プライベートバンキングはなぜ強化されるのか?

プライベートバンキングは認知されるか

新聞等の報道によると、最近大手金融機関が「プライベートバンキング」という制度を強化しています。

このサービスは富裕層をターゲットにした制度ですが、果たして今後一般的に認知されるのでしょうか。


プライベートバンキングとは?

プライベートバンキング・ビジネスは、各金融機関がそれぞれの所属するグループ内で連携して、総合的な金融サービスを提供するものです。
(主に銀行・信託・証券・不動産部門の連携などです)

また顧客の多くが企業オーナーであるため、顧客の事業展開のためのファイナンスや事業継承対策も重要な業務となっています。

各社によって異なってはいますが、プライベートバンキング・ビジネスは主に以下のサービスを提供しています。

「資産管理」
資産全般のアドバイス、資産管理会社の設立支援などを行うことです。

「資産運用」
一任勘定を使用した資産運用などを行うことです。

「事業継承・資産継承」
顧客の次の世代への事業や資産の継承をより円滑に行うために、顧客へ助言を行うことを言います。

「税務・法律相談、コンシェルジュサービス」
顧客の人生をサポートするために、顧客の要望に応じ様々なサービスを提供することです。
弁護士などの専門家の紹介、慈善事業や財団設立支援、美術品に関するコンサルティング、子供の教育への助言、専門医の紹介なども行います。

ところで、日本の国内規制においては銀行・証券・信託にてファイヤーウォール規制があり一義的に顧客情報を共有できないため、包括的なワンストップサービスを行うことができません。

たとえ外資系企業であっても、国内で営業している以上は同様です。

国内金融機関及び国内の外資系金融機関が提供するプライベートバンキング・ビジネスでは、主に私募債・仕組債等の販売が行われています。
しかしこれはハイリスク・高コスト商品であり、顧客にとって必ずしも有利ではないと言われています。

また2010年代に入り、日本における外資系金融機関のプライベートバンキング業務は撤退が相次いでいます。

米大手金融グループのシティ、英HSBC、英スタンダード・チャータードが撤退しました。

口座開設に必要な金額があり、金融機関によりその金額は異なっています。

日本で事業を行っている金融機関では三菱UFJメリルリンチ・プライベートバンキング証券で1億円以上、USBで2億円以上、三井住友銀行で5億円以上、クレディ・スイスでは10億円以上となっています。

プライベートバンキングの歴史

プライベートバンキングはヨーロッパで発達しました。
現在でもヨーロッパにはプライベートバンキングを専門に業務を行う銀行が数多く存在します。

その中には王侯貴族の資産を預かる銀行もあります。
リヒテンシュタイン公国の公室の資産を預かるLGT Bank(1920年創業)、オランダ王室の資産を預かるMeesPierson(1720年創業)、イギリス王室の資産を預かるCoutts(1692年創業)などが挙げられます。

プライベートバンキングの伝統が長いヨーロッパと、近年になってプライベートバンキングが発達したアメリカでは顧客利益に対する金融機関の立ち位置が根本的に異なっています。

ヨーロッパのプライベートバンキングは資産の保全・運用をカバーする「富裕層の総合的な財務コンサルタント」の性格が強く、資産運用の考え方も保守的で、元本を減らさない「保全」に力点をおいています。

また、守秘義務など倫理観がしっかりしており、子供の教育相談など顧客の個人的な相談にものる、いわば「執事」に近い存在です。

一方アメリカのプライベートバンキングは、ハイパフォーマンスの資産運用を重視するのが主流であり、いわば「投資顧問」に近い存在です。

プライベートバンキングが顧客を引き付けた理由として、税務当局に対する情報秘匿があります。

しかし近年は、スイスのプライベートバンクを中心に顧客情報を米国政府に開示する動きが出たことから、その優位性を失うこととなりました。

世界のプライベートバンキングは、金融関係で有名なスイスや世界の経済の中心であるアメリカにおいて発達しています。
ヨーロッパではたびたび戦争が起きてきましたがスイスは中立を保ってきたため、安全な資産の逃避先として古くからプライベートバンキングが発達してきました。

