大阪の病院が減っている! 前年比5割増しの激減の理由は?

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倒産情報を握る、帝国データバンクを知っておこう

株式会社 帝国データバンク といえば、企業経営者だけでなく、金融機関に勤める人ならば誰もがお世話になる「信用調査会社」の国内最大手です。

信用調査の目的は、手形決済という商取引があるため。

手形は、現金決済の代わりになる証書であり、約束手形と呼ばれます。

商品を収めたA社が、B社から支払われたのが現金でなく、約束手形であった場合、そこには「30日後」「3ヶ月後」などと、手形を現金に換えられる期日が書かれています。

この場合、A社は3ヶ月後に現金に換えられる約束手形を受け取り、約束通り3ヶ月後に現金を振り込んで貰えば、それで取引成立ですが、その間に万が一でも「事故」が起きてしまえば、A社は負債を抱えることにもなりかねません。

事故とは、つまり「不渡り」を言い、B社がお金を振り込まない状態です。

これは、昔から「倒産」の前触れとして、恐れられてきました。

手形は裏書き(所有者を変える表記)によって、どんどん債権者が移動することがあります。

つまり、手形取引を指しますが、A社がB社から受け取った手形を、今度はC社に現金支払いの代わりに渡すことができることから、手形は社会にどんどん回っていくようになりました。

C社はA社から現金を受け取る代わりに、B社の振り込みを待つことになりますが、もしB社が不渡りを出してしまえば、C社も危なくなる可能性が高くなる…これが、手形取引による連鎖倒産の怖さです。

信用調査の重要性は、まさに手形取引から始まった、といっても過言ではありません。

帝国データバンクが存在する大きな理由は、お金ではなく手形という、古い経済の源流に即しているからなのです。

じつは、病院の倒産情報を握っているのも、この帝国データバンク だということを知っておきましょう。

病院の経営とは、どうなっているのか

さて、帝国データバンクが行っている調査の一つに「医療機関の廃業」があります。

医療機関は、クリニックと呼ばれる、無床から入院病床19床までの小規模診療所、そして20床以上の病院を指します。

東京や大阪、名古屋、福岡といえば、医師が多い地域として挙げられます。

その理由は人口の多さもありますが、やはり医科系大学の多さがポイントです、

東京には、東京大学・東京医科歯科大学(以上、国立)・杏林大学・慶應義塾大学・順天堂大学・昭和大学・帝京大学・東京医科大学・東京慈恵会医科大学・東京女子医科大学・東邦大学・日本大学・日本医科大学(以上、私立)と13校も存在しています。

これに対し、大阪は、大阪大学(国立)・大阪市立大学(公立)・大阪医科大学・関西医科大学・近畿大学(以上、私立)と5校を数え、近隣の京都や神戸も含めると近畿圏の医療系大学はさらに増えます。

名古屋は国立の名古屋大学と、公立の名古屋市立大学、私立では 愛知医科大学と藤田保健衛生大学が愛知県に座していますし、福岡では、九州大学(国立)・久留米大学・福岡大学(以上私立)と産業医科大学があります。

大学が多い、ということはすなわち「大学病院」を抱えることになります。

大学病院は医学研究の場であると同時に、一般患者にとって「専門病院」という見方が成り立ちますから、その存在は大変大きなものになると同時に、医大生は「医局」に所属することによって、医局から地域病院に派遣されながら、地域の医師として成長していくことになります。

大学病院が建設されれば、1学年100人の学生が在籍。

6学年で600人、そして研修医に看護師、教授や准教授などの教員、が雇用されます。

一人の医師を育てるためには1億円が国庫負担となり、一台5億円から20億円にも上るMRIなどが整備されますし、治験費用なども、病院自らが負担することさえ日常的です。

経営的に問題がない、と思われる大学病院でさえ、動くお金は一病院で数十億円から数百億円、大規模民間病院の場合は、さらに多額の金額に左右されることもありますから、病院ほど経営のプロがいなければ、本来はやっていけないのです。

私立大学の場合、6年間にかかる大学授業料や雑費などの教育費用は、医学生一人当たり、安くても2,000万円。高くなれば、軽く5,000万円を突破します(最安が順天堂大学、最高が帝京大学、2015年)。

