生き残りを懸けたテーマパーク「ハウステンボス」の多角経営。

テーマパークが目指す多角経営とは?

先日、長崎県佐世保市にあるテーマパーク「ハウステンボス」。

一度はお金がない状態に陥り経営破綻しましたが現在は再建し、人間ドックやがん検診を受けられる診療所を、福岡市に開設すると発表しました。

このニュースを聞いて、「テーマパークがなぜ診療所を?」と、驚きと違和感を抱いた人は少なくないと思います。

テーマパークが他の事業に進出する意味とは何でしょうか?

そもそもテーマパークって何?

まず、日本のテーマパークの現状について見てみましょう。そもそもテーマパークとは、何でしょうか?

テーマパーク(Theme Park)とは、特定のテーマ、例えば特定の国の文化、物語、映画、時代等を基礎として、全体がそのテーマに沿って演出されている「観光施設」を指します。

具体的には、娯楽、レジャー、好奇心を充足させる趣向などを盛り込んだ上で、同時に遊園地、博物館、ホテル、商業施設などを併設している場合が、数多くあります。

日本では、奈良県奈良市の「奈良ドリームランド」(1961年開園)、愛知県犬山市の「博物館明治村」(1965年開園)、京都市の「東映太秦映画村」(1975年開園)、高松市の「四国村」(1976年開園)が、日本のテーマパークの草分けだと言われています。

しかし、日本で「テーマパーク」という言葉が一般化し、いわゆる「ビジネスモデル」として広く認知されたのは、1983年に千葉県浦安市に開業した「東京ディズニーランド(TDL)」に「テーマパーク」という言葉が使われるようになってからだというのが、一般的な認識です。

ところで、テーマパークと言っても、その性格は実に多種多様です。

例えば「東京ディズニーランド」のように、総合テーマを決めた「遊園地」としての性格の強いものから、「博物館明治村」や「リトルワールド」のように、娯楽という側面を加えながらも、社会教育や研究を重視した野外博物館的な性格のものまで、さまざま存在しています。

また、「東京ディズニーランド」のような大型行楽施設とは違ったコンセプトで、都市部の大型商業施設のワンフロアやその一部を使用するといった小型の施設も誕生しました。

これは、屋内型の「ミニテーマパーク」と呼ばれるもので、首都圏・大都市圏で2000年代から増加しています。

このミニテーマパークは、他の大型行楽施設よりも交通の便が良く、アトラクション数が少なく、所要時間も短くして、商業施設の利用者が気軽に立ち寄れるように工夫するなどの配慮が施されています。

その結果、屋内施設という利便性も相まって、人気を集めています。このように、一言で「テーマパーク」といっても、実に多種多様であることがわかります。

テーマパークは冬に時代か?

日本では、現在大小のテーマパークが、北海道から沖縄まで約100施設存在しています。

その数の多さには驚かされますが、その裏でかつて開園していたものの、経営不振などで廃園あるいは休園に追い込まれたテーマパークが、実に38施設も存在しているのです。

この中には、1961年に開園した最古のテーマパーク「奈良ドリームランド」も含まれています。

この「奈良ドリームランド」は、千日土地興行という開発会社によって1961年年7月1日に開業しましたが、1993年、ダイエーが日本ドリーム観光を吸収合併し、このグループの「ドリームパーク」が経営することとなりました。

しかし、2005年11月に経営再建中のダイエーは、「ドリームパーク」の経営権を不動産会社の「テンラッシュ」に譲渡してしまいました。

このように、何度か経営権移っていったわけですが、その間に1983年の「東京ディズニーランド」の開園、さらに2001年に大阪に「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」が開業したことによって、入場者が大幅に減少し、ついに2006年8月31日に閉園することになってしまいました。

最盛期には、年間入場者数がのべ160万人と隆盛を誇っていた「奈良ドリームランド」ですが、閉園時にはのべ40万人にまで落ち込んでいました。

現在の日本における「テーマパーク」はほぼ飽和状態に陥っており、限られた「パイ(入場者)」をライバルのテーマパーク」で取り合っている状態であり、経営を維持していくことがますます難しくなってきています。

さらに、今後少子高齢化に拍車がかかり、それに併せて娯楽の多様化が進んでくると、廃園・休園に追い込まれるテーマパークが続出するのではないかという危惧は当然出てきます。

テーマパーク「ハウステンボス」の歴史

ハウステンボスは1992年3月25日の開業で、オランダの街並みを再現した造りになっており、その敷地面積は「東京ディズニーランド」と「ディズニーシー」を合わせた面積に匹敵し、日本において最大規模を誇るテーマパークです。

