非正規労働者の問題点!同一労働同一賃金は実現するのか?

shutterstock_257515936

非正規の労働条件は改善されるか?

   

安倍晋三総理は、1月22日の施政方針演説で、労働法制の見直しに強い意欲を示しました。

その一つとして「同一労働同一賃金」の実現を図る予定ですが、これは非正規労働者の待遇を改善しようとするものです。

どのような問題点があるのでしょうか。

非正規労働者とは?

   
端的な言い方ですが、非正規労働者は、「正社員」「正職員」と呼ばれる従業員の対極にある労働者だと考えて良いと思います。

  
 その観点で考えれば、以下のことが言えます。

 
・給与が少ない(例:時間当たりの給与が少ない、退職金がない、ボーナスがない)

 
・雇用が不安定である(例:有期雇用)
 
 
・キャリア形成の仕組みが整備されていない(例:幹部までの昇進・昇級の人事系統に乗っていない、能力開発の機会に乏しい、就労を重ねても知識・技能・技術の蓄積されるような業務でない)。

   
法律的な雇用形態の分類から考えれば、 有期契約労働者、派遣労働者(登録型派遣)、パートタイム労働者のいずれか1つ以上に該当するような労働者の雇用を指すことが一般的です。

   
ヨーロッパやアメリカには、日本や韓国のような正規、非正規という明確な区分はありません。

日本では、「パートタイマー」「アルバイト」「契約社員」(期間社員)「契約職員」(臨時職員)「派遣社員」(登録型派遣)と呼ばれるような職員の雇用が非正規雇用になる。

非正規労働者の特徴

  

非正規雇用の特徴は、正規雇用に比べて時間あたりの賃金が高くありません。

例えば、女性の生涯賃金の推計でも、正社員として働き続ける場合と出産退職後パートタイマーとして再び働き出した場合では、賃金だけで2億円近い差が生まれるとしています。

雇用契約期間が短く、一般的に最長でも1~3年程度しかないため、雇用が不安定です。

仮に雇用契約期間が5年を超えた場合は、正規雇用に法律的に切り替えなければならないとしています。

また、景気が悪くなれば、真っ先に非正規雇用の従業員を優先的に解雇するなど、人員削減の際に調整弁として好都合に使われています。

そして、単純業務のための安価な労働力として利用されていることが多く、キャリアアップの機会に乏しいという点もあります。

また、勤続しても給料がほとんど上昇しない、正規雇用の多くが年齢給あるいは職能給であるのに対し、非正規雇用の多くは定期昇給のない職務給である、労働時間が短い(1日当たり3~6時間程度)、福利厚生が正社員に比べて、充実していない、正社員になることが難しい等の特徴があります。

仮に正社員で採用されたとしても、それだけで必ずしも終身雇用が保証されることにはなりません。

  
次に、雇う側のメリットとデメリットを述べます。

 
 まずメリットは、以下のとおりです。

  
・需要や収益の変化に対応した調整を、職員の増減で行いやすい。

 
 
・時間あたりの賃金が安く、退職金や社会保険料を払わないことも多いため、人件費を抑制しやすい。

  
・社員の教育費が削減できる。

  
デメリットは、以下のとおりです。

 
 ・知識・技術を社内に蓄積しづらい。製造業では熟練工、サービス業ではいわゆるベテランが育ちにくい。

 
 ・派遣社員は社外の人間であり、派遣先企業や所属事務所が異なる派遣社員同士で情報交換などは必要ないためである。

  
・正社員と比べ会社に対する忠誠心・責任感が低い(特に派遣社員は派遣先の社員ではないため、他社の人間の派遣社員へ忠誠心・責任感を求めること自体ミスマッチといえる)。

  
次に、雇われる(労働者)側のメリットとデメリットを述べます。

 
 先ず、メリットは以下のとおりです。

  
・自分の都合に合わせて仕事の時間や期間を調整できる。

  
・副業・兼職(ダブルワーク)がやりやすい(正社員には従業員の副業を禁止しているところが多い)。

  
・多くは時給制であり、正社員のようなサービス残業を強いられないことが多く、その結果、自給換算では報酬が正社員とあまり変わらない場合もある(しかし職場によっては時給制の非正社員でもサービス残業が強いられる場合がある。また日給制や月給制の非正社員では正社員に準じてサービス残業が横行している)。

