1機200億円の航空機を爆買い!その資金源はどこに?

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最新鋭航空機「ボーイング787」を80機発注した 全日空

世界の航空機メーカーといえば、アメリカの イリノイ州シカゴ にある「ボーイング社」と、欧州の「エアバス社」が有名です。

もともと世界の航空機産業は、第二次大戦中に数多くのメーカーが乱立しており、戦闘機を生産することで成り立っていました。

ですが、戦後巨大メーカーは、合併吸収を繰り返し、アメリカでは「ボーイング」に「ダグラス」「マグダネル」が吸収され、「ロッキード」「マーティン」が軍需用に軸足を置いて生産するようになったことから、ボーイング1社のみがアメリカを代表する 大型エアクラフトメーカー になったのです。

これに対し、エアバス社は欧州の4カ国にまたがる国際企業連合。

本社はフランス南部、スペイン国境にほど近い トゥールーズ にあり、ドイツ・フランス・イギリス・スペインの航空機メーカーが集結して、巨大メーカーとして1970年に設立されました。

日本では、東亜国内航空(後の 日本エアシステム、現在は 日本航空と合併)が、1979年に初めて発注。

エアバス A-300 が初めて日本国内で運航された後は、全日空が A-320ceo と A-321ceoを発注。

ですが、ボーイングのセールスの圧倒的な力に、それ以後は導入が見送られ、全日空も日本航空同様に、次々とボーイング737、767、777、787を保有するようになります。

2015年3月31日現在では、ボーイング機が 201機 、エアバスが 12機 、他社が 21機 保有しています。

220機を超える航空機を全て自社で保有しているのは、世界でも日本航空と全日空くらい。

そのほかの ナショナル・フラッグ・キャリア(国を代表する航空会社) は、アメリカも含めて リース会社 からの調達によって保有されているのが通常です。

例えば、アメリカのユナイテッド航空は、1990年代には日本の 首都圏リース というリース会社から ボーイング747(愛称 ジャンボ)を調達していました。

言い換えれば、日本の会社が ジャンボ を買い付けし、アメリカのナショナル・フラッグ・キャリアに貸し付けていたわけです。

これに対して、日本の場合は、航空会社が長い間「日本航空」「全日空」「東亜国内航空」「南西航空(沖縄)」「日本近距離航空」などに限定されていました。

これらは国が許可した航空会社であり、その経営には国の考え方が色濃く反映してきたのです。

現在は日本航空グループと全日空グループに集約され、格安航空会社がデビュー…という構図にはなっていますが、国の資本や支援を受けていた日本航空と、純粋に民間主導の全日空は、ライバル関係であると同時に、資金面でも大きな違いがあったのです。

2008年、全日空が設備投資した金額は 3,577億円。

これだけの投資を、自前の資金で調達することは不可能ですが、全日空は12もの提携銀行との間で、なんとか可能にしているのです。

これは、大変見事な「会社経営」という他はないでしょう。

年間2,000億円もの「燃料費」を支払う、全日空

もう少し、全日空を例に航空会社の経営について考えてみましょう。

2012年の経営レポートから数字を拾ってみます。

2011年4月1日から2012年3月31日までの1年間の収益は 純利益で634億円。

これに対して、経費はざっと以下の通りです。

・航空運送事業費用として、約1兆1,740億円
 その中で最もウエイトの大きいものが 燃油費と燃料税 で、2,631億円、次が 人件費がで2,510億円です。

・営業費用などを合わせた、合計費用(連結費用)は、約1兆1,314億円に上ります。

これは 広島県広島市の年間予算合計 1兆1,563億円(2012年度)に匹敵します。

ちなみに、2012年4月1日の広島市の人口は、推計で117.5万人。

地域行政は収支バランスが同じ金額になるように設定されますので、全日空1社の経費と、広島市の予算・経費がほぼ同等、と考えられます。

全日空は、エアドゥや格安航空会社(LCC)のピーチ、バニラエアなど、複数のエアラインを傘下に収めており、中にはリース契約している機体もあるため、経費にはリース費用が含まれます。

