行政事業レビューは税金のムダ遣いに貢献できるのか?

河野大臣は行政事業レビューで存在感を出せたか。

 
先日、政府の「行政事業レビュー」が行われました。

これは税金のムダ遣いを政府が検証するもので、河野大臣の初めての大仕事となりました。

果たして、河野大臣は税金のムダ遣いに切り込むことができたのでしょうか。

また、税金のムダ遣いは解消できるのでしょうか。

行政事業レビューとは?

一般には耳慣れない「行政事業レビュー」という言葉ですが、一体何を行う場なのでしょうか。

行政事業レビューとは、概算要求の前に政府の各府省が自ら、原則として全ての事業に対し、当年の予算がどこに支出され、何に使われたかを把握し、これを国民の前に示して、その過程を公開しながら、事業の内容や効果の点検を行うものです。

この点検の結果を活かして、次年度の予算の概算要求や執行に反映させようというのが、その意図です。

この行政事業レビューは、行政の無駄を削減することはもちろん、事業を効果的・効率的に実施することで、質の高い行政を目指そうとするものであり、また国の行政の透明性を高めて、国民への説明責任を果たそうとするものです。

また、国から交付された基金についても、適正で効率的に税金を活用するという考えから、毎年度、政府各府省がその執行状況等を継続的に把握し、その上で使用の見込みが低いと判断した場合には、返納するという手段を取っています。

これを「PDCAサイクル」と言いますが、これによって、基金の適切な管理を行っているのです。

河野大臣と行政事業レビュー

  行政事業レビューは、毎年度実施しているはずなのに、なぜ今回は注目されたのでしょうか。それは、担当大臣が河野太郎氏だったからです。

河野太郎氏とは、どのような人物かというと、一言で言えば、現在の自民党の中でもリベラル派という立ち位置であり、現在の安倍政権とは、その考え方が対局的であると言えます。

河野大臣が日頃主張していることは、次のとおりです。

内閣総理大臣の靖国神社参拝に対しては否定的な立場をとっています。

また、自衛隊イラク派遣について、成立した「特別措置法」には賛成しましたが、イラク派遣の基本計画が法律の要件を満たしていない、十分に国民へ説明していないとして、批判的な立場をとっています。

さらに、憲法や法律の根本に立ち返り、「集団的自衛権」の行使を認めた上で派遣すべきとも主張しています。

また「日中関係を良好に保ち、中国の民主化促進に努める」を自らの政権構想としています。

中でも最も際立っているのは、環境問題に熱心で、核燃料再処理に対して反対の立場をとり、段階的な脱原発とガス体エネルギーの積極的な使用推進を主張しています。

つまり、日本の原子力発電所には明確に反対していて、「原子力は経済採算性がない」「原子炉の新設はしないと政治主導で決めるべきである」としています。

このように、明らかに政権政党である自民党や安倍首相とは違った主張を持つ河野大臣ですから、大臣に就任したことに注目が集まり、さらに今回の行政事業レビューでは、「税金のムダ遣いに切り込んでくれるのではないか」と関心が集まったわけです。

今回の行政事業レビューのポイント

  まず問題になったのは、核燃料運搬船の件です。高速増殖炉原型炉「もんじゅ」などは、使用済み核燃料を運ぶために建造されましたが、結局使われないまま毎年維持費が、支出されているという問題です。

運搬船「開栄丸」(約5,000トン)は、文部科学省所管の日本原子力研究開発機構が原燃輸送という会社と契約を結び、建造や維持を委託しています。

平成18年に建造され、その費用は約47億円ですが、結局輸送実績は新型転換炉「ふげん」(現在廃炉)の使用済み燃料を、茨城県東海村に四回運んだだけです。

平成21年から一度も使われていませんが、毎年約12億年の維持費がかかっています。

この行政事業レビューでは、「もんじゅ」の運転再開の目途が立たない中、「契約の打ち切りを含めて早急に改めるべき」との指摘が出ました。

この指摘に対して、馳文部科学大臣は、「今後の利用見通しを考えつつ、維持費の削減に向けて検討を進めていきたい」という方針を述べました。

次に問題になったのは、「東京オリンピックに向けた強化費」の件です。

予算として、約103億円が計上されていました。

競技力向上のために、文部科学省が「日本スポーツ振興センター(JSC)」に出す交付金について、選手の強化事業の責任が文部科学省にあるのか、それともJSCにあるのかが問題となりました。

特に出席した有識者が問題としたのは、JSCが進めていて迷走した「新国立競技場」の建設問題で、この交付金が「新国立劇場と同じになっては困る。しっかりと計画を立ててほしい」と注文をつけました。

