原油安は当面の消費者の生活にメリットがあるって本当?

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原油はなぜ安くなっているのか

最近、原油価格が安くなっています。

これは、原油の生産国が減産を見送ったのがその原因だとする見方が一般的です。

今後の原油価格は一体どうなるのでしょうか。


原油価格の法則

まず原油価格はどのように決まるのかという「法則」ですが、そもそも世界の原油市場は北米、欧州、アジアの3つに分かれています。

ニューヨーク商品取引所(NYMEX)で取引される、アメリカ産のウエスト・テキサス・インターメディエイト(WTI)の相場が上がると、連動して世界の原油価格も上がるとされてきました。

2010年夏からはロンドン市場のインターコンチネンタル取引所(ICE)で取引されているブレント原油が、世界の原油価格を決める一大指標価格となっています。

アジアではシンガポールの取引が中心で、ここで取引されているドバイ原油がアジア原油価格の指標です。

原油市場はグローバル化しているので、世界の3大市場=WTI、ブレント、ドバイ原油はそれぞれ関連づけて取引されているのが現実です。

原油を買って石油製品に精製するのは、最終的には製油所を持っている石油会社です。

日本では中東産油国と長期契約(1年更新)ですから、毎月油種ごとの一定契約数量を産油国から引き取ります。

価格はドバイ原油を基準としたフォーミュラが油種ごとに産油国からの通知ベースで決められています。

例えば、2012年の日本の原油輸入は、中東原油が83%、東南アジア原油が7%、その他が10%で、ドバイ原油の価格が世界市場で上昇すれば日本が購入する原油も高くなります。

世界市場の価格は先物市場で投資家が将来、需給に対してどう考えるかその思惑で決められているといっていいでしょう。

「近い将来原油が逼迫する」と投資家が思えば買いが増えて価格は上がるし、需給が緩和すると予想すれば売りが増えて価格は低下します。

原油価格と日本市場

原油価格には、先物価格と現物の取引におけるスポット価格があり、「ニューヨーク原油先物」「ブレント原油先物」「ドバイ原油・オマーン原油のスポット価格」が三大指標となっていることは前述のとおりです。

なおスポット価格とは、契約の度に当事者間で決定される価格で実勢価格に近いものです。

日本への輸入では8割が期間を定めて契約するターム契約ですが、現在ではターム契約の価格もスポット価格に連動するように設定されています。

原油は天然資源であるので、その質により価格は異なります。

ガソリンや灯油が多く含まれる軽質油で、硫黄分が少ないWTIは高値で取引され、重質で硫黄が多いドバイ原油はWTIより若干安くなる傾向があります。

日本国内における原油価格は、為替相場やタンカーによる輸送コストの影響も受けます。

原油国際価格はFOB(Free On Board=タンカーへの積込時)の価格を指しますが、日本国内での原油価格は運賃や保険料を含んだCIF (Cost, Insurance and Freight) で表記されます。

原油価格は市場経済により需要と供給のバランスで決まるとされ、需要面では世界経済の景気動向やガソリン・プラスチックなど様々な石油製品の需要動向が影響し、供給面では産油国での供給動向(戦争・内戦による減産、タンカー襲撃、新しい油田の開発による増産)が影響します。

また、投機的資金によっても上下します。

急激な原油価格の高騰に伴う消費国での経済混乱はオイルショックと呼ばれますが、産油国では原油価格上昇により経済が好調となります。

原油価格とガソリン価格

ガソリン価格は、大まかにガソリン本体の『原材料』、ガソリンとして使えるようにする「精油コスト」、運送費や各業者の利益である「流通コスト」、そして、「税金」で決まります。

このように一見簡単そうに見えますが、実はかなり複雑で石油業界の関係者でも詳細は分からないそうです。

まず、ガソリンの本体である原材料(輸入原油価格)は、産油国からタンカーに乗せられた時の時価(ドル建て、FOB価格といわれる)に、輸送運賃、保険料、帯船料が加算されます。

