ふるさと納税は寄附の新たなスタイル

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多様化したふるさと納税

ふるさと納税とは、現在自分が住んでいる自治体以外に寄附金を納付し、財政に苦しんでいる自治体の手助けをしようとする制度です。

「納税」という名前ですが、実際には「寄附金」です。

2015年4月から、税額控除の手続きが簡素化され、以前にも増して利用しやすくなりました。

では、そんなふるさと納税の今後の課題は何でしょうか。


ふるさと納税の狙い

ふるさと納税は、2008年の第一次安倍政権時、地方間格差や過疎などによる税収の減少に悩む自治体に対して、格差是正を推進するために創設された制度です。

個人が2,000円を超える寄附を行ったときに、住民税のおよそ2割程度が還付、控除されます。

また、2015年4月1日より、「確定申告」が不要な給与所得者等に限り、確定申告の代わりとなる「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を、寄附先の自治体へ寄附を行う度に提出(郵送も可能)することで、住民税から控除されます。

つまり実質的に、現在納めている県民税・市民税の一部を、任意の自治体へ移転するということです。

ふるさと納税をすると、税金が返ってくるというわけではありません。

税金が還付されるのは、確定申告した場合の所得税分のみです。

ほとんどが住民税からの控除になりますので、次の年の住民税分から差し引かれることになります。

住民税の還付に関しては、当年に寄附(ふるさと納税)をすることで次の年の住民税を先払いするようなイメージをお持ちいただければいいと思います。

なお、2015年4月1日より、税制改正が行われ、それまで住民税のおよそ1割程度だった還付、控除額が2割程度に拡大しました。

また、年間に5自治体までの寄附であれば、寄附ごとに申請書をその自治体に郵送することで確定申告が不要となりました。

ふるさと納税の流れ

次にふるさと納税の流れを、説明します。

まず、職業がサラリーマンの山本さん(「給与収入」が600万円、「世帯」は夫婦のみ、「配偶者」が専業主婦)が、5自治体にふるさと納税を行うとします。

「A町」に10,000円、「B市」にも10,000円、「C市」に20,000円、「D村」にも20,000円、そして「E県」に5,000円の合計65,000円をそれぞれ、2015年1月~12月の間に寄附したとします。

その後、山本さんはそれぞれの自治体の「寄付金証明」を提出して税務署で「確定申告」をしなければなりません。

これは、パソコンで入力した後で郵送しても構いません。

「確定申告」後の2016年3~4月にかけて「所得税控除額」が「確定申告」の際に指定した銀行口座に振り込まれます。

さらに、2016年5月頃に寄附を行った5つの自治体から「住民税通知」が送られてきて、その通知から控除されます。

ふるさと納税の特徴

ふるさと納税には、5つの特徴があります。

まず一つ目は、ふるさと納税をするとそれぞれの自治体から、寄附のお礼の品を送ってくれる場合があることです。

なかなか手に入らない高価な海産物や果物を送ってくれる自治体もあります。

また、その自治体にある旅館の宿泊券など、様々な施設の優待券がもらえる場合もありますので、旅行先を決めてその自治体にふるさと納税を行うのも一つの方法です。

地域に貢献できた上に美味しい特産物やお礼の品がもらえるのですから、ホームページなどでチェックするだけでも楽しいと思います。

二つ目は、自分と全く縁もゆかりもない自治体でもふるさと納税が可能だということです。

ふるさと納税という名前ですから、自分の故郷に寄附をするものだと思いがちですが、全く関係のない自治体へ寄附することができます。

三つ目は、ふるさと納税を行い確定申告した場合、その年の所得税から還付と翌年度の個人住民税から控除されることです。

所得税控除額、個人住民税控除額ともに寄付金の2,000円を超える部分についてが対象となります。

例えば、ある自治体に対して4万円の寄附をした場合、還付または住民税からの控除額を合計すると3万8千円になる場合もあります。

但し、寄附をする人の収入や家族構成に応じて還付・控除額は変わりますので、よく調べた上で行わなければなりません。

人によっては2,000円の負担でお礼の品がもらえたり、ふるさとに貢献できたりできるということになります。

四つ目は、ほとんどの自治体で寄附の「使い道」が選べるようになっているところです。

例えば、「A町の震災復興に向けた廃棄処分場の建設」や、同じ市町村でも「B市の歴史を継承するための図書館建設」「B市の美しい自然を守るための森林育成事業」「B市の子育て環境を整備のための基金」など、様々な寄附金の「使い道」を指定することができます。

