理想的な「奨学金」とは何か?

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あるべき奨学金の在り方とは?

先日の新聞報道で、「返済する必要のない「給付型奨学金」の制度を大学の78.8%が備えているが、募集人員は学生の6.5%にとどまった」とのことでした。

これは、奨学金そのものの内容に問題があるためで、本当に奨学金が必要な学生に応えきれていないことが原因です。

お金がないとき理想的な奨学金とはどのようなものでしょうか?

奨学金とは

ところで、奨学金とはそもそもどのようなものでしょうか。

公的な機関である「独立行政法人日本学生支援機構(Japan Student Services Organization、以下「JASSO」」)の奨学金を例にとって説明してみましょう。

まず奨学金の目的は、「意欲と能力のある学生などが、経済的な面で心配することなく、安心して学べるようにするために金銭を貸与するもの」です。

申込み方法は、入学前に予約する「予約採用」、入学後に申し込む「在学採用」、家計が急変したときに申し込む「緊急採用・応急採用」と、大きく分けて3種類あります。

申し込み手続きは、在学する高校や大学などを通して行われます。

「予約採用」の無利子奨学金の募集は、例年入学前年度5~7月中旬頃、「有利子奨学金」の募集は例年入学前年度の5~7月中旬頃・10月~11月下旬頃の2回及び1月中旬頃の予備日で、「在学採用」の募集は例年春に行われます。

学校が定めた募集期間内に、学校で申し込み手続きを行わなければなりません。

また、「緊急採用・応急採用」は、災害や家計の急変などで緊急に奨学金が必要になったときに、随時申し込むことができるようになっています。

JASSOの奨学金の場合、国内の大学や短期大学、高等専門学校、専修学校、大学院に進学する人はもちろん、海外留学を希望する人も受けられるようになっています。

また奨学金には、無利子で貸与を受けられる「第一種奨学金」(以下「無利子奨学金」)と有利子の「第二種奨学金」(以下「有利子奨学金」)の2種類があります。

ただし、これらの奨学金は、本人の学力と家計の状況をもとに選考・採用されます。

「無利子奨学金」は、特に優れた学生でありながら、経済的理由により著しく修学困難な人が対象です。

また「有利子奨学金」は、学修意欲のある人を広く対象としており、選考基準は「無利子奨学金」よりもゆるやかです。

奨学金の返還は、卒業後に行うことになります。

この返還は自分が借りていた「奨学金」を返すというより、後輩が利用する奨学金の「財源」だという考えで、ある意味では「年金」の考え方に似ています。

「奨学金」の返還は、貸与が終了した翌月から数えて7ヶ月目に始まります(例:3月に卒業する人は10月から)。

リレー口座(ゆうちょ銀行・銀行・信用金庫・労働金庫の預貯金口座からの自動振替)に加入し、月賦(月1回)または月賦・半年賦(6ヶ月に1回)併用で返還していきます。

最近は厳しい経済・雇用情勢の影響で、大学生などの就職をめぐる環境も厳しいことから、返還できるかどうか不安に感じる人も少なくない状況ですが、返還する人の経済状況に合わせた柔軟な返還ができるように、返還期限を猶予したり、割賦金(月々の返還額)を減額したりする制度を設けています。

まず「返還期限猶予制度」ですが、これは卒業または退学後に、災害や病気、生活困窮などのやむを得ない事情によって返還が困難になった場合には、返還期日の前に手続きを行うことができます。承認されれば、返還期限が猶予されます。

返還猶予期間は、1年ごとの更新制となり、経済的な事情による場合は、合計5年間まで猶予されるシステムです。

なお、平成26年度は特別に予算が組まれ、返還期限猶予制度は、本来の5年間から10年間に延長されました。

次に「減額返還制度」ですが、これは当初定めた割賦金の返還は困難ではあるが、半額であれば返還できるという人のために、割賦金を2分の1に減額するという制度で、平成23年から導入されました。減額期間は1年ごとの更新制で、最長10年間まで延長できます。

貸与型奨学金の現状

前述のように、奨学金制度はかなりしっかりしたシステムが組まれていますが、「貸与型」であるため、卒業後にきちんと返せないのでないかと不安に思う人にとっては、なかなか申込みづらいところもあります。

朝日新聞では、次のような例が紹介されていました。

20代の男性高校教諭は夫婦で700万円近くの奨学金返済額を抱えています。

家賃や食費を差し引くとほとんど手元に残らず、貯金もできないということです。

妻は、自宅でピアノ教室をして家計を支えていますが、月4万円の返済が重くのしかかると言います。

また夫である男性教諭は、「出産、育児となると、妻は仕事を休まなければならず収入も減る。返済が苦しく、将来が不安だ」と言っています。

また、上記とは別の男性高校教諭の話では、奨学金を借りなければ大学進学できない生徒が、将来の返済に対する不安から進学そのものをあきらめたり、進路を変えたりするケースもあると言います。

給付型奨学金とは?

