中国人民元の主要通貨入りは世界にどのような影響を与えるか?

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中国人民元の主要通貨入りは何を意味するのか?

先日、国際通貨基金(IMF)は、中国の通貨「人民元」を「主要通貨」として、IMFの加盟国間のやり取りに活用していくと発表しました。

しかも人民元は、アメリカドル、ユーロに次ぐ、「第3の通貨」に位置づけられ、日本円は第4の通貨となりました。

人民元が主要通貨となったことで、どのような影響が出てくるのでしょうか。

主要通貨とは何か?

「主要通貨」とは、国際的な市場で取引される通貨のことで、取引の量および参加者が多い通貨のことを言います。

具体的には、アメリカドル、ユーロ、日本円、イギリスポンド、スイスフランが該当します。

外国為替市場には、一般的に「主要通貨」と「マイナー通貨」という区分があります。

この区分を行う考え方の基本は、流動性があるか、つまり頻繁に取引されているかどうかです。

基本的に「主要通貨」以外は、全て「マイナー通貨」ということになります。

通常「主要通貨」には、流動性の問題はありませんが、「マイナー通貨」には流動性はもちろん、通貨によっては、制度面や信用面に問題がある場合があります。

主要通貨とIMF

  IMFは、加盟している国が資金不足などに陥った場合に備えて、アメリカドル、ユーロ、イギリスポンド、日本円の4つの主要通貨を組み合わせた資産を形成しています。

この資産(「SDR」と言います)を加盟国間の資金のやり取りなどに活用しているわけです。

これまで、IMFはアメリカドルを41.9%、ユーロを37.4%、イギリスポンドを11.3%、日本円を9.4%の配分で組み合わせてきました。

しかし、IMF理事会で、2016年10月から中国人民元を主要通貨に追加することを決定しました。

この決定後に、今までの配分を変更して、新たな組み合わせとして、アメリカドルを41.73%、ユーロを30.93%とし、第3の通貨に中国人民元を10.92%としました。

日本円は第4の通貨として8.33%、イギリスポンドを8.09%としたのです。

中国人民元が第3の主要通貨となったことで、立場的に日本の円を上回ることになりました。

その理由としては、中国の貿易量が巨大になり、国際的な金融取引で中国人民元の使用頻度が高くなっていることが考えられます。

今後世界各国が、中国人民元をより多く保有する一方で、その結果として日本円の存在感が相対的に低下していくことが予想されます。

そして、G7(先進7か国)の主導のもと維持されてきた世界の通貨システムが、中国人民元の主要通貨入りによって、より一層中国の存在感が高まっていくことになります。


 

なぜ中国人民元が主要通貨なのか?

  前述したように、「SDR」とは、IMF加盟国が対外的な支払いに充てる外貨の不足時に、アメリカドルやユーロ、日本円などと交換できる、IMFが形成した特別な資産のことです。

この仕組みが始まったのは1969年ですが、当初は「SDR」の価値は「1SDR=1アメリカドル」に固定されていました。

しかし、現在は金融市場における取引量と頻度から、アメリカドル、ユーロ、イギリスポンド、日本円の4つの主要通貨を基に、「SDR」の価値が決まる仕組みになっており、この4つの通貨のレートに応じて日々変動しています。

IMFは、世界の経済状況を鑑みて5年に1度、主要通貨を見直していますが、中国は以前から中国人民元を「SDR」に加えるように、求めてきました。

これに対してIMFは、2010年に、中国の貿易量は十分な基準を満たしてはいるが、中国人民元は世界市場で広く利用されていないとして、採用を見合わせていた経緯があります。

その後、貿易の決済などに中国人民元の利用が増加し、また中国政府も中国人民元の制度を徐々に改革しているとして、IMFは中国人民元が主要な通貨の仲間入りをするのは「時間の問題だ」という認識を、この時点で示していました。

また、世界の通貨システムを主導してきたアメリカも、中国人民元をアメリカドルや日本円などの通貨と同等に扱うことによって中国政府が改革を進めることを期待し、「SDR」に中国人民元を加えることを容認しました。

