「お金」で「損」をしないために‐覚えておくと便利な民法1

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基本的な「民法」の内容を知っておき、いざという時に役立てよう

法律は、専門的に勉強した人や学生時代に専攻した人でもない限り、意外と基礎的なことでも知られていないことが多くあります。

特に「民法」は私達にとって最も重要な法律であり、日々私達は「民法」のきまりに従って取引などをしています。

しかし具体的に「民法」の条文に触れる機会など、法学科の学生か専門職の人以外ではほとんどないのが実情だと思います。

そこで今回は、「お金」などの「財産」を巡ってのトラブルになりやすい事柄について、関係の出てきそうな民法の条文を紹介し、解説をしていきます。

「詐欺」による意思表示の取り消し‐民法96条2項

まず例を挙げましょう。

たとえばAという人が、Bという人から100万円借りたとします。Bさんは、Aさんがきちんとお金を返してくれるか不安だったので、誰か保証人を立てるように要求しました。

つまり、Aがお金を返さなかったならば、その保証人からお金を返してもらえるように「保証契約」を結ぶ相手を探すように言ったわけです。

そこでAは知り合いのCさんにBさんと「保証契約」を結ぶように依頼しました。

基本的に「保証契約」というのは保証人と債権者との間で「個別に」結ばれるものです。主債務者はもちろんAですが、保証契約自体はCさんとBさんとの間で締結されます。

しかし、CさんはAのBさんに対する借金は10万円だと思っていました。

なぜならばAにそう言われたからです。

特に不審に思わなかったCさんはBさんとの間で保証契約を交わし、「100万円の」保証契約書にハンコを押してしまいました。

つまり、CさんはAに「騙されて」Bさんに対するAの借金100万円の「保証人」になってしまったことになります。

しばらくしてその事実に気がついたCさんは、この保証契約を取り消すことができるでしょうか?

これは「第三者による詐欺」というケースに該当します。

なぜこの場合「第三者」になるかといえば、既に述べたように保証契約自体は債権者と保証人の間で「個別に」結ばれるからです。

Cさんの結んだ保証契約の観点からすれば、主債務者であるAの存在は「第三者」にあたるのです。

このような詐欺は現実にも多くあると考えられます。

ですので、この機会にどういう法律判断が下されるのかを知っておきましょう。

該当条文は民法96条の2項です。

『96条2項:相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる』

つまり第三者による詐欺の被害に遭った場合は、取引の相手方が「詐欺によって騙された結果、こちらと取引したのだという事実を知っていたかどうか」によって取り消すことができるかが決まるということです。

上の例の場合、債権者であるBさんが詐欺の事実を知っていたかどうかが鍵になるのです。

知っていたときはCさんは取り消しが可能ですが、知らなかったときは残念ながら契約を取り消すことはできません。

そうなった場合は、Aを訴えることで保証契約とは別に決着をつけなくてはならなくなるでしょう。

保証契約自体をCさんの側だけでどうにかすることはできないのです。

ちなみに、「詐欺」に似た案件に「強迫」があります。「強迫」とは文字通り「脅す」ことです。

暴行や監禁の類を「するぞ」と脅したり、実際に行うことによって人に恐怖を与えて言うことをきかせるわけです。

上記の例でいえば、AがCさんを暴力などで脅して無理矢理にBさんと保証契約を結ばせた場合などに該当するわけですが、この場合はその事実をBさんが知っていようがいまいが取り消すことができます。

「詐欺」の場合は、上の例からもわかるように、Bさんが契約内容について詳細に調べなかった点についてある程度の過失があるわけですから、相手方のCさんが知らなかった場合は、Cさんの取引保護をはかる必要からBさんは取り消すことができません。

しかし「強迫」の場合は、とにかくCさんの保護をはかることが優先されるのでBさんが詐欺の事実を知っていようがいまいがBさんは取り消しができるのです。

債権の消滅時効‐民法167条

私達にとっては「時効」という言葉自体は馴染みのあるものでも、実際にこの制度の世話になる機会はあまりないと思います。

しかし、いざ必要になるときはたいてい「お金」の貸し借りや「資産」についてのトラブルに巻き込まれた場合が多いでしょうから、そんなときのために知っておくことをお勧めします。

案外、言葉はよく知っていても果たして「何年で時効が成立するのか?」を知らない人は多いのではないでしょうか?

