銀行合併の流れは、ますます加速するのでしょうか。

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本当はお金がない銀行の生き残りを懸けた合併?

昨年、熊本県の大手地方銀行である「肥後銀行」と鹿児島県の大手地方銀行である「鹿児島銀行」とが、経営統合することで基本合意したとの報道がありました。

この報道に対して、特に銀行業界、地方財界の人々の間では、ショッキングなニュースとして受け止められました。

この二つの銀行の経営統合そして合併という流れによって、他の地方銀行の合併は、今後ますます加速していくのでしょうか。

銀行の歴史は合併の歴史

 日本では、古くは「太陽銀行」と「神戸銀行」とが合併して誕生した「太陽神戸銀行」や、最近では「富士銀行」、「日本興業銀行」、「第一勧業銀行」の三つの銀行が合併して「みずほ銀行」が誕生したように、銀行の歴史はまさに「合併の歴史」でもあります。

「みずほ銀行」の歴史をもっと詳しく見てみると、合併前の「富士銀行」は、元々は「安田銀行」、「第三銀行」、「昭和銀行」、「日本昼夜銀行」の四つの銀行が合併したものでした。

また「日本興業銀行」は、戦前は特殊法人だったものが、戦後に民営化された銀行です。

さらに、同じく「第一勧業銀行」は、「日本勧業銀行」と「第一銀行」が合併したものであり、もっとさかのぼれば、その「第一銀行」は「三十五銀行」と「帝国銀行」とが合併した銀行だったのです。

このように見てくると、銀行は長い時間をかけて合併を繰り返し、現在に至っていることがわかるかと思います。まさに「逆枝分かれ」とでもいえるような状態なのです。

なぜ今地方銀行が合併か?

冒頭に紹介した「肥後銀行」と「鹿児島銀行」との経営統合のニュースが、なぜ驚きもって受けとめられたのでしょうか。

それには、三つの理由があります。

まず一つ目の理由は、二つの銀行が熊本県、鹿児島県のそれぞれトップの地方銀行だからです。

通常、経営統合や合併と言えば、多くがその業界における二位以下の企業同士が手を結び、業界一位を目指そうとするのが一般的です。

これは、その業界で一位になれば、その後の事業展開などにおいて様々なメリットがあることを十分理解しているためで、それゆえ、一位を目指すための経営統合・合併なわけです。

しかし、「肥後銀行」と「鹿児島銀行」の場合は、違っていました。

それぞれの県で業界(地方銀行)一位なのですから、「何で今さら経営統合なのか」と思われたわけです。

二つ目の理由は、隣接する県の地方銀行が経営統合した点です。

特に九州は、それぞれの県の個性が強く、隣の県とは言っても、同じ業種で統合することはほとんど想定にはなかったと言っても過言ではありません。

特に地方銀行と言えば、それぞれの地方に根差した銀行であり、その地方のメインバンクと言ってもいいかもしれません。

しかもそれぞれの県の顔であるトップ同士の経営統合ですから、このニュースが驚きをもって見られことは、容易に想像ができると思います。

三つ目の理由は、熊本と鹿児島と言う、九州の中枢の県にある地方銀行同士の経営統合だからです。

平成23年3月に九州新幹線が全線開通をし、福岡県・熊本県・鹿児島県が新幹線によって、一本につながりました。

これにより、明らかに他の県―長崎県、佐賀県、大分県、宮崎県―とは一線を画したと言えます。

九州の発展はこの三県―福岡県・熊本県・鹿児島―がけん引していくことになると言うのが、大方の見方です。

しかし、それでも二つの銀行が経営統合へと大きく舵を切った理由は、「肥後銀行」の甲斐隆博頭取の次の言葉に象徴されています。

「人口減少はこれから加速していく。地方銀行として勝ち残るには経営規模を大きくしないと難しい。」

つまり、日本の人口減少が現実味を帯びた現在、いくら地方銀行のトップであっても、将来的に経営の安定は保証されていないということです。

さらに、前述の副頭取は、銀行の経営統合・合併で見込まれる効果として、営業基盤の広がり、融資ノウハウの相互活用、本部機能の効率化を挙げています。

銀行合併は競争力の強化のため

 この二つの銀行の経営統合・合併について、金融庁は、「(合併の背中を押したのは)すでに縄張りを越えた戦いが激化していることに要因している」と述べています。

既に熊本県では、第二地銀の「熊本銀行(旧熊本ファミリー銀行)」が、平成19年に「ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)」の傘下に入りました。

