日本が誇る「新幹線」の輸出は成功するのか?

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新幹線の海外進出は成功するのか?

先日、アメリカテキサス州の高速鉄道の建設に対して、JR東海の新幹線を導入するという計画が、実質的に動き出したという報道がありました。

日本の新幹線のアメリカ進出は、長年の悲願でした。

果たして、この計画の意味することは何でしょうか?

日本における新幹線の意味

新幹線とは、何か?「何をいまさら」と思われるかも知れませんが、ここで今一度、「新幹線」について、その定義から振り返っておきましょう。

「全国新幹線鉄道整備法第2条」では、新幹線とは「その主たる区間を列車が200km200毎時(以降km/hと記す)以上の高速度で走行できる幹線鉄道」と規定しています。

「その主たる区間」としているので、例えば部分的に「200km/h未満」の速度でしか走行できない区間があっても、それも新幹線ということになります。

また、「ミニ新幹線」と呼ばれている山形新幹線・秋田新幹線もありますが、これらも新幹線と一般的に呼ばれており、時刻表にもそのように記載されています。

ただし、これらには踏切があり、最高速度も「130km/h程度」であるから、法律上では、新幹線ではなく、新幹線車両が走行できるよう軌間を修正した「在来線」であると言えます。

新幹線の歴史は、1964年(昭和39年)10月1日に開業した「東京駅―新大阪駅間」の東海道新幹線から始まります。

旧国鉄時代には、山陽・東北・上越の各新幹線が次々と開業し、国鉄が民営化されてJRとなった後も、在来線と新幹線とで直通運転を行う山形新幹線・秋田新幹線の2つが開業(ミニ新幹線と呼ばれています)し、北陸新幹線と九州新幹線(鹿児島ルート)の2つが開業しました。

このように、新幹線の整備・拡大は半世紀にわたって継続しています。

現在も、北海道新幹線・北陸新幹線・中央新幹線・九州新幹線(長崎ルート)の各新幹線が建設中です。

新幹線の路線には、高架橋やトンネルが多く、踏切もありません。

従って、在来線に比べて定時性が高く、年間約12万本もの列車が運転されている「東海道新幹線」でも、平均の遅延時間は36秒だと言います。

また、半世紀以上の新幹線の歴史で、新幹線の運行が原因で乗客の死亡事故は、一度も発生していません。

この事実を評して、一般的に「新幹線の安全神話」と呼ばれています。

新幹線の海外への影響

日本が世界に誇る新幹線は、海外に様々な影響を与えてきました。

日本の新幹線が、世界で初めて「210km/h」の運転に成功したことで、まず反応したのは「鉄道先進国」と言われるフランスでした。

1967年5月28日に「パリートゥールーズ間」において、列車「ル・キャピトール」で欧州における初の「200km/h」運転に成功しました。

そして、1981年に本格的な超高速列TGVを開発し、最高速度「260km/h」の世界一を達成しました。

その他でも、ドイツ (ICE) やイタリア(ディレッティシマ)でも高速列車が開通しました。

特に、イタリアのディレッティシマは欧州初の高速新線で、1970年に建設が始まり、1983年に「250km/h」の運転を開始しましたが、その後フランスやドイツに遅れを取り、全線が開業したのは1992年でした。

また、スペインも、高速新線の導入を計画していましたが、結局フランスのTGVを採用しました。

さらにロシアでは、ドイツの技術支援を受けて、1997年に高速列車ソコルを「モスクワーサンクトペテルブルク間(654km)」に運行し、最高速度「250km/h」で結びました。

その結果、それまで4時間20分かかっていたものが、2時間30分に短縮されました。

このように、日本の新幹線開業の影響は、全世界に及んでいて、ある意味で「スピード競争」となっています。

新幹線の海外への売り込み

ところで、高速鉄道の草分け的存在であり、その高い技術力を備えた日本の新幹線を、海外へ売り込もうという考えは以前からありました。

平成27年5月、「タイのバンコクとチェンマイを結ぶ高速鉄道に日本の新幹線を採用する」と、日本・タイの両政府が合意したという報道がありました。

これは、台湾が2007年に新幹線の採用を決めて以来のこととなります。

このタイの路線は、首都バンコクと北部の観光都市チェンマイを結ぶ660~670kmの区間です。

両国は2012年に、鉄道分野での協力を進めることで合意していましたが、その流れの中で今回の新幹線の導入となったのです。

具体的には、日本が車両、線路、運行システムなどの新幹線技術をセットにして売り込む予定で、JR東日本、三井物産、日立製作所、三菱重工業が共同して、事業へ参加するとのことです。