普段、住民票のある自治体に払っている税金に対して、どのようなことに使われているのかを把握している人はかなり少数だと思います。

しかし、ふるさと納税なら税金の使い道を自分自身で決めることができるのです。

そして最後の五つ目は、複数の自治体に寄附ができることです。

例えば「旅行で行った思い出のC町の自然を保護してほしい」とか「祖母が住んでいるD市の介護施設に、自分の寄附金を使ってほしい」など、2つ以上の自治体を選んでそれぞれに寄附することもできます。

もちろん、E県の中にF市がある場合、E県とF市はそれぞれ独立した自治体ですから、両方に寄附することもできます。

ふるさと納税の新たな挑戦

全国の自治体が行っているふるさと納税ですが、他の自治体にないシステムや工夫を行い効果を上げている自治体もあります。

福岡県糸島市では、ふるさと納税を促進しようとインターネット決済を導入するなどのシステム改革を行ったところ、リニューアル後1ヶ月で寄附金額が昨年度1年間の3倍に達しました。

この動きに糸島市の担当者は、「金額だけでなく地域の認知度アップにも貢献している」と言って今後もさらにPRを行うと述べました。

糸島市は、地元の農協などの協力によって2015年4月から野菜や魚介類、酒といった地域の特産品31種類を、寄附金の返礼品として新たに加えました。

これによって寄附金額は増え、その6割以上は市内からの寄付でした。

この現状に市の担当者は、「全国発信するためには、市のホームページだけでは限界がある」として、2015年11月からシステムを全面的にリニューアルしました。

約1,700の自治体が利用している最大級のポータルサイト「ふるさとチョイス」と、JTB西日本が運営するふるさと納税自治体ポータルサイト「ふるぽ」の2つに、記念品カタログなどを掲載しました。

そして寄附の支払いもインターネット上のクレジット決済で24時間できるように変更しました。

記念品も合計87品目に増やし、寄附の時点でほしい記念品がない場合には寄附金額に応じて付与されるポイントを貯めておけるようにして、好きな時に品物と交換できるような仕組みを作りました。

この結果、リニューアル後1ヶ月間の寄附金額は約1,500万円となり昨年度1年間(約500万円)の3倍の金額に達しました。

今年度の累計でも約3,100万円と大幅に増加しました。市の地域振興課は、「さらに全国から寄附金を募って、様々な事業に生かしていきたい」と話しています。

ふるさと納税の問題点

ふるさと納税は、今ではすっかり国民に定着しそのメリットも浸透していますが、問題点もあります。

まず、本来の「財政に苦しんでいる自治体の手助けをしよう」という目的を置き去りにして、特産品の豪華さの比べ合いになっているのではないか、ということです。

テレビを始めとして、メディアでふるさと納税が取り上げられる機会が増えていますが、その際に豪華でお得な品がもらえることばかりを強調して情報が発信されているような印象を受けます。

もちろん、特産品を一つのきっかけにしてその自治体を認知してもらい、寄附金を納めてもらうという狙いは決して間違いではありません。

しかし、他の自治体をよりももっと高い特産品を送ることだけに注力しているようで、ふるさと納税の趣旨から考えると本末転倒であると言えます。

また、ふるさと納税は住民税の控除という特典もありますが、これは本来の住民税の考え方から逸脱しているのではないかという意見もあります。

それは、住民税は現在住んでいて住民サービスを受けている自治体に納めることが本来の形である、という考えがあるからです。

そもそもふるさと納税制度ができた背景には、各地域で税金の恩恵を受けながら成長したにもかかわらず、働き始めるタイミングで都会に出て、都会に納税している人が多いという現実があります。ふるさと納税は、ここで生じる地方と都会の格差をなくすために住民税の約2割をふるさとに還元しようとした制度なのです。

そのことを考えると、住民税の控除という制度には多少疑問が残ります。

ふるさと納税は素晴らしい制度だが、見直しの時期に来ている

都会と地方の税収の格差を是正しようと始まったふるさと納税ですが、特産品の豪華さを比べる競争になりつつあるので、そろそろ見直しの時期に来ているのかも知れません。

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