プロ野球選手の「年俸」はどのように決まるのか?

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年俸の決定方法とは

毎年シーズンオフは、プロ野球選手にとって「契約更改」の時期です。

テレビでは「推定年俸1億円!」などと報道されており、その金額には驚かされます。

しかし「年俸」という給料の決め方に馴染みがない方が多いのではないでしょうか。

一体どのように決めていくのでしょうか。


年俸制とは

年俸制とは、給与の金額を主に経営者と労働者との交渉によって1年単位で決める給与形態のことを言います。

ただし、決定した年俸全額が一度に支給されることはありません。

労働基準法に「毎月1回以上の支払いの原則」が定められているからです。

具体的な支給方法としては、年俸として提示された金額を12で割り、1/12ずつ毎月支給する方法や、年俸として提示された金額を14で割り、毎月と夏季と冬季に1回ずつ賞与として支給する方法などが一般的です。

このような支給方法だと、通常の「月給制」と変わりないように見えるかもしれません。

しかし年俸制と月給制の大きな違いは、前もって1年間に支払われる給料が決定しているかどうかという点です。

例えば、月給制では賞与の金額は会社の業績や個人の成績によって変わりますが、年俸制の場合は変わることはありません。
つまり働く前から今年度1年間はいくら給料が支給されるかが決まっているということです。

年俸制のメリットとして、長期の計画が立てやすいことが挙げられます。

1年間に最低いくらの給料が支給されるかが事前にわかるために、ローンの計画などが立てやすくなります。
また万が一、会社から期待されている成果を残すことができなくても1年間に支払われる給与は確定しています。

反対にデメリットは、1年間で支払われる金額が確定していますから、もし顕著な実績を残したとしてもその年度の賞与に反映されることはありません。

従って、賞与の評価がモチベーションになることは少ないと思います。

また会社が期待する成果を残すことができなかった時には、翌年の年俸が減少する可能性があります。

野球選手と年俸

プロ野球選手の給料は、「年俸制」です。

毎年ペナントレースが終わった11月頃から各球団で一人一人の選手に対して「契約更改」が行われ、いくらの年俸で来年の契約を更改することになります。

球団から提示される年俸額は、主に契約更改する年の活躍によって決まります。

その金額は球団の勝ちに貢献した場合には上がり、逆に不調で球団に貢献できなかったり、あるいは故障をして全く一軍の試合に出られなかったりした場合は下がることもあります。

ちなみに、ドラフトで指名された新人選手の年俸は1,500万円の上限があります。

また、年俸とは別に「インセンティブ契約」と言ってボーナスが支払われる契約があります。
契約は球団や選手によって異なりますが、選手によっては年俸よりも多いインセンティブがもらえることもあります。

この契約は選手にとってモチベーションアップになります。
しかし「逆インセンティブ契約」といって、ノルマを達成しなかった場合に減俸する厳しい契約を導入している球団もあります。

球団は、試合の入場料やテレビ放映権料や球団グッズの販売などによって利益を上げています。
そのため、ファンが多い球団と少ない球団では収入がかなり違ってきます。

例えば、読売ジャイアンツや阪神タイガースなどの古い球団は、昔から全国的にファンが多く黒字が続いていて他球団に比べて経営が安定しています。

それでも現在は昔に比べて野球離れが進んでいるため、ほとんどの球団で赤字が続き経営難に陥っているのが実状です。

球団は年間収益から選手の年俸を支払うので、球団経営が悪化すれば選手の年俸にも影響が出ることになります。

年俸はなぜ「推定」なのか?

ところで、毎年プロ野球のオフシーズンに行われる契約更改ですが、その際に「推定年俸」という表現がされます。

いったい誰がどう「推定」しているのでしょうか。

大手スポーツ新聞の記者によると、
「選手の年俸は球団から公表されません。ですから、各メディアが『推定』しているのです。推定方法は選手の成績・経験、球団の成績・財政状況を基準に大体の当たりをつけて、記者会見で本人に取材するという地道な作業を行います。たとえばチーム成績も良く、15勝あげた投手は2.5~3倍など長年の経験と慣例で相場がある程度できているのです。」
ということだそうです。

このような推定方法ですが、各メディアがそれぞれ独自に推定していて、報じる年俸に差は生じないのでしょうか。

同記者が、
「メディアによって金額のズレはほとんどありません。しかし金額を公言する人は稀なので、たいていは選手の様子で判断します。『大台乗りましたか?』『何本ですか?』などと聞いて少しニヤけたとか。まあ、態度やしぐさが重要ですね。選手もマスコミとのつき合いがあるので、それ相応の態度で表してくれるのです。」
と説明してくれました。

選手も人間なので、予想以上に低い場合にはどこか不機嫌になると言います。

以前は、球団旗にバッグを投げつけた選手もいたと聞きます。

記者が選手に聞き出すというよりも、洞察力を働かせて「推定」するようです。

そしてさらに気になるのは、その「推定年俸」の正確性です。

この点について同記者は、
「自分の経験上、実際の金額とのズレは5%程度ですね。親交の深い選手は後でこっそり教えてくれたりもしますから。ついでに他の選手のも・・・」
と述べています。