ただ、この計画には懸念材料があります。

人口500万人以上の首都バンコクに対して、チェンマイの人口は20万人余りであるため、乗客数がどれくらい見込めるか、すなわち採算が取れるのかは、やや不透明です。

また日本円で約1兆5,000億円以上と言われる建設費ですが、日本がどの程度タイ政府に援助できるかという問題も残っています。

タイに先駆けて、日本の新幹線を採用した台湾はどうでしょうか。

現在、「台湾新幹線」は、台北市の台北駅から高雄市の左営駅までの345kmを最高速度「300km/h」で結んでいます。

台北から左営までのノンストップ便では、その所要時間約1時間30分です。

この区間の新幹線導入前は、最速の在来線で所要時間3時間59分も要していたことを考えると、まさに驚異的です。

この台湾新幹線の総事業費は4,806億台湾ドル(日本円で約1兆8,000億円)です。

JR東海とJR西日本の共同で、車輌など日本の新幹線技術を導入したため、台湾でも「台湾新幹線」と呼ばれています。

日本の新幹線のシステムとは一部異なりますが、一般利用者には車両は日本の700系を改良したものであることから、一般利用者には日本の新幹線とほとんど同じに見えます。

以上のことから、台湾の市民には、日本の新幹線がすっかりなじんでおり、ひとまず成功と言えそうです。
 

アメリカと新幹線

今回のアメリカにおける「新幹線計画」では、日本の東海道新幹線で使われている「N700系」をベースにした新幹線を導入し、「ダラスーヒューストン間(約400km)」を約1時間半で結ぶ予定で、平成33年の開業を目指しています。

人口約210万人のヒューストンは全米4位の都市、人口約120万人のダラスは全米9位の都市であり、二つの都市の間は、車で約4時間、飛行機では約1時間かかります。

事業主体である「テキサス・セントラル・パートナーズ(以下TCP)」の最高経営責任者であるティモシー・キース氏は、「(二つの都市は)車には遠く、飛行機には近い。高速鉄道(新幹線)に最適な距離だ」と自信を見せています。

TCPでは、地元の不動産開発会社などから7,500万ドル(日本円で約92億円)の出資を確保した上で、さらに官民ファンド「海外交通・都市開発事業支援機構」も、3,000~4,000ドル(日本円で約37~49億円)を出資すると言います。

とは言っても、120億ドル(日本円で約1兆5,000円)を超すと予想される建設費の確保は、決して容易とは言えません。

アメリカ連邦政府の補助金で賄う予定の西海岸の「サンフランシスコーロサンゼルス間」の高速鉄道計画とは違って、この「ダラスーヒューストン間」の計画は、民間事業として行います。

この計画は、入札で中国など競合せずに新幹線を導入できるという利点はありますが、リスクが高いと敬遠される事業に、民間が出資してくれるかは疑問が残るところです。

また、建設予定地の反対も不安材料です。ダラスとヒューストンの中間にあるジュエットと言う町で牧場を持っているカイル・ワークマン氏は、「どんなにお金をもらっても、土地を手放すつもりはない。

テキサスの人の多くは車を使う。そもそも採算性が疑問だ」と言って、反対運動を続けています。
  

新幹線の未来

   アメリカへの新幹線計画では、官民ファンド「海外交通・都市開発事業支援機構」が出資を決定したことで、JR東海の幹部は「日本政府が本腰を入れているイメージはありがたい」と話しています。

しかし、現在国内では総額9兆円の「リニア中央新幹線」を建設しているため、JRが自ら出資したり建設後の経営に加わったりする予定はないと言います。

つまり、JRとしてはあくまでも技術導入に徹するということです。

アメリカは、車社会であり、しかも航空路線も充実している国ですから、高速鉄道を造ったとしても、経営が成り立つのかと不安視する声もあります。

しかも、日本の新幹線はほぼ施設を国が保有しており公的支援を前提としているのに比べて、テキサス州の計画について、アメリカ政府や州政府はノータッチであるため、結局は運営会社が全ての責任を負うことになります。

日本は、インドネシアの高速鉄道事業で中国に「逆転負け」をしています。

今回のアメリカの高速鉄道事業の支援には、新興国からの受注が思うように進まない苛立ちがあるのかも知れません。

いずれにしても、日本の高速鉄道についての高い技術力を「売り」にして、なみいるライバル国に負けずアピールをしてほしいところですが、ネックとなるのは、「採算性」や「建設資金の確保」、そして何よりも地元民の理解が必要だと言えそうです。

日本の高い技術力と資金の確保が成功の鍵です

日本の高速鉄道(新幹線)は、その高い技術力を海外にアピールすることで、海外と特に新興国への進出が可能になると言えますが、建設資金の確保がネックとなるのも事実です。

 

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