガスクロまたはGC)や液体クロマトグラフィー(液クロまたはLC)を用いますが、これらも、質量分析を付けたGC-MSまたはLC-MSも安くても1000万円程度、高い物は億単位となります。というように、仕事そのものに大変経費が掛かり、減価償却にも時間が掛かります。かといって、あまりにお客さんから頂く費用を高くしてしまうと、他の会社との競争に勝てず需要がなくなってしまいます。それで社員の給料を少なくするか、経費を抑える為に正社員を出来るだけ少なくして派遣社員を多くとる会社も増えてきています。よって、化学系の仕事も、考えているより給料が高くないのが現状です。

結びに

以上、研究職の給料については、筆者が関わってきた化学系とバイオ系について述べてみましたが、仕事そのものに経費が掛かる為に高い給料にならないと感じるところが多いのが現状でした。本当にそうしているかはわかりませんが、給料を見ると、「皆さんが思っているのとはかけ離れているのが多いんですよ」といったところです。現状は、端から同情される仕事をしている仕事でも、研究職より高給な仕事は山程あります。それでもやりたいのは、やはり、その分野が好きだから、或いは、その分野にどっぷりと浸かってしまったらかえって、他のところで働くのが難しいからといったのが理由です。給料とやりたい内容が両立しているところで仕事が出来るのが、一番の理想ですね。

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