ですが、自社保有となれば、ある程度年数を使用した機体を、海外を含むエアラインにリース事業できるなど、収入のめどが付きます。

自社保有の強みは、まさに世界中で航空機需要が高まっていることが功を奏していく、ひとつのメリットなのです。

さて、こうした流動資産を活用していくエアフラッグの場合、純利益は多いに越したことはないのですが、ここでは財務キャッシュフローについて、見てみましょう。

財務キャッシュフローとは、借り入れている資産で赤字となった場合でも、その資産があることで利益を生み出すことが約束されるため、黒字として計上する考え方です。

例えば、2012年3月決算時の短期借入債務(1年内返済予定)は、1兆2,740億円。

銀行からの長期借入(1年内返済予定以外)は、7兆1,666億円、合計では 約9兆6,365億円 に上ります。

自己資本額は 5,490億円 に対し、自社保有機 166機 、リース機 60機(2012年3月31日現在)。

この自社保有機体が資産として計上されているため、新たな融資を可能にしているのです。

そして、新しい機種を導入するメリットは、その経済性(燃費向上)と、会社の安定度をPRする最も大事なセグメントと言えます。

つまり、年間2,000億円もの燃料費用を支払っても、どんどん設備投資しなければならないIT産業のように、エアフラッグは経営戦略上、200億円もの航空機を数十機「まとめ買い」しなければならないわけです。

実は、経営失敗が多い!アメリカのエアライン事情

エアクラフトカンパニーが、合従連衡した裏には、その経営基盤の強化と世界経済の動向に左右されないための条件が揃っていたことが挙げられます。

ところが、逆にエアラインはまさに「戦国時代」が世界中で繰り広げられています。

アメリカでは、ユナイテッド航空とデルタ航空、そしてアメリカン航空の「メガキャリア」が1日あたり1.5万便ものフライトを運行しています。

世界最大のフライトキャリアである、アメリカン航空ですが、2011年11月に経営破綻。

アメリカ政府の肝いりで、USエアとの合併により経営再建が計られ、現在はアメリカで最も「信頼される」エアラインになりつつあります。

デルタ航空は全米第3位のエアフラッグ。

1991年に破綻した「PAN AM」こと「パン・アメリカン航空」を買収し、2005年の原油高騰や台風被害に苦しみながらも、2008年にノースウエスト航空(日本乗り入れも果たしていた)と合併。

700機以上もの航空機を保有するエアラインとしては、堅実な経営で有名ですが、そこには意外な話があります。

アメリカは穏やかな気候の西海岸、冬の暴風で有名な東海岸、南西部に起こるハリケーン、そしてカナダとの国境にある五大湖の強烈な北風…と、パイロット泣かせのフライトがオンパレードです。

デルタの本拠地はハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港(アトランタ、南西部ジョージア州)、滑走路は5本、年間の発着数は100万回弱にも及び、羽田空港の3倍もの超過密空港なのです。

南西部、もちろんハリケーン被害の最も過酷な場所で、デルタは幾度もフライトキャンセルによる経営危機を迎え、そしてパイロット達の技術も非常に高まった、という積み重ねがあります。

そして、かつてのノースウエスト航空の本拠地は、デトロイト(ミシガン州 = 五大湖の エリー湖 や ヒューロン湖 に接す)とミネアポリス(ミネソタ州 = スペリオル湖 に接す)であり、強烈な湖からの風でも機体を離陸させ、着陸させる技術を持っていました。

現在のデルタ航空の安定経営度は、意外にも地理的条件を克服しようとする社員の力によるもの、というのが本当のところでしょう。

そして、有名なのがユナイテッド航空。

世界最大の規模の一角を占めているにもかかわらず、経営難が続く歴史あるエアフラッグのひとつです。

記憶に留まる悲惨な「9.11」の際、ニューヨークの世界貿易センターに激突した、ボーイング767は、ユナイテッドの175便であったため、それ以降の乗客数が激減し、経営破綻にまで直面します。