人民元が主要通貨になった場合の影響

中国人民元の主要通貨入りが実質的に決定したことで、現在欧米が主導している国際金融秩序が、大きく転換するのではないかという見方が大勢です。

つまり、急速な経済発展を続ける中国が、金融という新たな分野においてますます発言権を増していくのではないかということです。

もちろん、このことを見越してアメリカは、IMFに対して主要通貨入りを反対してきた経緯があります。

それに対し中国は、「発展途上国」の意見が反映されるような国際的金融機関として、「AIIB(アジアインフラ投資銀行)」の設立を提唱しました。

これは、アジア地域の発展途上国におけるインフラ整備を支援するためのものです。

中国のこの提唱を受けて、アジアだけでなく、中国と経済的な関係を強めたいと願うヨーロッパ各国なども、参加を表明しました。

その結果、57か国が創設メンバーに加わることとなり、新たな国際的な開発金融の枠組みを形成する形になりました。

 このような動きを受けて、もはや中国抜きに世界の金融は考えられないところまで来ていることを悟ったIMFは、今回の主要通貨入りへと舵を切ったのでした。

中国人民元が新興国の通貨としては初めて、欧米主導であるIMFの主要通貨に加わったことは、中国の存在感を一層と高めるものだと言えます。

また、中国人民元が世界の主要通貨に加わったことで、今後、需要の増加が予想できます。

現在、世界中で保有されている「外貨準備」のうち、中国人民元の割合は約1%にすぎませんが、世界の主要通貨と認められたことで、中国の通貨が信用を得て、この割合が最大で4%まで増加し、日本円で約40兆円という多額の需要が、中国人民元にもたらされるのではないかという試算もあります。

中国人民元の課題

  中国は、中国人民元が主要通貨に加えられるために、金融自由化を進めてきましたが、アメリカドルや日本円など、先進国の通貨と比べると、まだ多くの規制が残っています。

例えば中国政府は、1日当たりの為替レートの変動幅を上下2%にまで段階的に拡大したり、国境を越えたお金のやり取りの中で、貿易での決済は中国全土でどの企業でも中国人民元でできるようしたりと、規制を緩和してきました。

さらに、中国政府はこれまで国内の銀行業を保護するために、預金と貸し出しの金利の上限・下限を規制してきましたが、貸し出し金利は2013年、預金金利も2015年にそれぞれ規制を撤廃しました。これによって、表面上は銀行が自由に金利を設定できるようになりました。

しかし、中国では現在も、投機的な取引を制限するという名目で、お金を自由に海外から持ち込んだり、また海外に持ち出したりすることができません。

さらに、個人が中国人民元と外貨の両替を行う場合、原則として年間5万ドルまでと決められています。

また企業の場合も、貿易や中国国内で稼いだ利益といった裏付けがある場合を除いて、原則として中国人民元と外貨の両替や国境を越えた送金は認められていません。

 このような規制があるため、中国に直接投資を行うおうとする時には、取引の度に必要な資金の計画を中国政府に提出し、許可を受けなければなりません。

また、海外の投資家が中国の市場で人民元建ての株式や債券に投資したい時も、中国政府が認めた機関投資家や証券取引所を通じ、一定の金額の枠内で行わなければなりません。

一方、中国人民元の為替レートでも、中国独自の仕組みが作られています。

これは「基準値」と呼ばれていて、2015年8月に、中国はこの基準値を市場によって決めるように改正したと発表しましたが、実際には中国政府が市場に介入して、操作しているという指摘が大勢です。

中国人民元が主要通貨に入っても、海外の企業や投資家の間では、中国人民元は使いにくいという考えが根強くありますので、中国政府は今後いかに、規制を緩和できるかにかかっています。

中国人民元と日本

  この流れを受けて、今の所日本政府は、中国人民元が主要通貨入りすることに対して、国際的な金融取引ではそれほど影響はないと考えています。

しかし、中国人民元が各国の外貨準備に加えられ、国際取引において使用量が増加すれば、存在感は徐々に増すことが予想されと思っているのも事実です。

そうなれば、日本円の存在感が相対的に低下することは必至であるという指摘もあります。

過去には、日本円の存在感を高める取り組みとして、1980年代から2000年代初めにかけ、「円の国際化」として積極的に議論されました。

そして、海外から日本に投資する際に事前の届け出をなくすなど、規制を緩和し、円を使いやすくするような環境整備も行われました。

しかしこの規制も、日本経済の停滞によって、政府や日銀の目論見どおりには、進んでいないと言えます。

日本としては、日本の投資家による中国国内での人民元建て取引や、人民元の決済ができる銀行の日本国内での設置などを画策し、人民元の勢いを取り込みながら、世界の金融市場で遅れを取らないような施策が望まれます。

人民元の主要通貨入りは、日本円に徐々に影響を与える

 人民元の主要通貨入りによって、世界の金融に影響を与えることが確実な現在、日本円の存在感を失わないような施策が必要です。

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