日本のパソコン業界は再編されるか?

shutterstock_325965299

日本のパソコン業界は冬の陣?

先日、東芝と富士通、そしてソニーから分社したパソコンメーカーVAIOが、パソコン事業を統合する検討を始めたとの報道がありました。

パソコンの普及率とともに、売り上げの鈍化に頭を悩ませているパソコン業界ですが、この事業統合は何を意味するのでしょうか。

パソコン業界の現状

今回の事業統合が成功すると、国内の出荷台数が3割強のトップメーカーに躍り出ることになります。

しかし、これはあくまでも国内に限ったことで、世界で見てみると、事情は全く異なります。

アメリカの調査会社「ガートナー」によりますと、東芝・富士通・VAIOの3社を合わせた世界シェアは6%強、6位のアメリカ・アップルに並ぶものの、20%近いシェアがある中国・レノボや2位のアメリカ・ヒューレット・パッカード(現HP)には、かなり溝をあけられている状態です。

3社が事業を統合することで、シェアを拡大しようという目論見であれば、やや的外れではあるとさえ言える現状なのです。

また、日本の市場も次第に先細ってきました。

アメリカの調査会社IDCによれば、2010年に1,600万台を超えていたパソコンの国内出荷台数は、2015年には1,048万台と、前年実績よりも約3割下回る見通しとのことです。

アメリカ・マイクロソフト社が「ウィンドウズXP」のサポートを終了し、法人向け、個人向けでのパソコンの買い替えが一気に進んだことが、出荷台数減少につながっていると考えられます。

さらに、スマートフォンやタブレット端末が普及していることも、パソコンの不振に拍車をかけていて、このままだと2017年までに1,000万台程度の出荷台数にまで推移しそうです。

起爆剤となる要素が見当たらないため、今後も日本のパソコン業界は、厳しい状況が続きそうです。

パソコン市場は、1970年代にアメリカのインテルを先頭に、コンピューターのマイクロプロセッサーの開発が進み、これを取り入れたアメリカのアップルなどが製品を次々に作りだしました。

1980年代の国内市場では、NECが国産パソコンの代表的存在とも言える「PC-9800シリーズ」を製造し、圧倒的なシェアを誇りました。

続く東芝は、1985年に世界初のノート型パソコンをヨーロッパで商品化し、世界中の注目を集めました。しかしその後、マイクロソフトが基本ソフト「ウィンドウズ」を開発し、世界で普及してくると、それまで優位だったNECは苦戦を強いられるようになりました。

そして、決定的だったのが1995年に開発された「ウィンドウズ95」で、これによって今までパソコンに詳しくなかった一般の消費者に普及し始め、市場が一気に広がりました。

しかし、このパソコンソフトの普及によって、パソコンは独自性を出しにくいことが顕著となり、その結果2000年代に低賃金で組み立てる中国勢のパソコンが急速に出荷台数を伸ばしてきました。

この低価格競争に巻き込まれた日本のパソコン業界は、利益を出せなくなり、早急な対応をとる必要がありました。

そこで、NECは、2011年にレノボと合併会社を設立し、価格競争が激しい個人向けパソコンの販売はレノボが行い、比較的利益を上げやすい法人向けパソコンはNECが行うことで、住み分けを徹底しました。

これにより、この合弁会社は、出荷台数で国内1位のシェアを維持しています。

ブランド名「プリウス」などのパソコンを販売していた日立製作所は2007年に生産から撤退し、ブランド名「メビウス」などのノート型パソコンを販売していたシャープは2009年に最後のモデルを発売した後で同じく撤退しました。

パソコン業界ジリ貧の理由

パソコン業界が、一時期ほどの勢いがなくなった原因としては、2つ考えられます。

まず一つは、消費者がパソコンよりも「スマートフォン」や「タブレット端末」を購入する流れになっていることです。

低価格市場での小型ノートパソコンの出荷台数が減退していることから、数値としても消費者がスマートフォンやタブレット端末へ需要が移行していることがわかります。

2013年5月に、アメリカの調査会社IDCが発表した報告書によると、タブレット出荷台数が2013年にノート型パソコン全体の出荷台数を既に超えていて、2015年にはパソコン全体の出荷台数を上回る見込みだと言います。

タブレット端末の出荷台数は、2013年に59%増の2億2,930万台になりました。

この台数は、ノート型パソコン出荷台数を上回っています。さらに2015年には、タブレット端末の出荷台数が、ノート型パソコンとデスクトップパソコンの合計出荷台数を上回るだろうとしています。

