ダイヤモンドの市場価格はなぜ暴落しないのか?

ダイヤモンド取引のブラジルの大富豪が、一夜にして没落した事件

世界経済を支配しているのは「ロスチャイルド家」や「ロックフェラー一族」、あるいはアメリカの穀物メジャー…などという会話、誰でも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?

確かに、ロスチャイルド家は現在も投資銀行を経営し、世界の株価や為替に大きな力を持っています。

ロックフェラーと言えば、鉄鋼や石油といった資源採掘などを確保し、その財力は未だに世界でも知られています。

ですが、こうした資産形成を桁違いに行った 一族 や、一家 がそのままの形で続くことは、現実には難しいものです。

例えば、恒例の「2012年 世界の億万長者・長者番付ランキング」がアメリカの経済誌「Forbes(フォーブス)」で発表。

第2位には、マイクロソフト社の会長である ビル・ゲイツ氏 が入り、その資産は610億ドル(4兆9,410億円) 。

そして、第4位は フランスの ベルナール・アルノー氏、彼はBernard Arnault LVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトングループ)のCEO で、410億ドル (3兆3,210億円)。

第7位には、 ブラジル鉱山・石油王 アイク・バティスタ氏 が資産300億ドル(2兆4,300億円)でランクインしています。

さて、3年後の2015年の同じくフォーブス誌のランキングでは、

第1位は ビル・ゲイツ氏で792億ドル(9.5兆円=1ドル120円換算)、ベルナール・アルノー氏は372億ドル(4兆4,600億円)で第13位、アイク・バティスタ氏に至っては「圏外」となっています。

ブラジルの大富豪 アイク・バティスタ氏。

彼の総資産がピークだった時、その合計は345億ドル(3兆4000億円)と言われていました。

ちなみに、岩手県の一般予算は1兆円程度です(岩手県の人口は132万人)から、このブラジル人の財布がどれだけ大きいか、想像できないかもしれません。

ところが、2013年10月3日、アメリカのビジネス誌「ブルームバーグビジネス」は「How Brazil’s Richest Man Lost $34.5 Billion」 の題名で、記事を組みます。

鉄鉱石、ダイヤモンド、金などで資産形成を行ってきたバティスタ氏は、2012年3月をピークに、世界経済の失速と同時にブラジルの資源価格の暴落をまともに受けてしまいます。

彼の資産株は壊滅的な暴落となり、1年後にはその99%が価値を失ってしまいました。

史上最速にして、最大の没落という不名誉な称号が、経済誌から贈られたのは言うまでもありません。

金やプラチナ相場は動く。だが、ダイヤモンドは動かない

ブラジルといえば、鉄鉱石と銅の世界一大産地として有名です。

ですが、ダイヤモンドの採掘としても、一時名声を上げました。

ダイヤモンドは、インドから、ブラジルへと鉱脈の発見の歴史があり、枯渇すると新たな産地が顔を出します。

現在、世界の主要な産地は「ロシア」「ボツワナ(アフリカ)」「コンゴ(アフリカ)」「オーストラリア」「南アフリカ(アフリカ)」「カナダ」など。

オーストラリアでは「ピンクダイヤモンド」が採掘されることで、特に有名です。

さて、世界の各地で採掘されるダイヤモンドですが、なぜかその市場価格は決して暴落することがないのは何故なのでしょうか?

そもそも、金やプラチナ、あるいは鉄鉱石や原油といった「資源」は、埋蔵量に限りがあり、それでいて年々採掘技術が向上するなど、結果的に生産量が増えているものも少なくありません。

例えば、鉄鉱石はブラジルとオーストラリアが主要産地、原油は中東やロシア、アメリカ、ブルネイ、イギリスなどが産地として有名ですが、その価格は毎日世界ニュースで取り上げられます。