また河野大臣が「オリンピック便乗の予算」と問題視している事業も検証されました。

具体的には、「オリンピックまでに全国でイベントを開く(文部科学省)」、「オリンピックが開かれる夏場に花の生産力を高める(農林水産省)」、「アサリを使って東京湾の水質改善を目指す(環境省)」の三事業です。このことについても有識者から、「オリンピックと何の関連があるのか」、「もともとある補助金でやればよい」と非難が集中しました。

科学技術については、二つの事業が検証されました。

一つ目は、約235億円を投じた「スーパーコンピューター事業」で、「次世代機『ポスト京(けい)』は期待できる成果の説明をしてほしい」との指摘がありました。

また二つ目は、今年度約1,652億年の予算が計上された「国際宇宙ステーションの関係事業費」についてで、「累計で8,260億円も投じていますが、それに見合う成果を上げているのか」という議論がなされました。

結局河野大臣は、「ステーションに日本人が行って喜んでいる時代は終わったのでは。厳密に検証する時期にきている」との指摘で終わりました。

  その他にも、国土交通省などの三基金(約420億円)については「余剰金は国庫に返納すべき」、電源立地への交付金(約1,316億円)については「国が指標を設定して、自治体にも検証を要請すべき」などと、結論付けました。

行政事業レビューに対する河野大臣の姿勢

今回、マスコミが注目することもあり、国民が知らなかった「税金のムダ遣い」がクローズアップされて、それなりの成果はありました。

河野大臣も「行政事業レビュー」前に「これから細かく見ていくので、今日は口火だ」と発言して、意気込みを語り、またさらに「消費税を10%に上げる以上、税金のムダ遣いは一つ一つつぶす必要がある」、「情報開示をきちんとするのが第一歩」などと発言し、河野大臣主導で今回の行政事業レビューが実施されたことがうかがえます。

ただ、安倍政権の看板政策に対しては、他の事業に比べてやや甘さも見られました。

地方創生関係(約129億円)を取り上げた際には、河野大臣は「地方創生を目玉でやるなら、新型交付金をきちんと使うようにしていかないといけない」と会見で発言しましたが、記者から「地方創生で設けた新型交付金と既存事業とが重複しているのではないか」との指摘を受けると、既存事業だけを切り捨てる裁定を下したのです。

確かに、河野大臣は安倍内閣の一員ですから、地方創生関係事業を残すという判断も理解できますが、切り捨てられた既存事業の中にも、国民生活欠かせない事業があったのではと危惧されます。

今後の行政事業レビュー

この「行政事業レビュー」は、民主党政権時代に実施された「事業仕分け」とよく似ています。

ただし、廃止・存続の判定までやった「事業仕分け」とは異なり、この「行政事業レビュー」は、単にムダ遣いをチェックするというもので、結果に強制力もありません。

従って、結局のところ、言いっぱなしで終わり、無駄な予算の削減に効果がないのではという意見もあります。

また、検証の対象は「無駄の多いもの、問題のあるもの」という基準がありますが、今回選ばれたのは「エネルギー予算」、「科学技術予算」、「オリンピック便乗予算」などの8府省の55事業にすぎません。

国の事業は、約5,000もありますので、今回検討されたのは、全体のわずか1.1%にしかすぎません。

この数字からも分かるように、検討数の上からもあまり期待できず、一種の「パフォーマンス」ではないか、という声も聞こえます。

 しかし、今回の「行政事業レビュー」では、実現の見通しが立たない「核燃料サイクル」に対して、税金が12兆円以上も費やされていて、今後も毎年1,600億円ずつ使われていくという事実が、国民の前に明らかになるなど、納税する国民の代弁者という点では、一つの成果を上げていると言えます。

とは言っても、気になる点もあります。

それは、担当大臣である河野大臣の「行政事業レビュー」に対する姿勢です。

河野大臣は、大臣就任直後に、自らのブログを閉鎖して、自分が今まで訴えてきた主張・政策を見られないようにしたり、会見の際の記者からの質問でも、過去の自らの発言をあやふやにしたりなど、「行政改革」を期待している国民に、不信感を与えるようなことになってしまいました。

 いずれにしても、納税している国民の声に耳を傾け、次年度からはもっと深く「税金のムダ遣い」に切り込んでほしいものです。

行政事業レビューに国民は期待しています

  無駄な予算の削減には効果がないかも知れないが、情報を公開し、問題点を国民に提示するという意味では、今後の「行政事業レビュー」に期待と関心を持ちましょう。

 

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