そのような「貸与型奨学金」のデメリットを解消したのが、返済義務のない「給付型奨学金」です。

朝日新聞と河合塾が、国公私立大学746校(回答628校)を対象に行った共同調査によると、学生への支援策として、「給付型奨学金」を行っている大学が74.8%、「貸与型奨学金」を行っている大学が38.4%、「授業料免除」を行っている大学が84.6%でした。

また、「貸与型奨学金」は私立大学が国公立大学よりも多い傾向にあることも分かりました。

ただし「給付型奨学金」の場合、財源の問題があるため、募集人員が少なかったり、成績などの要件が「貸与型奨学金」よりも厳しかったりして、希望する学生に十分満足できる制度とは言えません。

この共同調査では、「給付型奨学金」の募集人員の学生数に占める割合も調べていますが、国公私立大学全体で6.5%、国立大学は4.1%、公立大学は3.2%、私立大学は7.2%という結果でした。

このことから、せっかく「給付型奨学金」という制度があっても、それを使えるのはほん一握りの学生だということが分かります。

奨学金と大学の現状

また、同時に浮き彫りになったのは、大学の学生に対する経済援助の現状です。

57.9%の大学で、学生への経済的援助が「やや不十分」「不十分」と考えていました。

また、その対策としては、国による「給付型奨学金」(81.6%)、「運営費交付金などの増額」(53.0%)が必要と答えています。

一方で、大学の自助努力で支援すべきだとする大学は、わずか6.2%でした。

奨学金問題に取り組んでいる中京大学の大内裕和教授によると、大学独自の奨学金にJASSOの奨学金も加えると、大学生の2人に1人が奨学金を利用し、その大半が「貸与型奨学金」だということです。

中には60歳になっても、返済が完了しない人もいて、「奨学金がローンになっている。給付型をもっと充実させるべきだ」と言っています。

奨学金以外の援助

大学生・大学院生への経済的支援の方法としては、奨学金を始めとして、授業料の減免措置、アシスタントとしての雇用があります。

大学の担当窓口や自治体の教育委員会などに情報が集まる仕組みになっています。

もっとも利用者が多いのが奨学金で、JASSOが行うもの、大学が独自で実施しているもの、民間団体が行っているもの、また企業や自治体が行っているものと、実に多岐にわたっています。

その中でも、最も利用者が多い「奨学金」が、JASSOです。実に130万人以上の学生が利用しています。

また、授業料の減免は、2013年には23万人が半額、または全額などの減免措置を受けています。

特に国立大学での利用者が多いといいます。

また、アシスタントとして雇い、給料を支払うという制度は、主に大学院生が対象です。

ティーチング・アシスタントとして大学生への助言や実験の補助をしたり、リサーチ・アシスタントとして大学が実施する研究プロジェクトなどに補助者として参加したりします。

2012年の調査結果では、ティーチング・アシスタントが月平均7千円、リサーチ・アシスタントが月平均7万8千円の支給額でした。

奨学金の今後

卒業後の収入を考えて奨学金の申し込みを躊躇する高校生、正規の職業に就けないため奨学金の返済が滞る人など、奨学金を取り巻く状況は厳しさを増しています。

しかし、奨学金の返済に苦しむ人々に対しては、NPO法人や奨学金問題に取り組む団体などがあり、相談機関では「ぜひ利用してほしい」との呼びかけが行われています。

また最近では、奨学金の返済に苦しむ人たちを支援する目的として、2013年3月に弁護士などによって、東京に「奨学金問題対策全国会議」が設立されました。

さらに、2013年6月には、兵庫県に「奨学金問題と学費を考える兵庫の会」が結成されています。

このように、全国各地で続々と奨学金問題に取り組む団体が設立されているのです。

また、薬学部の学生であれば、薬局の中に独自の「奨学金制度」を設けているところもあります。

奨学金を滞納している人の90%が、年収300万円以下の人たちであるという調査結果もありますから、将来的には、延滞金はなくし、無利子にすべきとの声も上がってきています。

今後は、救済措置や相談機関などが確立し、「奨学金」の滞納に苦しむ人たちが救済されるような制度づくりが必要です。

奨学金の制度は見直しの時期に来ている

「奨学金」は、経済的理由で勉学を続けることが困難な学生を救済する制度ですが、「貸与型」では利用しにくい面があるので、「給付型」の拡大などの制度の見直しが必要です。

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