ちなみにテレビドラマやミステリー小説でよく出てくる「時効」はたいてい殺人などの時効であり、民法ではなく刑法および刑事訴訟法の分野ですので取り上げません。

該当条文は民法167条です。
『第167条1項:債権は、十年間行使しないときは、消滅する
      2項:債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する』

条文を見ればすぐにわかる通り、たとえばAがBに50万円貸したとして、そのまま10年間放置しているとBの50万円返さなければならないという債務は消えてしまいます。

仮にその後にAが裁判でBに対して50万円の請求訴訟を起こしたとしても、Bは法定で

「借りてから10年経過しているので、時効を援用します」といえば終了なのです。Aは裁判を起こすだけ無駄ということです。

Aは時効が成立する前に、請求などにより「時効を中断」させるなどしておけば救いはあったわけです。

「お金」を貸した・借りたなどの「債権」の場合は10年で、それ以外のものは20年で消滅時効にかかりますので、お金を貸すことがある場合は必ず覚えておきましょう。

 

所有権の取得時効‐民法162条

上記の「消滅時効」に対して「取得時効」というものもあります。

まずは条文をみてみたいと思います。

『第162条
 1項:二十年間、所有の意思をもって平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、 
 その所有権を取得する。
 2項:十年間、所有の意思をもって平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、そ
 の占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときはその所有権を取得する。』

まず「占有」とは自分のために「意思」をもって、その物を所持している状態をいいます。

「所有」との違いは、現実にその物が「今誰の支配下にあるのか」というところです。

抽象的で分かりづらいかもしれませんが、要は、ある物があなたの「支配下」にあったとしても、それが他人の物ならば「所有」ではなく「占有」している状態ということです。

逆に、他人の支配下にあったとしてもそれがあなたの物ならば、その物をあなたが「所有」していることになります。

次に「平穏」と「公然」についてですが、かなり漠然とした言い回しになっていて、知らなければ今ひとつピンと来ない人もいるかもしれません。

これは簡単にいえば、他人から「無理矢理に」占有を奪ったり他人に見つからないように「隠れて」占有をしていた場合は認められないということです。

あくまでも土地なら土地を、客観的に見て「所有しているかのごとく他人から見えるような」状態を20年続ければ、「時効」によってたとえ他人の土地であっても自分のものにでき
る可能性があるということです。

そして重要なのが、2項にある「善意」です。この逆を「悪意」といいます。

法律の世界では「善意」というのは「知らないこと」を意味し、「悪意」とは「知っていること」を意味します。道義的、倫理的な意味での「善」「悪」とは関係ありません。

つまり、他人の土地を他人の土地であると「知らなかった」場合は「善意」となり、逆に「知っていた」場合は「悪意」となるのです。

これを踏まえて162条をもう一度読んでみると、1項では「悪意」だった場合について、そして2項では「善意」だった場合について書いていることがわかります。

なお「所有の意思をもって」という表現のポイントは、「客観的に見て」所有していると判断されるということです。

自分が「所有していると思っている」ことは要件に含まれませんので注意が必要です。あくまでもその「外形」で判断されます。

たとえばAという人が、隣の空き地を他人の土地であると知らずに10年間耕し続けたとします。

その場合は客観的にみてAさんはその土地を所有しているが如く使っていることがわかりますし、Aさん自身もその土地を所有する「意思」があると外形的に判断できるわけですから、

10年が経過した時点でこの土地をAさんは「時効取得」できる可能性があるということです。

また、他人の土地であると「知っていた」場合でも、同じ状態を20年間続けると、162条1項によりその土地の所有権はAさんのものになるのです。

仮にこの時点で真の持ち主がAさんを訴えたとしても、裁判でAさんが所有権を主張すれば元の所有者は勝つことができません。

ですから極端な話、空いている土地を見つけて上の例と同じような状態を20年間続ければ、その土地が誰のものであろうが自分のものにできてしまうわけです。

しかし、現実にはこのようなことは滅多に起こらないでしょう。近場であるならば所有者がすぐに気づくでしょうし、「所有の意思」を示すためにある程度の「外形」を作る必要があるため、その過程で真の所有者に「バレて」しまうことが多いでしょう。

むしろ、あなたが遠方に土地などを所有していた場合、誰かが勝手にあなたの土地を「占有」していないか気をつけるべきだと思います。

条文自体を覚える必要は全くないが、要旨だけでも覚えておこう

今回は、「お金」や「財産」に関してトラブルとなりやすい事項について、関係する可能性のある民法の条文を3例だけ紹介しました。 民法自体は1000条を越える条文がありますし、今回挙げた例以外にも数え切れない程の重要条文がありますので、折に触れて紹介していきたいと思います。 決して条文自体を覚える必要はありませんが、「お金」などの「財産」を守るために必要となることもありますので、この機会に基本的なことだけでも覚えておくことをお勧めします。

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