マツダ と スバル!個性的な自動車メーカー2社の「上手なお金の使い方」とは

合従連衡時代に、独自の生き方が注目されるメーカーたち

GM、VW、トヨタ…この3社をグローバルで「ビッグ3」と言い表すようになって久しい今日、世界の自動車メーカーすべてが「量」を追うのか「質」を追うのかで、ベクトルが二極化している、と考える人たちがいます。

とりわけ、経済に詳しい専門家の間では、自動車メーカーは「規模が大きくなければ、今後生き残れない」と語るのが常識、とさえ言われます。

世界各国の自社工場から、新車を生産し、1年間に販売した台数。

それが、1,000万台に到達した トヨタ自動車。

方や、欧州の雄、ドイツの VWこと、フォルクスワーゲン。

そして、アメリカの巨大メーカー、GM(ゼネラル・モータース)の三すくみの争いが、2015年も熾烈を極めました。

欧州とアメリカは、もともと自動車メーカーの数が多く、100年の間に集約され、各国に3社から4社程度がグループを束ねるように残っています。

特に、アメリカは、GM・フォード・クライスラーの3社が乗用車メーカーとして残り、商用車メーカーではフレイトライナー・スプリンター、パッカー、マック、ナビスターに集約されています。

さらに言えば、クライスラーはイタリアの フィアット と「フィアット=クライスラー」というグローバル企業になり、商用車の フレイトライナー・スプリンター はドイツの「ダイムラー」の子会社となり、マック は「ボルボトラック」の子会社、と国際化が進んでいます。

こうした生産台数・販売台数を競うメーカー、あるいは高級スポーツカーを生産するメーカーなどに、欧米諸国の自動車業界が特徴がはっきりさせている中、日本だけは非常に「面白い」現象が起きていることが知られています。

それが、今回取り上げる「マツダ」「スズキ」「スバル」「いすゞ」といった独立系メーカーなのです。

赤色「塗装」に賭けている、マツダ

平成27年(2015年)3月期決算 から、マツダの現状を見ていきましょう。

《売上高》  3兆339億円
《営業利益》  2,028億円
《売上高営業利益率》 6.7%

マツダは、歴史的に見て、デザインとエンジンに力を入れているメーカーです。

2015年現在、そのラインナップは小型乗用車の「デミオ」、欧州で大変売れている「アクセラ」、セダンの「アテンザ」とミニバン(注:ミニバンは、2017年以降は生産しない、というリリースがある)、そして SUVの「CXシリーズ」と「ロードスター」。

注目点のひとつは、その価格帯(メーカー提示)に特徴がある、ということです。

例えば、主力のコンパクトカー「デミオ」もボトムレンジは140万円程度ですが、スポーツアレンジでは200万円のプライスが掲げられ、SUVに至るまでその主力価格帯は、ほぼ250万円台です。

高級セダン、アテンザが唯一400万円に届きつつあるのに対し、全世界で最も有名な「ロードスター」に至っては、250万円から320万円ほどで購入可能です。

このほかには、スズキから軽乗用車と軽商用車、日産自動車 と いすゞ自動車 から商用車を供給(OEM)を受けています。

《経常利益》 2,125億円

経常利益と営業利益の差は 97億円。

つまり、マツダはカーメーカーとしての利益、2,125億円のうち、本業以外の儲けはで97億円。

この金額は、利益本体から見ればごくわずかであり、自動車に特化した企業であることを示します。

利益率6.7%(2015年度 は6.8%)、これは2015年のホンダや日産よりも高いことから、生産台数を追わずに、利益を勝ち取る方針を認めることができます。

マツダは軽自動車と商用車を生産せず、OEM供給に特化しています。

これは、生産拠点を持たず、在庫を抱えないメリットがありますが、他社製品に自社バッジを付けるだけなので、儲けもほとんどないのが実情です。

さて、マツダのテレビCM、ネットでの広告で気づくことは「赤塗装」のクルマばかりを宣伝に使用している事実。

漆黒の闇から、鮮やかな赤色のボディーが現れるシーンは、今やマツダのお家芸とも言える「定番宣伝」です。

エンジン性能、クリーンディーゼルなどを全面に押し出し、2014年3月決算からは、年間の広告宣伝費は「1,075億円」に上ります。

マツダの年間のグローバル新車販売台数は、150万台、これに対し、トヨタは、1,000万台・年間広告宣伝費4,000億円。

これだけ見ても、いかにマツダの宣伝費が多いのかがわかるでしょう。

マツダは、日本ペイントからソウルレッドと呼ばれる特殊な塗料を導入、その吹き付けに日本唯一と言われる「アクアテック塗装」を技術開発しています。

そもそも、自動車ボディーの塗装は乗用車の場合に、なめらかな凹凸にいかにムラなく塗装し、その耐久性と硬化が摩耗の被害を食い止められるのかが大事なポイントでした。

また、ウレタンクリア塗装自体は身近にありながら、希釈の際に「水性ベース塗料」と合わせることは、理想でありながら、困難だったのです。

環境問題への配慮から、こうした塗料の技術は大変な投資になりますが、デザインと赤色塗装の宣伝に、社運のすべてを賭けたマツダは、資本投入を進め、特にデザイン性・エンジン性能、乗用車の走るイメージ、そして環境への配慮の4点に大変うるさい「欧州マーケット」で、新生マツダ3、5、6シリーズ(デミオ、アクセラ、アテンザ)とCXシリーズが爆発的に売れるようになったのです。
 