仮に、6年間で3,000万円を支払い、医科大学に通い、6年間必死に医学を学んだ学生も、「医業」を学ぶカリキュラムはありません。

ここでは医業とは、病院経営を指します。

つまり、勤務医ならばともかく、医療法人の理事長になったものの、経営に失敗してしまう医師がいるのは、経営を学んでいないことから、仕方のないところ、と言えます。

例えば、お金に苦労する人生とは無縁な育ち方をした医学生、彼らが後期研修医制度を終えて、いざ勤務医になり、数年後に開業した途端に、お金を貸してくれるのは「福祉医療機構(WAM)」という独立行政法人です。

政府の機関であるWAMは、医師の開業資金から運転資金に至るまでの資金貸付を行うため、医師は自分の裁量以上の病棟を建設し、医療法人の理事長としてスタートするケースが少なくありません。

病院の経営は、小規模クリニックでも大規模総合病院でも、全く同じことで、収支が合わなければ存続できなくなってしまいます。

ですが、日本の病院の8割は赤字経営(平成27年3月11日発表「平成26年 病院運営実態分析調査の概要」、一般社団法人 全国公私病院連盟 資料より)でなんとかぎりぎりの存続…これが実態なのです。

一般財団法人 全国公私病院連盟の調査は、全国主要の病院 645 院の回答をもとにした数字、まずは見てみましょう。

年度別の収支を見た場合、22.2%(143 病院)が黒字、77.8%(502 病院)が赤字でした。

内訳では、自治体病院 358 病院の うち 9.2%(33 病院)が黒字、 90.8%(325 病院)が赤字となっています。

自治体病院とは、過疎地域や都市部の高度医療を専門に行うことから、赤字になるのは仕方のないところですが、その損失は不採用部門として、地方自治体が負担します。

注目すべきは、その他の公的病院。

黒字経営は、サンプル数186 病院のうち 33.3%(62 病院)のみ、赤字病院は 66.7%(124 病院)に上ります。

これらの病院の平均病床数(入院ベッド数)は250床から300床。

ベッド数が多ければ、入院日額が計算でき、安定した収入確保につながりますが、診療報酬が高い外科とその手術があることで、黒字になります。

公的病院には税金が投入されていますから、高度医療も可能なはず。

にもかかわらず、なぜ、赤字が66%にもなるのでしょうか?

そして、私的病院では、サンプル数101 病院の中で、47.5%(48 病院)が黒字。

赤字病院は 52.5%(53 病院)と、拮抗しているわけです。

日本の医療は、健康保険制度の危機だけではありません。

病院経営の危機も、論じなければならないのです。

なぜ、医師が病院を潰してしまうのか?

さらに、衝撃的な事実は先にあります。

帝国データバンクの調査によれば、2014年(平成26年)に休廃業・解散した医療機関は347件。

全国を地域別にすると、近畿地方は34件 で、前年比54.5%増にもなっています。

続いて、北海道が36件 、同38.5%増となります。

「日経ビジネス ON LINE」 2015年5月31日付け によると、「2015年病院経営力ランキング」で、大阪の病院はトップ10どころか、50位にも入っていないのです。

ようやく現れるのが、「78位 国立循環器病研究センター」(大阪府 吹田市)、続いて「93位 医誠会病院」(大阪市東淀川区、病床数327床)です。

ちなみに大阪府の病床を持つ病院数(病床数 20床以上)は、平成25年において 496施設(保健所は除く)あり、一般病院の病床数は 94,182床あります。

病床数19床以下のクリニック(無床も含む)は、全府内で 8,293ヶ所。

人口886万人の大阪府は、東京・北海道に次ぐ「人口比の病床数が多い」自治体となっています。

ところで、問題は山積しています。

一つ目は、大阪府の人口と、病床数(入院ベッド数)の関係です。

大阪府が公表している、平成25年(2013年)の人口で見れば、大阪府の人口総数は 886万人、そのうち 大阪市が 268.3 万人 で、堺市が 46.2 万人 ですから、大阪市単独で府の人口の30.2%を占めていることがわかります。

これに対し、大阪府全体の病床数の総数は 108,569床、そのうち 大阪市が 33,026床、堺市が 12,479床です。

総数から見れば、大阪市の割合は全体の 30.41%に及び、堺市は 11%にもなる計算です。

特に、堺市は大阪府全体のわずか 5.2% 人口で、病床数は 11%ですから、大阪府は単純に「大阪市に医療が集中している」という話ではないことがわかります。

原因には、大阪市民の生活状態も含まれます。

平成22年の数字(大阪府調べ)では、大阪市民で「生活保護受給者」は、145,420人。

実に、市民20人に1人が生活保護を受けている計算です。

この割合は、人口比で 5.3%、ちなみに全国の自治体平均が 1.5%で、大阪に続く高率の札幌市が 3%台 であることから見て、いかに所得の格差が大きい市であるかが、わかるでしょう。

