猫の目のように変わる「就職活動」開始時期

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就職活動が6月に再び変更へ

大学生の就職活動開始時期を、現在の年8月から来年は6月に前倒しすると提案していた「経団連」の方針に対して、先日大学の団体で作る「就職問題懇談会(就問会)」が事実上容認しました。

これによって、来年から再び6月から就職活動時期がスタートすることになりましたが、昨年8月に変更されたばかりであり、会社、大学ともに困惑の声が上がっています。

就職活動のあるべき姿とは、何でしょうか。

就職活動とは何か?

「就職活動」とは、職業に就くための活動の総称で、略して、「就活」とも呼ばれています。

一般的に、学生・失業者などで職業に就いていないか、あるいはフリーターなど非正規雇用の人が、企業や官公庁などに正規雇用されるための活動を指します。

また通常、転職や自営業を始めるための活動は含めません。

今回、就職活動の開始時期が変更されたのは、大学生、短大生、大学院生についてですが、これらの人たちの就職活動は、1990年代までは多数企業の採用活動が同時期に集中していました。

しかし1990年代半ば以降になると採用企業が増加した影響で、現在は長期化傾向にあります。

「就職協定」廃止以降、メガバンク、メーカー、総合商社、航空会社など大手企業志望者が増加しています。

現在では、活動開始時期は早期化傾向なっており、事務職志望の4年制大学生は、3学年時の秋季以降に始まり、半年から1年程度活動することになります。

学生の就活は文系学生、理工系学生に限らず早期、かつ長期化傾向が見られます。

4年制大学の学部生の就職活動スケジュールは、3学年秋期から初冬に就職セミナーなどを受講し11月から経団連非加盟企業が面接など採用試験を開始します。

経団連の紳士協定に従う大手企業は、翌2、3月に会社説明会を開始して4月1日一斉に採用試験を開始します。

ゴールデンウィーク前後に初期内定者が出揃い、5月以降に地場企業、中小企業、大手企業二次募集が行われ、9月に留学生、公務員試験不合格者、内定辞退者補充などを目的として募集され、10月1日に内定式を挙行する企業が一般的です。

就職活動の問題点

1973年(昭和48年)から1996年(平成8年)の間は、企業と大学・短大の間に、学生の学業を妨げないように、一定の時期まで企業から卒業見込み者に対するアプローチは行わないという「就職協定」がありました。

企業の中には、この協定を破って抜け駆けをして、学生にアプローチをかける「青田買い」などの例がありましたが、一定の抑止効果は上げていました。

しかし、企業側の要請でこの協定が廃止された後は、就職活動は早期化、長期化の傾向が加速しました。

多くの大学では1,2年生時は教養や専門分野へ入る前の基礎的な知識を身に付けるための講義が中心ですが、3年生からはそれぞれの専門的な講義が開始されます。

この頃から、大学らしい教育が受けられるようになるのですが、講義や卒業研究の合間に就職活動を行わなければならなくなったため、「企業側は採用活動の時期を考えるべきである」という意見も、根強くあります。

大学側のこのような声を受けて、経団連は加盟している企業を初めとした多くの企業に対して、就職活動解禁を2015年度(平成27年度)卒の人までは、大学3年12月解禁、採用試験は大学4年(平成28年)4月1日以降に行うことを紳士協定として呼びかけました。

しかし4月1日以前に採用試験をしている企業が多いのが現状です。

2013年(平成25年)、安倍首相の要請により2016年度(平成28年度)以降卒の就職解禁時期を3か月後倒しにし、大学3年生3月解禁、大学4年8月1日以降採用試験と決定しました。

これにより、3年間勉強をした上で卒業論文、卒業研究と同時並行して就職活動を行うことになり、早期化、長期化を抑えられ、大学生活の圧迫がかつてより解消されることが見込まれたのです。

しかし、解禁や採用が後ろ倒しになる一方で、解禁前(大学3年生の8月ごろ)のインターンシップでの就職活動が、就職に有利になるということで脚光を浴びており、2016年(平成28年)卒を対象とした就職活動では、売り手市場ということも相まって、インターンシップ参加希望者が急増しました。

このような現状について、インターンシップを利用して水面下で学生の囲い込みを行っているのではないか、あるいは解禁前のインターンシップに関して就職活動を控えている学生側が混乱するのではないかといった懸念の声を出ています。

