これだけは知っておきたい「労働協約」

「労働協約」とは何か?

   
先日、高校生がバイト先のコンビニと「労働協約」を結んで話題になりました。

そもそも「労働協約」とは何でしょうか。

詳しく説明します。

労働協約と高校生

  
 先日、コンビニエンスストア「サンクス」でアルバイトとして働く埼玉県の高校3年生の男子が、労働組合「ブラックバイトユニオン」を通じて「労働協約」を結んだと報じられました。

店の運営会社と「賃金支払いは1分単位」とすることが柱なっています。高校生が労働協約を結ぶのは珍しいと言います。

高校生が働く店では賃金が15分単位で計算されており、15分に満たない時間分は「ただ働き」させられていました。

今回締結した労働協約では、1分単位で賃金を支払う仕組みに改め、アルバイトを含む従業員約70人に未払い賃金計約500万円を支払う内容となっています。

高校生は「行動することが大きなことだと実感した」と話しています。

また、フランチャイズ本部が提供している店の勤務管理システムが、15分未満の労働時間を切り捨てることができる仕組みは不適切として、ユニオンがサークルKサンクスに改善を申し入れました。

同社広報は「店には1分単位での賃金計算を推奨している。システムを見直すかどうかはコメントを控えたい」としています。

労働協約とは?

   
労働協約とは、労働組合と使用者またはその団体と結ばれた労働条件などに関する取り決めのうち労働組合法に則って締結されたものを言います。

労働組合による団体交渉や労使協議により、労使双方が労働条件その他に関する事項を取りまとめた場合、労働協約と認められるためには、書面に記すことと、締結両当事者の署名または記名押印が必要とされています。

この要件を満たさなければ、仮に労使間に労働条件その他に関する合意が成立したとしても、これに労働協約としての規範的効力は付与することはできません。

組合の組織率は問わないので、少数組合であっても独自の労働協約を締結することは可能です。

労使間の合意文書の表題が「覚書」「了解事項」等の名称であっても、第14条に該当すれば労働協約ということができ、団体交渉記事録であっても、労使双方が署名したものであれば、その内容によっては労働協約と解釈されます。

労働協約の有効期間を定める場合、上限は3年です。

3年を超える有効期間の定めをした労働協約は3年の有効期間の定めをした労働協約とみなされます。

有効期間の定めがない労働協約は当事者の一方が少なくとも90日前に相手方に予告して解約することができます。

内容について特に制限はありませんが、個別的労働関係や団体的労使関係に関連していることを必要とします。

労使が合意すれば公序良俗に反しない限り基本的には当事者の自由となります。

労働協約は労働組合と使用者側との契約であることから、協約上特に適用範囲を限定しない限り締結した労働組合に加入している組合員全員に適用され、当該組合員でない者に対して効力が及ぶものではありません。

しかし、労働組合が以下のどちらかの要件を満たした場合は、その労働組合が締結した労働協約が当該組合の組合員以外の者にも自動的に拡張適用されます。

1 一工場事業場に常時使用される同種の労働者の4分の3以上の数の労働者が一つの労働協約の適用を受けるに至った時は、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても当該労働協約が適用されます。

・残り4分の1未満の同種の労働者が、当該協約を締結した組合以外の労働組合を別個に結成していたような場合でも、少数組合の既有の権益を侵害するものでないかぎり少数組合の組合員に対しても拡張適用されますが、少数組合が独自の判断で固有の労働協約を締結している場合には、多数組合の労働協約を少数組合に拡張適用することは許されません。

実際にはこうした場合、多数組合との労働協約に沿って就業規則を改定し、それを少数組合に適用することになります。

・非組合員等特定の労働者に労働協約の一般的拘束力を適用することが諸般の事情から見て著しく不合理であるとみなされる特段の事情があるような場合には、拡張適用は認められません。