全国レベルでは、各都道府県の大都市に大学病院があり、経済も発展していることから、医師の開業が相次ぐことが常識です。

ところが、大阪府に限ってみれば、泉南地区(岸和田市、貝塚市、泉佐野市、泉南市、阪南市、熊取町、田尻町、岬町)は、平成16年(2004年)に民間病院も含め、相次いで産婦人科が廃止、58万人を有する地区全体で残ったのはわずかに2つの公立病院(りんくう総合医療センター、市立貝塚病院)になってしまいました。

東北地方や中国地方などでも、過疎地域において、隣接した町村による「広域中核病院」が運営されていますが、大阪府にもこうした動きが起こり、地域連携でようやく医師確保や医療過疎からの脱出が進んできているのが実態なのです。

大都市に集約する総合病院とクリニック。淘汰の嵐という矛盾

大阪府と大阪市は、歴史的に何かと注目を浴びる地域です。

平成に入ってからの府知事、市長選挙公約には、病院問題が取りざたされ、その動向がクローズアップされてきました。

ですが、大阪は24時間 精神科患者救急搬送を受け入れる 大阪ドーム前の「社会医療法人北斗会 ほくとクリニック病院」が先駆けとなりました。

ここの病院が有名になったのは、薬物中毒者などの緊急搬送を受け入れたことです。

アルコール中毒と違い、薬物中毒の場合は、看護師も医師も処置の仕方がわからない場合が多いのですが、精神科専門の薬剤師を24時間配置することで、薬剤師の見方で医師の投薬診断が即座に行えるようになったのです。

こうした先進的な病院は、どんどんと増えている一方で、いままでと変わらない医療を続ける公立病院やクリニックは、淘汰されるのが大阪の現状です。

ここには、地域性の大きな特色が医療にも及んでいることが、薄々感じられるでしょう。

大阪は大学病院も多く、難治高度医療から、臨床を大切にする内科のかかりつけ医まで、さまざまです。

ですが、年々産業の空洞化や大阪から東京への一極集中型経済の弊害、そして高齢化の波が、地域の病院経営にも大きな影を落とし始めています。

クリニックを開業するにも、代々継いでいくべき若い医師が高齢化する街の現状に「先進医療を実践できない」として、閉院して勤務医へ転職するケース。

30代半ばで独立しようにも、配偶者が大阪府内の地域内ロケーションに固執して、ご主人の医師も結局激戦区の大病院に勤務せざるを得ないケース。

また、医師本人も、自分の子供たちの教育環境を考えて、大阪府内・大阪市内のより「高級な地域」での開業や勤務を望むケース…

その結果が、後継ぎ医師そのものが医業継承を拒否し、勤務医として働くことを選ぶという方向性にもつながっているのです。

大阪の病院が減っている理由は、経営努力を惜しまない病院とそうではない病院の「医業格差」が顕著になり、その結果、淘汰されているのが、旧態依然としている組合活動や投薬で経営維持を図るクリニック、という系図になっているわけです。

医業に競争は必要。TPPによって、日本の医療制度は変わらざるを得ない

平成27年(2015年)10月5日、アメリカ・アトランタでのTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)妥結は、世界中に大きなニュースとして取り上げられました。 中でも、日本とアメリカが世界貿易のルールを主導することが、これからの経済に大きな希望をもたらすことが認められたのです。 もちろん、中には「医療」の分野も含まれ、アメリカのような自由診療を基本とするような制度になる…と危惧する識者も多く存在します。 ですが、日本の医療には「西洋医学」だけでなく「東洋医学」も存在することを忘れてはいけません。 薬による医療だけが、全ての医療ではなく、日本には「手当て」という言葉があるように、触診を大きな武器として処置する医師が多くいることを奇貨とすべきでしょう。 大阪は、所得の格差が大きな自治体です。 だからこそ、本当に必要な医療を施すことで、医療の無駄を省くことになり、先進性だけを追い求めない医療を大阪の地で行うことが、日本の医療の本質につながるはずなのです。 大阪の病院が減っていることで、泉南地区がまとまったように、大阪の医療改革を日本の将来に反映させていくのが、希望の持てる医療日本を育てることになるのは、間違いないのです。

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