ただ例外的に、例えば前年に比べて著しく活躍した若手選手などは先輩の顔を立てないといけないので、本人や球団から「ン千万って書いてくれ」と頼まれたり、選手自身がほのめかす金額を調整したりしていることもあると言います。

年俸の決め方

では、選手の年俸はどのように決められているのでしょうか。

一般的には次のような流れになります。

まず、球団も一般の会社と同じように来年度の「予算」を立てます。

そしてその予算総額の中から、「選手にいくら使うか」の枠を決めます。

そこからどの選手にいくら払うのか「分配」していくことになります。

ここで注意したいのは、契約交渉の場で選手が提示された額に納得しない場合にどうするかという問題です。

その選手と契約更改をしたい場合、「1,000万円」を上乗せすれば納得してくれそうでも予算の総額は変わりません。

そうなれば、他の選手の年俸を「1,000万円」削らざるを得ないという事態になります。

つまり、1,000万円年俸高くなった選手の代わりに1,000万円削られる選手が出てくるということになります。

従って、このような状態を想定してある程度の予備的な年俸を準備しておく必要があります。

年俸の傾向

昨年のプロ野球年俸調査によると、全体の平均は3,678万円で3年連続の減少となりました。

なお、この調査結果は日本プロ野球選手会によるものですから外国人選手は調査の対象になっていません。
 
まず3年連続で平均が下がった理由として、高い年俸の選手がアメリカ大リーグへ移籍していることが大きいと思います。

この5年間で移籍した主な選手は次の通りです。

ダルビッシュ 有 (5億円)
田中 将大 (4億円)
藤川 球児 (4億円)
和田 毅  (3億3,000万円)
青木 宣親 (3億3,000万円)
岩隈 久志 (3億円)
中島 裕之 (2億8,000万円)
川崎 宗則 (2億4,000万円)

※カッコ内の金額は、日本最終年度の推定年俸です。

彼らのような、平均年俸10倍程を稼ぐ高額選手が大リーグに移籍することは、日本の平均年俸を下げる要因になります。

もし上に挙げた選手たちが日本のプロ野球に残っていたら、彼らの年俸はいくらになっていたでしょうか。

そうなった場合、平均金額をだいぶ押し上げる結果となっていたでしょう。

従って、平均年俸が3年続けて下がっている主な理由としては、各球団の査定が厳しくなって年俸の上昇が抑え気味になっているのではなく、高い年俸の選手が大リーグへ移籍することが要因のようです。

プロ野球の平均年俸について選手会が発表している推移を見ていくと、1980年(602万円)から2004年(3,805万円)まではずっと上がり続けており、その後はほぼ横ばいの状態です。

つまりプロ野球の年俸は、ここ10年ほど高い水準を維持しているのです。

選手年俸の上昇が球界の収入増加の結果であれば何も問題はありません。

確かに、2005年の総観客数は1,992万4,613人、その後の5年間は2,200万人前後で推移していて、入場者数は増加しています。

これは広島が新球場になって観客数が増えたこと、日本ハムとロッテが地域密着で動員力を上げたことなどが影響しています。

また2007年から両リーグで始まったクライマックスシリーズは、新たな収入源にもなっています。

しかしその一方で、セ・リーグの大きな収入源だった巨人戦のテレビ放映権料2000年当時より下がっています。

2000年、巨人戦は年間135試合でほぼ全試合が中継されていました。

この時の年間平均視聴率が18.5%でした。

しかし2006年にはこれが9.6%まで低下しています。

それ以後は中継試合数が減少し、近年では地上波での中継は月に数試合で衛星放送での中継が中心になっています。

この収入はセ・リーグ6球団で大きく減っているはずです。

もちろん、各球団の収入増と収入減、どちらが多いかはそれぞれですが、球界全体で言えば2000年当時より11%も高い年俸水準を維持していけるほどの収入増はないと言えます。

日本社会全体を見れば、消費者物価指数(生鮮食品を除く)がマイナスに転じた1998年頃から、民間の平均年収は2009年までほとんど下がり続けていました。

1998年には419万円だったのが、2009年には350万円で、その後はほぼ横ばいが続いています。

プロ野球年俸の推移とは、逆の動きです。

イチローがオリックスで活躍していた1995年当時、プロ野球の平均年俸は民間平均年収の6.6倍でした。

しかし2004年には10倍を超えています。

プロ野球がこの年俸水準を維持していくには、日本社会の経済状況とは関係なく好況を創造していく必要があります。

それはなかなか容易なことではないようです。

プロ野球選手の年俸は球団の予算枠で決まる

毎年シーズンオフになると選手の契約更改や年俸が話題になりますが、年俸は球団の予算で決められており、その枠内で球団と選手が交渉して決定されます。

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