2 一地域において従業する同種の労働者の大部分が一つの労働協約の適用を受けるに至った時は、当該労働協約の当事者の双方又は一方の申立てを経て、労働委員会の決議により、厚生労働大臣又は都道府県知事は当該地域において従業する他の同種の労働者及びその使用者も当該労働協約の適用を受けるべきことの決定をすることができます。

もっとも企業別組合が圧倒的な主流である日本では、第18条によって拡張適用が実現された例はきわめて少数しかありません。

国家公務員、地方公務員の「職員団体」(民間の労働組合に相当)には「団体協約」(労働協約に相当)は認められていません。

ただし、現業公務員の労働組合については特定独立行政法人等労働関係法第8条や地方公営企業等労働関係法第7条で組織の管理及び運営を除いた事項について労働協約権が認められています。

厚生労働省の調査によると、労働組合と使用者(又は使用者団体)の間で締結される労働協約の状況をみると、「締結している」91.4%、「締結していない」8.6%となっています。

企業規模別では、規模が大きいほど、労働協約を「締結している」とする労働組合の割合が概ね高くなっています。

労働協約と他の法令との関係

効力の優先順位は優位のものから順に、法令、労働協約、就業規則、労働契約となります。

使用者が一方的に作成・変更できる就業規則や、使用者と個々の弱い立場での労働者が結ぶ労働契約よりも、労働者の団体である労働組合が使用者と結んだ労働協約が優先する。

労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は無効となり、労働契約に定めのない部分についても、基準の定めるところによります。

また、就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならないと規定され、労働協約の就業規則に対する優先性を明らかにしています。

もっとも、労働協約が就業規則より優越するとはいっても、労働協約は原則として当該組合員にしか適用されないので、非組合員がいれば、均等待遇の要請から、実際には労働協約の趣旨に沿った就業規則の改定が行われなければ、労働協約の内容は実現できません。

労働協約が失効した場合、労働協約の内容を反映して規定された就業規則がある場合には、当該協約失効後はその就業規則によるべきです。

また、具体的な労働協約の内容が、どれほど組合員にとって不利益であっても、当該規定の内容が、特定のまたは一部の組合員をことさらに不利益に扱うことをあらかじめ目的として締結されたなど、労働組合の目的を逸脱して締結されたような場合以外は規範的効力に支障はありません。

つまり、労働協約については、たとえ労働契約の定めた内容の方が労働者に有利であっても労働協約の効力が優先します。

一方、就業規則については、就業規則の定める基準に達しない労働条件を定める労働契約を無効にしますが、基準を上回る労働条件を定める労働契約は無効にはなりません。

労使交渉がもつれたために労使が労働委員会に仲裁の申請をした場合、仲裁委員会が作成する仲裁裁定は労働協約と同一の効力をもちます。

もっとも厚生労働省の調査では、2003年(平成15年)を最後に仲裁による解決は行われていません。

労働協約の成立要件とは?

    
繰り返しになりますが、労働協約とは、労働協約とは,労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する協約であって、書面に作成され,両当事者が署名又は記名押印したもののことです。

従って、労働協約が成立するためには、以下の要件が必要であるということになります。

・労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する協約であること。

・書面が作成され、両当事者が署名または記名押印していること。

労働協約の当事者は、「労働組合」と「使用者またはその団体」です。

労働協約は、労働組合でなければ締結できないのです。

ここでいう労働組合とは、使用者の利益代表者の加入する組合または使用者から経費援助を受ける組合(自主性不備組合)でないことが求められると解されています。

また、労働協約の内容は「労働条件その他」に関するものでなければなりません。

この「その他」とは、個別的労働関係または団体的労使関係に関連するものであることを要すると解されています。

従って、政治問題等に関する協約は,労働協約には該当しないことになります。

さらに、労働協約は、「書面が作成され,両当事者が署名または記名押印している」ものでなければならないとされています。

要式行為であるということです。

労働協約とブラック企業

    残業代を払わない、過酷な労働を強いるなどのいわゆる「ブラック企業」が社会問題化しています。 今回の「コンビニ」と「高校生」との間で取り交わされた「労働協約」が問題解決のヒントになるかもしれません。

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