鉄鉱石の場合は、鉄の原料となることから製鉄業が活況を呈する場合に、その価格が上昇しますので、歴史上その時点での経済の中心地帯が相場を押し上げる原動力にあります。

2000年に入り、2012年までは中国が紛れもなく鉄鉱石と原油の買い入れ先となり、世界中が中国の経済発展に「すがって」来ていました。

ところが、鉄鉱石の価格は2013年から暴落し、原油に至っては「イスラム国」紛争などに隠れて、中東諸国が増産し続けているために、世界中で価格が下落しています。

金もプラチナも、1gあたりの価格はかなり変動しています。

金地金の製造や売買で知られる「田中貴金属工業株式会社」によれば、金1gの価格は面白いほど「上昇・下落」の波が伺えます。

2000年の年間相場の最高小売価格(いずれも1g当たり)は 1,140円、最低小売価格は 961円でした。

2005年になると、最高が 2,088円。

2010年では、最高が 3,807円、最低が 3,096円

2013年は、最高が 5,084円、最低が 3,852円 と最高値と最低値が開いているのがわかります。

ちなみに、2015年の最高値は、4,985円。

この15年を見ても、4倍近く価格上昇していることがわかりますが、この上昇局面を現在の経済価値と考えると、金がいかに「世界経済の根本」のあるのかが理解できます。

その理由は、現物がある取引であり、常に取引が可能であるということ、そして株や債券が人々の投資対象だけでなく、投機(偶然の利益を狙う行為)の対象となるのとは違い、一定範囲の取引価格に収まり、その姿は永遠であることなのです。

株や債券、ファンドといったものは大きく上昇することもありますが、下落して無価値になる可能性もあります。

金やプラチナはそうしたことはありえません。

が、ダイヤモンドの場合は、さらに「相場が高値安定」することはあっても、金のように「相場が下がる」ことがない、不思議な鉱物なのです。

ダイヤモンドは、売る人たちの総意に基づいて、価格が決まっている

デビアス、という名前の会社がテレビCMを流していることがあります。

1880年に創業した、南アフリカ・キンバリーの鉱山で発掘されるダイヤモンドを一手に収める「鉱山会社」であり、その創業者が セシル・ローズ というイギリス人でした。

彼は1853年にイングランドで生まれ、南アフリカで自ら鉱山で働き、ダイヤモンドで大変な富豪となりました。

48年という短い一生の中で、彼は当時のイギリス帝国が推し進めるアフリカ統治に乗じ、南アフリカで自らの名前をもじった国「ローデシア」の首相にまで上り詰めたのです。

彼の残したダイヤモンド採掘事業は、その後ますます大きな展開をしていきます。

当時の南アフリカは、世界のダイヤモンド生産量の90%を占め、完全にデビアス社の物になっていました。

ですが、ダイヤモンドはもともとは原石でしかなく、そこからインドへ運ばれてカットされ、市場へ流出されます。

デビアスは、この仕組み全てを完全に寡占し、取引業社をレベル分けして「サイト」という販売組織を作りました。

日本では「田崎真珠」が唯一 サイト のメンバーになっており、全世界に84社ある サイトホルダー の一つです。

つまり、ダイヤモンド原石を手に入れられるインドのメンバー同様、田崎真珠も原石を仕入れることができ、その価格は一方的に デビアス中央販売機構 (現在は ダイヤモンド・トレーディング・カンパニー(DTC)、と名称変更している)という組織が決定してしまうのです。

田崎真珠は宝石メーカーとして、自社生産の研磨ダイヤを販売することができますが、日本では田崎以外は「出来合い」の加工ダイヤをサイトホルダーから購入し、販売するしか方法がありません。

誰かが抜け駆けして、安く販売する…そういう恐れはないのでしょうか?

ここが、非常に賢いところなのですが、ダイヤモンドの価値を高め、それを一般社会に訴求して広めていくことで、高値安定することが、結果として全ての販売会社の利益になる、そういった総意が、このシステムを堅固にしていると言えるのです。

儲ける、よりも大事なのは「儲け続ける」ということ

ダイヤモンドの商売は、道義的に見て「正しいこと」でしょうか?

採掘にはダイナマイトを使った時代から、最近は地中深く穴を掘り進めるやり方になり、そのための重機が開発されてきました。

ですが、初期投資には莫大な費用がかかるのが、ダイヤモンド採掘です。

とりわけ、女性の人気を集める「レッドダイヤモンド」「ピンクダイヤモンド」といった赤系の鉱石は、鉱脈の発見そのものが奇跡に近い、とまで言われます。

世界のダイヤモンドに対する「価値」は、一握りの人たちによって決められており、その付加価値は巧妙にコマーシャルされ、続けられています。

ここには「道義」を超えた、商いの王道が秘められています。

ダイヤを購入したが、自分のダイヤの価値が下がってしまったら、結局損をしてしまうのが現実。

そうなれば、もはやダイヤを再び購入しようと考える人は皆無になるでしょう。

つまり、ダイヤモンドの商売は、お客にも大きな利益をもたらすわけです。

ブラジルの バティスタ氏 がダイヤモンド取引のような「創造的、かつ堅実な商い」をしておれば、彼は没落は免れたはず。

それを考えると、デビアスは全ての人に恩恵のある商売をしていることがわかります。

売り手、買い手、そして セシル・ローズ が始めたデビアスという「システム」は、最も人間らしい世界を持った「モノ」であり、それが、ダイヤモンドだったのです。

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