施設のテーマは「ヨーロッパ全体」で、ドラマ・映画・CMなどのロケ地としても使用されています。

また住所は「佐世保市ハウステンボス町1-1」と、他の施設には見られないような、テーマパークの名前が町名にもなっているのです。

今でこそ、年間300万人以上が来園し、経営は安定していますが、開業から8年後の2000年6月に経営不振に陥り、当時の代表取締役社長(創設者)が辞任するという憂き目に遭ったのでした。

その3年後の2003年には、会社更生法の適用を申請し、まさに存亡の危機を迎えたのです。

しかしその後、2010年には、大手旅行会社 「H.I.S」による支援が正式に決定し、100%減資した後、H.I.S、九州電力・西部ガス・九電工・JR九州・西日本鉄道の大手6社を割当先とする増資を行い、H.I.S.の子会社(67%出資)となりました。

併せて、H.I.S.の会長の澤田秀雄氏が、ハウステンボスの社長に就任したのでした。

実質的にH.I.Sの傘下に入り、事業の再建を行ったことで、2011年9月期には、開業以来初の営業黒字転換に成功しました。

具体的なコスト削減や利用者増の方法としては、2010年4月にハウステンボス敷地の南側3分の1を切り離して、その場所を無料で入れる領域(フリーゾーン)としました。

この時、フリーゾーンとの境界に「南門」を新設して、なおかつフリーゾーンには他企業が参入することを許可しました。

またベンチャー企業による「英語専用店舗」などのユニークな施設も建設されました。

さらに、所有していた隣接地のヨットハーバー「ハウステンボスマリーナ」を2011年4月長崎県に譲渡しました。

このように、徹底したコスト削減などの営業努力の結果、一時期存亡の危機だったテーマパーク「ハウステンボス」は、「優良企業」へと変貌したのでした。

テーマパーク「ハウステンボス」の狙いとは?

今回、福岡市に診療所を開設することを発表したハウステンボスですが、それに先駆けて、平成27年の夏に園内で健康をテーマとした集客施設を設けました。

また、他にも発電事業や映画製作も手がけるなど、本来の事業にはこだわらない経営の多角化に大きく舵を切っています。

 福岡市に置く診療所名は「H2クリニック博多」と言い、ハウステンボスのサテライトという位置づけです。

長崎市出身の整形外科医石橋徹院長が開業するのに合わせて、医療機器の購入などを支援しています。

具体的には、最先端のMRI(磁気共鳴断層撮影)や内視鏡などの機器を設置し、予防医療に力を入れます。

11月20日に開院し、12月からは人間ドックなども始める予定です。

その前の今年7月には、既にハウステンボスに、簡易な医療検査が受けられるスペースや温浴施設をも設置しており、いわば「健康と美の王国」事業とも言うべき新規事業をスタートさせているのです。

開業以来、一日約200人が検査を受けていると言いますから、ひとまず成功だと言えそうです。

もしこの検査で異常が見つかった時には、福岡のサテライト診療所を紹介する予定で、佐世保と福岡との間で連携を図る予定とのことです。

 これらの事業展開について、澤田秀雄社長は「集客というより世の中のための取り組みだが、健康になれば、またハウステンボスにも来てもらえる」と語っています。

澤田社長の言葉中の「世の中のための取り組み」はもちろん、「集客」というのも社長の本音であり、今回の事業展開の真の狙いなのでしょう。

他の事業としては、平成26年1月に「ハウステンボス歌劇団」が、250席の常設劇場ミューズホールでこけら落とし公演を行いました。

この劇団のメンバーは女性だけで、宝塚歌劇団OGやオーディションで選んだ26人で構成されています。

2種類の演目を1日に4回公演しています。

また、同年5月に「ハウステンボス歌劇学院」が開校し、第1期生14名が入学しています。

澤田社長は、従来の「テーマパーク」という枠にとらわれない、次世代に向けた事業展開を図っているのです。

これは、全国のテーマパークについて言えることですが、テーマパークそのものをグレードアップさせたり、新たな魅力あるアトラクションを作ったりすることにもそろそろ限界が来ており、少子高齢化、健康志向と言った近未来への設計図を、澤田社長が描いた上での取り組みなのだという気がします。

テーマパークにとって、取り巻く経営環境は厳しさをますばかりです。

いずれのテーマパークにも、新たな転換期が訪れているのかも知れません。

テーマパークの新規事業への参入が顕著になるだろう

 テーマパーク「ハウステンボス」が行おうとしている事業展開は、他のテーマパークの起爆剤になり、多くのテーマパークが新たな事業に参入する日も近いかも知れません。

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生き残りを懸けたテーマパーク「ハウステンボス」の多角経営。
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