 
 ・多くの企業に触れて経験を積むことができる。

  
・すぐに代替の人材が確保できるため、採用されやすい(現金、個人情報、その他機密事項を扱う作業でなければ、保証人を要求しない場合もある)。

 
 次に、デメリットは以下のとおりです。

  
・時給に換算した場合の賃金が安いうえ、賞与が出ない。

  
・正社員と同じ環境の仕事であっても、低賃金である。

  
・非正規雇用のブルーカラーが、正社員のホワイトカラーより安い場合もある。

  
・勤続年数が増え、仕事の能力が上がっても昇給はほとんどない(=使用者にしてみれば人件費を抑制できる)。

  
・退職金が払われないか、正社員よりも低い。

  
・常に自分自身でスキルアップをはからねばならない。

  
・雇用形態が短期契約のため、将来への展望が不安定。

  
・若いうちは良いが、年を取ると選べる仕事がなくなっていく。

  
・短期雇用かつ低賃金であるため、数百万円から1千万円以上の資金(住宅・自動車ローンなど)の借り入れが不可能か、可能であっても高額な頭金を要する。

非正規労働者の実態

  
非正規雇用者は極めて弱い立場にあります。

2000年代は輸出産業である製造業が好調でしたが、人手不足は外国人労働者を含む派遣社員を中心に非正規雇用でまかなわれました。

そのため、日本国外市場の減速が製造業を直撃した2008年秋頃からの解雇・雇止めの増加は、まず非正規雇用者から行われました。

製造業の派遣社員は、派遣会社の提供している寮に入居している者が多く、職を失った多くの非正規雇用者たちが路上へ放り出されました。

また、製造業以外の職種でも非正規雇用労働者の解雇・雇止めが進みました。

経済学者の大竹文雄は「非正規社員を雇用の調整弁とすることを社会が容認している以上、非正規社員を雇い止めすることは企業にとっては完全に合理的です。

また、非正規切りについて対策を求めず、賃上げを求める労働組合の行動も、正社員の代表という立場として正当化されるべきです。

非正規社員を増やした段階で、不況になると非正規切りが起こるということはあらかじめ予測できたことである」と指摘しています。

ところで、大企業と中小企業とでは、大企業の方が非正規雇用の割合が高い傾向にあります。

また、男性と女性とでは、女性の方が増加傾向にあります。

特に若年層でその傾向があります。

例えば、バブル景気前とバブル崩壊とその後の景気回復とを比べると、若年層に占める正規雇用の割合は、男性に比べて女性の方が低下幅は大きいのです。

非正規雇用で働いている人たちの多くは、低賃金のため自活ができません。

  
経済学者の岩田規久男氏は、「アジアなどで生産される輸入品は、現地の未熟な低賃金労働者がつくっている。

それに対処するために、非正規就業者の賃金は低い水準に抑えこまれている」と指摘しています。

また、大竹文雄氏は、「必要な手立ては、非正規雇用への規制強化ではなく、正規雇用の既得権益にメスを入れることである」と指摘しています。

大竹氏は「労働市場の二極化に歯止めをかけるために、非正規と正規の雇用保障の差を縮小させることである。

非正規社員だけでなく、正規社員も景気変動リスクを引き受ける仕組みをつくる必要がある」と指摘しています。

  
さらに経済学者の田中秀臣氏は、「非正規雇用と正規雇用の待遇を同じにすれば問題は解決するという議論があるが、停滞が続く中でやっても単に失業者を増やすだけである」と指摘しています。

経済学者の伊藤修氏は、「財界の人たちや『多様な働き方の提供』という理屈で労働保護規制を壊している有識者は、自分の家族を非正規労働者にしたいとは思うのだろうか。自分が無理なものを他人に押し付けることは、人間としてのモラルに欠けるのではないか」と指摘しています。

非正規労働者と賃金

   
厚生労働省の調べでは、非正規労働者の労働者の占める割合は、2014年では4割に達しているとのことです。

月額で正規労働者に比べて4割近く低い賃金というだけではなく、雇用が不安定なことも問題となっています。

非正規労働者全体の5割近く、男性だけ見ると8割が自分の収入で主に生計を立てているということも深刻です。

労働組合である連合傘下の組合のうち非正規労働者は、93万人で全労働者の13.6%に当たります。

連合は、「全ての働き手の待遇底上げ」を掲げています。

春闘では、まず企業に正社員への転換を促すことを求めています。

非正規労働者の賃上げ要求は、自給千円以上の確保や、正社員との均等待遇を図る昇給ルールを取り入れることが中心です。

  
このような連合の方針を受けて、労働組合である自動車総連は2016年、直接雇用する労働者について、「時給20円」を目安に賃上げを求めることにしました。

月収に換算すると約3千円の賃上げになり、正社員の要求方針「月額3千円以上」と同じ水準になります。

昨年も、KDDIの労組は、契約社員のベースアップを求め、会社側も月平均4800円を回答しています。

しかし、業界をまとめる労組が要求しても、各社の経営状況によって、賃上げの回答も違ってきます。

政府の掲げる「同一労働同一賃金」の実現には、多くのハードルがあります。

非正規労働者の待遇改善には多くのハードルがある

    非正規労働者の待遇改善、特に同一労働同一賃金の実現には、景気回復などの多くのハードルがあり、難しい問題をはらんでいます。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でお金が無い.jpをフォローしよう!

非正規労働者の問題点!同一労働同一賃金は実現するのか?
Reader Rating 4 Votes