周辺のヨーロッパ諸国だけでなく、国情の不安定な中東などの遠い国々からも顧客を集めています。

米ボストン・コンサルティング・グループの推計によると、世界のオフショア資産の27%(2兆ドル)がスイスで運用されています。
(オフショア資産とは投資家の法的な住居がない国で運用されている資産のことです。)

また、世界の富裕層の3分の1がアメリカに住んでおり、多くの資産がアメリカの金融機関によって運用されています。

プライベートバンキングの外資系の現在

2015年11月、東京・大手町の高層ビルにて、世界約50ヶ国で富裕層向け金融サービスを展開するスイスのUSB銀行が説明会を行いました。

USBの口座を持つには金融資産を2億円以上預ける必要がありますが、この10年間、口座数、預かり資産額とも右肩上がりでした。

顧客の大半は企業経営者だといいます。
世界各地の市場の調査と分析に基づいた投資戦略に沿い、客の資産状況などに応じた「オーダーメイド」の長中期的な資産運用を提案するほか、事業や財産の承継、子どもの教育の相談まで応じています。
顧客には専属の担当者がつき、基本的に交代しません。

日本のPB市場は、外資にとってなかなか攻略できない市場でした。

1980年代以降、シティバンクやHSBCなど欧米の金融機関が展開したが相次いで後退しました。

銀行への金融商品販売の厳しい規制や、投資に慎重な国民性などが壁となっています。

ですが、ここ数年の株高・円安を背景に投資に積極的な人が増加しました。
野村総合研究所によると、1億円以上の金融資産を持つ富裕層は2013年までの2年間で24%増え、約101万世帯になりました。

USB銀行の平尾恒明マネージング・ディレクターは、
「円の価値が落ち、富裕層が外国の通貨や債券に興味を持ち始めた。長い目でリスクを減らす運用の必要性を感じているようだ」
と話しています。

外貨建て商品に強い外資系には、追い風とみています。

2009年に日本のプライベートバンキング市場に再参入したクレディ・スイスは、この3年で預かり資産を倍増にしました。

今後5年で、1億2千万円以上の資産を持つ日本の「ミリオネア」は約70%増えると見込んでいます。

大橋雅英プライベートバンキング共同本部長は、
「会社に(利益をためる)内部留保をしている経営者も多い。会社の承継や売却の支援がますます重要になる」
と話し、今後5年以内に預かり資産をさらに倍にする目的を掲げています。

プライベートバンキングにおける日本の現在

日本の銀行では、金融資産保有制限が数千万円程度に手を広げ始めています。

新生銀行は2015年5月、預かり資産10万ドル(1,200万円)以上の客を対象にした資産運用専門の日本ウェルス銀行を香港で開業させました。

この銀行はアジアに住む日本人を主な顧客として、国内では販売していない高利回りの金融商品の運用について日本語で相談できるのが強みです。

三井住友銀行の子会社のSMBC信託銀行は、残高1千万円以上を主な顧客層にしていたシティバンク銀行の個人顧客向け事業を買収し2015年11月から「プレスティア」の名称で営業を始めました。

SMBC信託の井上直樹副社長は、
「日本には外貨運用の必要があるのに気付いていない富裕層が多くいる。日本のPB市場を拡大させたい」
と意気込んでいます。

野村総研の宮本弘之氏は、
「金融機関にとってプライベートバンキングは、高成長が見込める数少ない国内ビジネスだ。全ての顧客に基本的に同じサービスを提供してきた日本の銀行も今後、顧客の資産規模によってサービスを変える動きが強まるのではないか。」
と見ています。

プライベートバンキングの未来

日本の金融業界の今後を展望すると、富裕層マーケットの拡大は大きな特長の一つといえます。

日本の富裕層人口は200万人以上とも推計されており、これは米国に次ぎ世界第2位の規模となります。

そして日本では全体の人口は減少する一方、富裕層人口は今後も増加することが予想されています。

このためプライベートバンキングがさらに注目を集め、将来このマーケットが拡大するであろうことは容易に想像されます。

プライベートバンキングの成功は今後の景気動向にかかっている

各金融機関が行っているプライベートバンキングは、景気が活況になりターゲットである富裕層が増えるかどうかにかかっています。

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