独占禁止法の壁をうまく利用した、スバルの戦略

マツダの「赤」に対して、スバルのイメージカラーは「青」。

バッジデザインには、楕円の中に、鮮やかなブルーと6つの星、つまり「六連星(むつらぼし)」が描き出されているスバルは、社名が「富士重工業」。

民生用のスバル部門、航空宇宙部門(航空機の主翼などの製造)、産業機器部門(汎用エンジン、土木事業機械用エンジンなどの製造)と、軍事用部門(自衛隊納入の航空機製造、ヘリコプター製造など)を持ち、日本では唯一の陸空(民生・軍用)産業を持つ自動車メーカーです。

では、平成27年(2015年)3月期決算 から、富士重工の現状を見ていきましょう。

《売上高》  2兆8,779億円
《営業利益》   4,230億円
《売上高営業利益率》 14.7%

ポイントは、何と言っても「売上高営業利益率 14.7%」です。

これは日本の自動車メーカーでナンバーワンの実力であり、乗用車1台を製造し、販売した場合の利益率が最も高い会社であることを示しています。

営業利益の 94.8% は自動車部門、2015年の販売台数は「日本国内」が16.3万台であったのに対し、北米が57万台、ロシア・欧州が4.7万台、中国が5.4万台、豪州が3.9万台などと、北米での販売ウェイトが大きく、全世界でブランドの浸透が図られているのが認められます。

スバルはマツダ同様、軽自動車のラインナップがありますが、これはダイハツのOEMであり、主力商品は「レガシィ」「インプレッサ」「レヴォーグ」の3種。

ほかにもスポーツタイプの5ドア、SUV、スポーツカー「BRZ」と トヨタOEM のコンパクトが1車種ありますが、スバルの販売実績は オリジナルブランド そのものが圧倒的に強いことがわかります。

富士重工の強みは、資本内容です。

主要株主を見ると、筆頭が トヨタ自動車 で16.48%。

トヨタは15%以上の株式を持つわけですが、実はこれ以上は購入できなかったの理由がありました。

もし、トヨタが51%の株主となれば、完全子会社となりますが、独占禁止法によれば国内の乗用車の販売シェアが過半数になることは許されないのです。

トヨタとダイハツ、そこにスバルが加わって、国内シェアが半数を超えないようにするには、当たらず障らずの株主でいなければならなかったのです。

2008年にGMが持っていた持ち株の一部を買い取ったのが、トヨタ自動車ですが、その当時の経済アナリストの中は「富士重工は今後《トヨタの下請け》になる可能性が高い」とまで、断言していた人も少なくありませんでした。

ですが、見事に予想は外れました。

スバルはまず、トヨタの意向通りに軽自動車の生産を中止し、主力製品の レガシィ と インプレッサ を北米向けのサイズにアップさせます。

ここに、富士重工の真骨頂が明らかになります。

日本国内でのシェアをあえて下げ、トヨタを安心させて、自らはトヨタの北米生産(カムリ)を引き受けると同時に、レガシィとインプレッサ、SUVのフォレスターを北米向けにモデルチェンジしていったのです。

その結果、国内販売での5ナンバー枠という全長・全幅の縛りから解放され、スバル車種全てが一気に大型化へ加速していきます。

水平対向エンジンという、シリンダーが向かい合ったまま稼働する独特のエンジンを深化させたのも、大変魅力的になった原因でしょう。

このボクサーエンジンという名前のあるエンジンは、V型に配置されるエンジンよりもスペースを取りますが、振動が少なく、重心が低く高速安定が良いメリットがありました。

ですが、弱点はボンネット内にエンジン機能がいっぱいになり、トランスミッションがどうしても室内に干渉してしまいます。

これを解消するためにも、ボディーの大型化は避けられなかったのですが、結果的に北米ではこのエンジン性能と安全性(iSight)、ボディ剛性が話題となりました。

ただ、ここにはスバルの「ユニークなテレビCM」「感動させるストーリーCM」の力が大きいのも事実なのです。

スバルが生まれ変わった本当の一員は、トヨタの出資によって広告宣伝力が増した、つまり出資者のお金をうまく使ったことになるのです。

マツダとスバル。その戦略はまさに「宣伝」にお金をかけたことだった

デザインのマツダ、エンジンのスバル…自動車の好きな人たちの間では、このような言葉がよく語られてきました。 確かに、過去のマツダのヒット作といえば「コンパクトの《ファミリア》」であったり、「美しいプロポーションのスポーツカー《RX-7》」であったり、と言えましょう。 スバルは「レガシィ」「インプレッサ」の前は、「スバル360」という、文字どおり360cc時代の大衆車でした。 ですが、この2社は技術に磨きをかけたものの、経営的にはなかなか目立ったものがなかったのも事実です。 それを、現在の自動車メーカーグローバル化が、オンリーワンの技術に脚光をもたらした、と言えます。 大事なことは、技術力やデザイン力をいかに「宣伝」し「世界の人々の伝えるのか」ということ。 本当の宣伝は車を買った人たちが、口コミで流してくれますが、そこに至るまでの宣伝力、それこそお金を出す意味がある、ということなのです。

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