政治家の資産公開を国民はどう見たらいいのか?

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政治家の資産公開は何を意味するのか?お金がない政治家はいるのか?

毎回、内閣が発足するたびに、大臣、副大臣などの資産が公開されます。

大臣などの資産が公開することで、政治理念を含めた政治家としての倫理観を国民に広く知ってもらおうとするものです。

ただ長年の制度なのに、資産の多寡にばかり目が行ってしまうことも事実です。

果たして、政治家の資産公開はどのような意味があるのでしょうか。

資産公開の始まり

この制度は、1984年の第2次中曽根内閣の時に「大臣規範」によって、内閣総理大臣や国務大臣の資産が初めて公開されたことから始まっています。

それまでは、大臣本人の資産のみを公開する制度でしたが、宇野内閣の時(1989年)になって、大臣の配偶者と扶養する子供の資産にまで、公開する資産が拡大されました。

さらに、1992年になって「国会議員資産公開法」が制定され、資産公開は国会議員にまで拡大されました。

この制度の目的は、公人の資産を公開することで、「政治倫理の確立」、特に政治とお金の問題の根本にある「政治家の資産」を公にした上で、民主主義の健全な発展を目的とする制度であると言われています。

資産公開の根拠となる法律は

一言で「資産公開」と言っても、大臣と国会議員とでは、その根拠となる法律が違っています。

まず大臣の資産公開ですが、2001年に閣議決定された「国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範」という規範で決められています。

あくまでも「規範」であり、法律ではないため違反者への罰則はありませんが、閣議決定として大臣以下行政府を拘束する効力をもっています。

資産公開をしなければ対象者は、各省の国務大臣、副大臣、大臣政務官です。

そして、国務大臣等本人とその配偶者、その扶養する子の資産を、就任時だけでなく、辞任時にも公開しなければなりません。

また、この規範には、「服務に関する規定」も定められていて、国務大臣等が在任期間中に営利企業の役職員を兼職したり、公益法人等の諸団体の役職員を兼職したりすることを禁止しています。

但し、公益法人の報酬のない名誉職等は除かれていますが、この場合は、国務大臣は内閣総理大臣に、副大臣等は上司の国務大臣に届け出なければならないとされています。

また、財産に関する制約もあり、国務大臣等が在任期間中に、株式等の有価証券、不動産、ゴルフ会員権等の取引を自粛しなければなりません。

また、大臣等に就任する時に保有している株式、転換社債等の有価証券は、信託銀行等に信託することとしており、在任期間中に契約の解約及び変更は禁止しています。

さらに、国民の疑惑を招きかねないような大規模な政治資金パーティーも自粛しなければなりませんし、国務大臣が海外渡航する際には閣議了解が必要であり、国内の出張及び旅行については内閣総理大臣の許可が必要です。

副大臣等の出張及び旅行については、上司の国務大臣の許可、内閣官房長官への事前届け出が必要だとしています。

つまり、在任期間中の財産形成や取引について、厳しい制約があるということになります。

一方、政治家の資産公開については、1992年に制定された「政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律」で決められています。

この法律の目的は、国会議員の資産の状況等を国民の監視と批判の下におくためであり、国会議員の資産等を公開することで、政治倫理を確立し、民主政治の健全な発達に寄与することとされています。

この法律の「第2条」では、公開しなければいけない資産が明記されています。

それは、土地、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権、建物、預金、有価証券、自動車、船舶、航空機及び美術工芸品、ゴルフ場の利用に関する権利、貸金、借入金となっており、実に多岐に渡っています。

但し、この法律には問題点もあります。

まず、この法律の「第2条第5項」に規定されている「保有する有価証券」は、国会への報告義務が定められていますが、株券の場合には株式の銘柄とその株数だけが報告義務であるので、実際に国会議員が所有している「実資産の価格」と公開された「資産価格」とが違っている可能性もあるということです。

また、両院議長協議によって決められた「国会議員の資産等の公開に関する規程第1条」に基づいて公開しなければならない株式は、上場企業と資本金1億以上のものとされているため、非上場企業等による間接所有は対象外となっています。

資産公開の問題点

 国会議員や大臣などの「資産公開」のたびに、いくつか問題点が浮き彫りになっています。

まず、「資産公開法」で公開しなければならない資産は、預貯金については定期預金のみ、土地・建物については「固定資産税の課税標準額」で実勢価格(実際に取引された場合の価格)ではありません。