この流れは、スマートフォンやタブレット端末の低価格化が要因であるとされています。

タブレット端末があればパソコンがなくても良い、と考えるのは自然の流れと言えます。

二つ目の理由としては、2012年10月に世界で「ウィンドウズ8」が発売されましたが、それまでのOSと比べて、大幅にユーザーインターフェースが変更されたため、期待に反して不評だったことと、思っていた以上にパソコンが低価格にならなかったことが要因と考えられます。

つまり、ソフト、ハード両面で行き詰ったと言えます。

パソコン業界再編の動き

今回判明した3社の事業統合について、東芝の幹部は「ぐずぐずしていられない。早い方が良い」と、2015年内に他の2社と基本合意を目指す考えを示しています。

しかし、これとは対照的に、富士通とVAIOの幹部は、「何も決まっていない」、「知らない」と繰り返すだけでした。この3社の違いは、現在置かれた状況を表しています。

東芝は2008年4月から2014年12月にかけて、税金を引く前の損益ベースで合計2,248億円もの利益を水増ししていた不正が発覚したばかりです。

会社全体で、儲けが出ているように見せかけた事実が浮き彫りになっていました。その中でも不正が深刻だったのが、パソコン事業でした。

中国メーカーの台頭で、東芝のパソコンが苦戦している中、歴代3社長にわたり生産の委託先に部品を高く売りつけ利益をごまかす不正を続けていました。

それによって、パソコン事業だけで利益の水増しは578億円になると言います。

東芝の、パソコンや生活家電を含めた「ライフスタイル事業」の2015年3月期の営業損失は1,097億円でした。

このままで推移すれば、2016年3月期も黒字に転じる見込みはありません。

室町正志社長は、不正会計によって温存され続けていたパソコン事業を「2015年11月までに方向性をつける」と宣言していたものの、具体的な方策は未発表のままでした。

一方、富士通のパソコン事業は、国際競争の激化と円安による部品輸入のコスト高によって2016年3月期に営業赤字への転落が見込まれています。

もし今回の事業統合が実現すれば、管理部門のコスト削減が可能になるため、富士通側にも統合を前向きにとらえる姿勢はあります。

しかしパソコン事業を来春頃に分社化することを、2015年10月に決定していました。

つまり、東芝よりも先に事業の効率化に向けて動き出していたのです。

また、ソニーから分社して2014年7月に設立されたVAIOは、戦略の転換が軌道に乗り始めたばかりです。

ソニーの時に量産を第一に考えた結果、海外メーカーとの価格競争によって収益が悪化してしまったという反省の下、現在は高性能の高価格帯モデルにターゲットを絞っている状態です。

販売台数が少なくても利益が出やすいビジネスモデルを目指しており、東芝や富士通と統合するメリットは少ないと考えられます。

今回の統合が成功するのか、それともただの「絵に描いた餅」で終わるのか、今後の日本におけるパソコン業界を占う試金石とも言えます。

パソコン業界の今後の方向性

現在、スマートフォンやタブレットに押されて出荷台数が減少しているパソコンですが、今後どのような方向に向かって行くべきでしょうか。

まず考えられるのが、「低価格化」ということになります。

当然のことながら、利用者がパソコンを購入する際に、同等の性能や機能であれば、少しでも安い価格を選びます。

パソコンは部品さえあれば個人でも組み立てられる商品です。

また、部品などが高性能化することによって従来の部品が古くなると、すぐにパソコンの価格は安くなる傾向にあります。

このような理由から、「パソコンは時間が経てばいずれ安くなるものである」と利用者は思っています。

現在、人件費の安い新興国で作っているパソコンと価格で勝負することは厳しいと言うのが現実です。

もう一つ考えられる方向性としては、パソコンの高性能化・多機能化です。

今まで最高のスペックで様々な機能を搭載したパソコンですが、今後は大型ディスプレイでテレビの視聴が可能なパソコンなどが想定されます。

しかし、パソコン市場で高性能・多機能な製品は、部品の進化と低価格化によって日を追うごとに進歩していきます

新しい商品が出た時点では正に高性能で多機能なのですが、日を重ねるたびその商品よりもさらに高性能なパソコンが続々と開発されることになります。

そうなれば、それまでのパソコンを超える付加価値がなければ市場で受け入れてもらえないということになります。

今後、パソコンがスマートフォンやタブレット端末と勝負できるとしたら、より高機能で多機能な製品を作ることができるかと言うことになります。

パソコン業界は転換期に来ている

パソコン業界は転換期に来ており、いかにスマートフォンやタブレット端末にない付加価値の高いものを提供できるかが今後の鍵になります。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でお金が無い.jpをフォローしよう!

日本のパソコン業界は再編されるか?
Reader Rating 3 Votes