このことで、「福岡銀行」(福岡県トップ、預金量は地方銀行第3位)とのシステム統合や、同行からの商品供給で力をつけ、「肥後銀行」の地盤を侵食し始めたのでした。

九州の地方銀行の幹部の話では、「法人融資では、肥後銀行の優位はさほど揺らいでいないが、個人向け金融サービスでは、福岡銀行流を身に付けた熊本銀行が存在感を増している」とのことです。

また、鹿児島県でも隣県のトップ地方銀行である「宮崎銀行」が攻め込んでいます。

同行の平成26年9月末の鹿児島県での貸出金残高は、約1,850億円と1年前に比べ26%強も増えています。

「鹿児島銀行」の上村基宏頭取が「宮崎銀行の影響はまったくない」と会見で発言するなど、両行とも競合について語っていませんが、まさに「仁義なき戦い」であるのは周知の事実なのです。

 このことから、いくら地方銀行のトップとは言っても、他県の競合銀行に対する競争力を身につける時代に入ったということがわかります。

銀行の合併によって、総預金高を増すことはもちろん、他県の銀行のノウハウを身につけ、戦うための「体力」を培う必要が出てきたということなのです。

銀行合併のメリットは?

ところで、このように複数の銀行が合併するメリットとは、一体何でしょうか?

それは、大きく分けて三つあると言えます。

まず一つ目のメリットは、「規模の経済性」です。

これはどういうことかと言うと、一般的に企業の生産高や売上高などは、その規模が大きくなればなるほど、商品単位あたりの製造コスト・販売コストなどを低く抑えることができるようになります。

その結果として、自ずと生産性が上がっていきます。

銀行の場合には、銀行が取り扱う資金量が大きくなればなるほど、固定費(人件費・設備費など)を相対的に低く抑えることができるようになり、結果的に生産性を上げることができるということです。

特に銀行の特徴として、目に見える商品を販売する企業ではありませんから、提供するサービスの規模が増大しても、他業種の企業に比べて、固定的な費用の比率が比較的高いという特徴があります。

従って、複数の銀行が合併することにより、この「規模の経済性」の恩恵を受けやすい業種であると言うことです。

次に二つ目のメリットは、「範囲の経済性」と言うことです。

これは、複数の財産をそれぞれ別々の業種で生産する際に生じる総費用よりも、一つの企業が複数の財産を大きく一つにまとめて生産する方が、その総費用が低いコストで抑えられるといことです。

つまり銀行では、一つの金融機関が二つ以上の金融サービスを生産すれば、複数の金融機関が同じ金融サービスを生産するよりも、投入する資源が節約されると言うことです。

例えば、顧客から集めた預金を銀行が運用したり、企業に貸し付けたりして、利益を作ろうとする場合、当然おおもとの「資本(顧客からの預金)」が大きい方が、様々な運用方法を行ったり、複数の企業に貸し付けたりして、大胆な経営が可能となります。

また銀行ですから、貸し付けたお金が焦げ付くリスクもありますが、資本が大きければ、銀行の経営にそれほどの影響が生じないということになります。

そして三つ目のメリットは、「コスト削減効果」ということです。

具体的には、経費の削減、人件費総額の圧縮など、経営資源の合理化を行うことで、効率化を追求することができるということです。

つまり合併を行うことで、重複する企業の機能や拠点(支店)、人員を整理することによって「コスト削減効果」が生まれるということです。

銀行の合併の問題点とは?

このように見てくると、銀行の経営統合・合併はメリットばかりのように感じますが、もちろん問題点がないわけではありません。

まず、銀行の合併により、採算が取れない支店を閉鎖する可能性が出てくるということです。

例えば、A銀行とB銀行が同じ地区でC支店・D支店を出していた場合、合併によって同じ地区に二つの支店は必要がなくなり、当然一つの支店に統合されることになります。

二つの支店が隣接している場合には、問題がないのですが、やや遠距離に位置するときには、片方の支店が廃止されることになり、その支店を今まで利用していた人にとっては、不便な状態に陥ってしまいます。

また、地方銀行が合併によってその絶対数が減った場合、地方の企業・個人経営者にとっては、選択肢が減ることになるわけですから、運転資金等が今までよりも借りにくくなり、経営を圧迫する恐れも出てきます。

また、ある意味で寡占状態になるわけですから、複数の銀行が競争していたときよりも、顧客に対するサービスが低下することも考えられます。

さらに、地方銀行の合併によって、地元の信用金庫や信用組合なども、地方銀行の合併にならって統合・合併の動きが出てくるかもしれません。

そうなれば、地方の中小、零細企業にも大きな影響が出てくることでしょう。

地方における銀行の合併は、避けられない時代に入っています。

 銀行も一つの企業である以上、経営統合・合併は一つの時代の流れであるが、特に人口減少が見込まれる地方にとっては、大きな影響が生じる可能性があります。

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