また、上場企業の株式、ゴルフの会員権、100万円を超える自家用車などとなっています。

従って、普通預金、自宅で保管する預金(いわゆるタンス預金)、家族名義の資産は公開の対象になっておらず、また虚偽記載に対する罰則規定もありません。

つまり、国民は国会議員本人が記載した資産を信じる以外になく、しかもそれが真実かどうかを確かめる術もほとんどありません。

実際に第三者が確かめるのは、至難の業です。

また、仮に虚偽の報告だったとしても、ペナルティがないのです。

万が一、間違った資産公開だった場合には、国会議員本人が自ら申し出て、「○○が正しい資産です」と、修正してもらうしかありません。
 
この点について、東京大学教授のロバート・キャンベル氏は、次のように言っています。

「何のために公開しているのか。毎回、なぜこんな『資産公開』をするのか疑問に思うんです。

公開している自宅の土地や建物、ゴルフ会員権からお金が発生するわけではない。逆に貸付金とか借金は除かれている。政治家としては、むしろこうしたお金の流れの方に意味があるはずです。アメリカの議会は罰則付きで、所有している会社とか金融資産とか、どこかに繋がっているお金のやり取りを厳しくチェックしています」

さらに、「日本の政治風土、文化のなかには、お金をたくさん持っていることは悪いこと、そのランクを悪い順番と思っているところがありますよね。その感覚はちょっと時代遅れではないかと感じています」

これは、アメリカ人の目から見た鋭い指摘です。

どうしても日本人は、伝統的に「お金」や「財産」のことを口にするのは恥ずかしい、あるいははしたないという考えがあります。

自分とは関係のない第三者の「お金」や「財産」であれば、なおさらです。

しかし、公開されているのは、国民の税金で生活をしている国会議員なのです。

政治家とお金の問題が絶えず問題になっている反面、国民はこの点を忘れがちです。

日本における資産公開の課題

ロバート・キャンベル東大教授の言葉から、日本における「資産公開」の課題を考えてみましょう。

よく言われているように、日本の国会議員は公人である自らの「資産公開」に対して消極的であると、非難されます。

その理由として考えられるのは、国会議員の側がこのような「民主的な手続き」に積極的でないということと、有権者のお金や財産についての意識がかなり影響しているのではないかということです。

アメリカは、政治家など公人の「情報公開」がもっとも進んでいる国のひとつです。

例えば、アメリカでは選挙で選ばれた国会議員・地方議員はもちろんのこと、普通の公務員まで「資産公開」の義務があります。

現在の駐日大使であるキャロル・ケネディ氏の資産は、約273億円ですが、彼女の保有している債券の銘柄のひとつひとつまでが細かく公開されています。

アメリカの場合は、多額の資産を持っていれば、それだけで批判されることもありますが、そうではないケースもあります。

これは一つの考え方ではありますが、資産を多く持っていれば、逆に汚職に手を染めたり、利益誘導を行ったりすることはないのではという、いわばその人の「クリーンさの象徴」と受け取る向きもあるということです。

しかし日本では、多額の資産を持っていた場合には、ほとんど間違いなく批判の的となります。

日本人の根底には、「こんな資産を持っているということは、この人は欲が深いのではないか」あるいは「政治家になったのはお金が目的ではないのか」と、ことさら国会議員に「清廉さ」「清貧さ」を求めるのです。

もし国民にこう思われているのならば、「資産公開をしたくない」と思う気持ちが国会議員に出てくるのも理解できないことではありません。

しかし、金銭にシビアな国民性ゆえに、逆に国会議員であっても、資産という個人情報を守るべきだという、やや乱暴な意見も出てきます。

しかし、あくまでも国会議員は「公人」「公僕」なのです。

民主主義の大原則は、公金(税金)を扱う職業に就いている人の情報は、公開すべきものです。

国民が選挙で選んだ人物は、金銭や資産・財産などの事実関係について国民の側で受け入れ、その上で政治家としての信条・理念などについて姿勢が、必要です。

もしこれを怠ると、真の「民主主義」の実現は遠くなってしまうかもしれません。

政治家の資産公開は民主主義を実現するための第一歩

恒例となった政治家の「資産公開」ですが、形骸化しているという批判を謙虚に受け止め、政治家の資産はもちろん、その政治姿勢にも注目したいものです。

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