この価格を『輸入CIF価格』といいます。

そして、輸入CIF価格にその時の為替レートがかけられ、1バレルあたりの日本円での価格が決まります。

1バレルとは、石油製品を測ると気に使われる単位のことを言います。
1バレル=158.987294928リットルです。

さらに、原油のままではガソリンとして使えないので、ガソリンに精油するコストもかかります。

この精油コストを足したのが「製油所出荷価格」です。

これに東京工業品取引価格や石油元売り会社のブランド料、油槽所(供給拠点)までの運送費、油槽所の費用、ガソリンスタンドまでの配送料もかかります。

そして税金もかかってきます。
輸入するときにかかる「石油石炭税」、ガソリンにかけられる「ガソリン税・軽油引取税」、そして「消費税」です。

最後に、ガソリンスタンドの思惑や市場動向も関係してきます。

例えば、薄利多売で売ろうとするガソリンスタンドは、その周辺もそれにあわせて周囲のガソリンスタンドも安い価格を設定します。

逆に、高い値段を設定して利益を大きく取ろうとするガソリンスタンドは、周辺のガソリンスタンドとの安値競争に走らず、高めの価格を設定します。

このように、地域の動向もガソリン価格に影響してくるのです。

各要素が密接に絡み合ってガソリン価格が決まっているというわけです。

ガソリン価格に大きく影響しているのが税金です。

ガソリン税は一定の価格となっている(2015年4月現在では53.8円/L)ので、ガソリン価格が安くなるほどガソリン価格に占める税金の割合は高くなるのです。

場合によっては、ガソリン価格の50%以上が税金なんてこともあります。

また、ガソリンには消費税がかかりますが、よく見るとガソリン税にも消費税がかかっています。

従って「二重課税ではないか」とよく問題になっています。

原油価格安の影響

原油価格は2014年秋から下落が始まり、2015年春には落ち着きました。

しかし、中国経済が減速して需要が減るとの見方から再び値下がりするようになります。

そこに追い打ちをかけたのが、2015年12月4日の石油輸出国機構(OPEC)の総会でした。
この総会では減産の見送り、日量3千万バレルとしてきた生産目標を棚上げにしました。

サウジアラビアやイラクが生産を増やし、2016年の経済制裁解除を見込むイランも増産を計画しています。

市場では、OPECの生産量はしばらく高水準が続くとの見方が大勢です。

アメリカの利上げ観測の高まりも原油価格の下落につながっています。

アメリカの利上げは新興国の経済に悪い影響を及ぼしかねないとの見方が多く、そうなると原油の需要も減って供給がさらにだぶつくとみられています。

利上げを見越して、原油市場への投資資金をより高い利回りが期待できるドル資産に移す動きも出てきました。

アメリカの大手証券会社では、
「値上がりに転じるきっかけがない。WTI原油は1バレル20ドル台に値下がりすることもありうる」
と見ています。

消費者にとって、原油安はガソリン代や電気代などでメリットがみられます。

日本エネルギー経済研究所石油情報センターによると、2015年12月初旬時点でのレギュラーガソリン1リットルあたりの全国平均価格は127.8円で、約6年ぶりの安値水準にあります。
灯油も73.9円で、22周連続で値下がりしました。

また、電気料金も抑えられています。

火力発電に使う液化天然ガス(LNG)や石油の価格が、原油価格に連動して決まるからです。

東京電力の場合、標準家庭の電気料金は12月が7,518円で昨年6月のピークより1,000円以上安くなっています。

同じくLNG火力発電の比率が高い中部電力も、昨年6月よりも850円ほど安くなっています。

今後さらに値下がりしそうです。

国際線の航空運賃に上乗せする「燃油サーチャージ」では、日本航空と全日本空輸が12月発券分から33~40%引き下げました。

北米・欧州便は片道1万500円が7,000円に、ハワイ便は6,000円が4,000円になりました。

サーチャージはジェット燃料の価格をもとに2ヶ月ごとに見直し、1バレル6,000円を下回るとゼロになります。

足元では6,000円前後になっていて、このまま原油安が進むか為替相場で円高が進めば、さらに値下がりしたりなくなったりする可能性もあります。

みずほ総合研究所の井上淳・主任エコノミストは、
「円安で、輸入品を中心に物価が上がる中、原油安のメリットは大きい。エネルギーコストが下がることは国全体にもプラスだ」
と言っています。

原油価格の下落は、当面の国民生活にはメリットがある

今回の原油安は、中国経済の減速と産油国が減産を見送ったことが原因であり、当面の消費者の生活にはメリットがあります。

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