また一方で、短期化によってより一層学歴が重視されるのではないかという意見もあります。

このようにして、様々な声を反映して「8月解禁」になりましたが、結局冒頭に書いたように、たった1年で「6月解禁」に戻ることになったのです。

就職活動の現在

インターネットの普及以前は、大学の就職課に張り出された「求人票」を見たり、自宅に送られる企業求人パンフレットなどを見たりして、学生が企業に電話や郵便などでコンタクトを取り、会社訪問、入社試験を行うのが普通でした。

しかし、インターネットが普及した2000年頃からは、大手企業を中心に「就職ポータルサイト」に会員登録し、そのサイトを経由して企業に受験の意志を表明したり、あるいは会社説明会や入社試験の予約を行ったりするのが一般的になりました。

現在では、就職サイトにしか求人情報を出さないという大手企業も多く、就職サイトに登録することは、就職活動をする事務系の企業を志望する学生のスタンダードになっています。

このような傾向にあるため、面接の受け方や「エントリーシート」の書き方、自分の長所、適性、キャリアプランを自ら検討する「自己分析」などを解説した「就職マニュアル本」が数多く出版されるようになりました。

また近年では、就職支援を掲げる就活系団体なる組織が多数編成されており、大学3年生や大学2年生までも対象とした有料セミナーなどで早期の就職活動開始を促すような活動も見受けられます。

就職活動6月解禁の意味

今回、就職活動の「6月解禁」を事実上容認した就問懇の吉岡知哉座長は、「企業が最終的に決めること」と述べています。

この言葉の裏には、全ての企業がルールを遵守することや、学業への配慮を強く求めているという側面があります。

これを受けて、経団連の榊原定征会長は「(前倒しについて)ほぼ関係者の理解をいただけた」と言いました。

しかし、2017年度の就活日程については未定であり、引き続き検討するとの返答でした。

経団連は、会員企業向けの新指針に「6月の前倒し」を織り込む予定です。

会社説明会の開始(大学3年の3月)と正式な内定日(大学4年の10月)は、2015年と変わりません。

面接日を決める際には、学生に支障が出ないように企業に配慮を求めます。

例えば、夏に留学先から帰国する学生向けに別の採用枠を設けているような企業には、積極的に情宣を行うように促します。

安倍政権が要請した2015年の採用選考時期の繰り下げ(6月から8月)は結局1年で変更されることになりましたが、これは内閣府が行った調査で、大学4年生の57.0%が「就活が実質的に長期化し、負担が大きかった」と答えたためです。

繰り下げの大きな目的は「学業への影響を避けるため」でしたが、逆に35.9%の学生が「授業と重なり、おろそかになった」と答える結果になりました。

また、内定時期にも影響し、2015年10月1日現在の内定率は、前年から1.9ポイント減の66.5%になり、内定率が下がったのは、5年ぶりになります。

また就問懇は、就職活動が授業に与える影響を懸念しており、「8月解禁」を切望していました。

しかし、混乱を受け、今回「6月解禁」を受け入れる結果となりました。

吉岡座長は、「大変躊躇している」としながらも、「いろんな形で問題が生じたのは承知している」と容認した内容を明かしました。

しかし、就活の現場と就問懇との間には、温度差があるのも事実です。

国際教養大学キャリア開発センターの三栗谷俊明センター長は、「(大学関係者の)多くが、8月解禁について現場の声が尊重されていないと感じているのでは」と話しています。

また、法政大学で就職を支援する栗山豊太主任は、「6月解禁は妥当。ほっとした」と話しています。

学生の多くは、この解禁見直しを歓迎していますが、1年での変更には不満を持っています。

東京都内の私立大学3年の男性は、「就職活動本番を迎えるこの時期に決定するのは、学生に全く配慮していない」と憤っています。

東南アジアに留学中の国立大学3年の男性は、来年6月中旬頃に帰国予定で「たちの悪いジョークかと思った。学生が蚊帳の外で悔しい」と話しています。

今回の「6月解禁」の復活は企業側の強い要望により実現し、大学側がしぶしぶ従ったという構図です。

6月解禁にした方が、大手企業の採用が早まり、その分中小企業の採用も早まるという考え方です。

しかし、会社説明会の解禁は3月で変わらないため、大手企業は選考開始までの期間が今年の5ヶ月間から2ヶ月間短くなります。

この点について、ある企業からは「企業への理解が深まらないまま就職試験を受ける学生が増えるのは」と懸念の声が上がっています。

また、別の企業からは「会社説明会を解禁する前かに学生に接触する動きがますます激しくなり、なし崩し的にさらに前倒しが進むのでないか」と分析しています。

就職活動の協定には様々な問題をはらんでいる

たった1年で、選考開始時期が変更になりましたが、企業側と大学・学生側にとって最適なルールを作るのは、至難の業です。

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