その後、なんとか経営再建し、2010年にコンチネンタル航空と合併。

2014年1年間の経営収支は、4兆6,680億円の収入に対し、経費は4兆4,400億円(いずれも、1ドル=120円換算)、純利益は2,280億円です。

いずれも、母体が大きい航空会社でなければ、新たな航空機の「爆買い」は無理な訳ですが、700機以上保有し、これから50機程度の購入を決めているユナイテッド、そして順次400機程度の入れ替えを行うデルタ、とその規模からみれば、全日空は非常に経営的に「健闘している」といって良いわけです。

ただ、どのエアラインも収入源の源は「航空チケット収入」であることは、間違いありません。

アメリカのエアラインを立て直した、凄腕の日本人

日本航空、全日空のナショナルフラッグである2社は、一方は国策企業、もう一方は民間企業として始まりましたが、その経営には国の関与が非常に大きかった歴史があります。

日本航空はその人事に政治家の口が挟まれ、全日空にはロッキード社からの航空機導入という「ロッキード事件( = 1976年)」が起こります。

2001年には、アメリカ同時多発テロ事件が起こり、全日空は、乗客の落ち込みを 日本政策投資銀行 の無利子融資で乗り切ります。

これに対し、2010年、日本航空は 東京地方裁判所に会社更生法 を申請し、受理されます。

日本の航空企業主要2社は、あくまでも日本を拠点にフライトを行うため、経営はどうしても日本を中心に見ることが多くなります。

これに対し、アメリカの場合は国土の広さから、鉄道の代わりに航空機輸送が行われており、公共交通であるものの、あくまでも政府は関与することはありません。

ですから、世界中で起こる航空会社の破綻で、最も数が多いのはアメリカであり、あまりにも安易にフラッグキャリアが設立されてしまう、という悲劇も起こるのです。

ここで、面白い話をしておきましょう。

鶴田国昭、という名前の日本人、コンチネンタル航空(合併後消滅)顧問を務めた人物です。

彼は、1936年生まれ、川崎重工からアメリカの航空会社へ招聘され、その後コンチネンタル航空の上級副社長になりました。

行ったことは、会社の再建であり、不要なコストカットと社員のやる気を出させ、顧客へのサービスを高め、そして社員の使う機材を新しいものへ変えることだったのです。

こんな当たり前のことが、実はアメリカではできていませんでした。

コンチネンタル航空は、1994年に業界最低のサービス、荷物の紛失や定時発着の不可など、最下位の評価でしたが、なんと1年で最高ランクへと輝いたのです。

その後、コンチネンタルが、ユナイテッドに買収される際、ユナイテッドの優良株として大いに貢献したのはいうまでもありません。

700機もの航空機を持っていても、結局はヒューマンサービスの結集でなければ、会社は動きませんし、客は寄り付きません。

実は、資金源の元種は、人間一人ひとりにあったのです。

エアラインは華やかな一面、その支え手はチーム力が源泉

まとめに はいりましょう。 200億円もの航空機を買うことと、200万円の自動車を買うこと… その違いは、一体なんでしょうか? 街の信用金庫にお金を借り入れすることと、メガバンク数社に社債を引き受けてもらうことの実態は確かに違うかもしれません。 ですが、結局はヒューマンパワーと、トラスト(信頼)、未来への挑戦 なのです。 最新の航空機を買うことは、それだけ顧客の安心感を高めることにつながります。 そして、それは燃油コストを下げ、経営パフォーマンスを上昇させていきます。 経営陣はこれだけの大勝負する、その自信の裏側には、一般社員の努力が欠かせません。 経費の半分は人件費、だからこそ、エアラインは華やかな産業なのです。 もし、お近くの空港からフライト予定があるならば、そういったことも思い出していただけると幸いです。

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