子育て給付金はなぜ廃止されたのか?

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理想的な子育て政策とは?

政府・与党は、2015年12月16日に「子育て世帯臨時特例給付金」(以下「子育て給付金」と言う。)を2016年度から廃止する方針を決めました。

「少子高齢化」は日本の長年の課題ですが、子育てに関する給付金を廃止することは矛盾しているように感じます。

なぜ廃止になったのでしょうか。

また理想的な子育てとは何でしょうか。


子育て給付金とは何か

子育て給付金とは、子育て世帯に対して2014年に臨時で給付された厚生労働省による支援金のことです。

正式名称は「子育て世帯臨時特例給付金」と言い、2014年4月に行われた5%から8%への消費税引き上げに伴い新設されたもので、2014年半ば頃から各自治体ごとに受給の申請受付が始まりました。

中学3年生(15歳)までの子供がいる住民税非課税世帯の児童手当の受給者を対象とし、子供1人につき1万円(年金や児童扶養手当特別障害者手当等の受給者には1万5,000円)が支給されました。

2014年12月14日に行われた衆議院議員選挙の前に消費税8%から10%への引き上げ延期が決定し、その影響により子育て給付金の財源探しが難航しましたが、同年12月17日に、政府は同給付金を2015年度は支給しないとの方針を固めました。

子育て給付金と他の給付金

給付金には、所得の低い人への措置として行われる「臨時福祉給付金」がありますが、低所得者対策として増税が決まった段階で盛り込まれていたこともあり、ある程度国民には認知されています。

しかし、それに比べて「子育て給付金」が認知されていないのには理由があります。

「臨時福祉給付金」は最初から予算に盛り込まれていたので、担当省庁も準備ができていました。
しかし子育てに関しては、消費税が5%から8%に改定されることが決定した時点で急に出てきた話だったので、担当省の担当部局もあわてて設置されたような状態です。

従って、今後消費税が10%になった時に同様の対応があるかどうかは未定です。

また、「臨時福祉給付金」と「子育て給付金」を両方受け取ることはできないようになっています。

「臨時福祉給付金」は2014度の住民税の課税がなかった人に対して払われ、「子育て給付金」は2014年1月1日時点での児童手当の受給者に支払われます。

住民税が払えない子育て世帯であっても両方を受け取ることはできません。
この場合は「臨時福祉給付金」が支払われることになります。

子育て給付金廃止の背景

政府・与党は12月16日、「子育て給付金」を2016年度から廃止する方針を決めました。

公明党の肝いり事業で、2015年度は子ども1人当たり3千円が支給されましたが、同党の要求通りに消費税の軽減税率の導入が決まったのを受けて自民党が廃止を求めました。

「子育て給付金」は、2014年4月に消費税率を8%に引き上げたのに伴い公明党が「子育て世帯への支援も必要」と主張して支給が決まりました。

高所得世帯を除く中学生までの子ども約1,600万人を対象に、2014年度は1人あたり1万円が配られ、2015年度は金額を減らして支給されました。

2016年度分の扱いについて、自民党の稲田朋美、公明党の石田祝稔両政調会長が協議した結果、石田氏は継続を求めましたが、稲田氏は「子育て支援の政策は別にやっている」と主張しました。

公明が低所得者対策と位置づける軽減税率で自民が譲歩したこともあり、稲田氏は「軽減税率が決まったから」として、廃止を求めて譲らず、結局押し切る形になりました。

12月16日の会見で、稲田氏は廃止の理由について「軽減税率の安定財源を見つけるため、歳入・歳出改革を進めることで合意している」などと説明しました。

公明党関係者は、「軽減税率のしっぺ返しだ」との本音をこぼしました。

海外の子育て政策

では、高負担・高福祉の国家と言われているフィンランドの子育てはどのような状況でしょうか。

フィンランドの2012年の合計特殊出生率は1.80を記録し、日本の1.41を大きく上回っています。

1980年代以降減少傾向にある日本とは反対に、フィンランドにおいてはわずかずつですが上昇傾向にあります。

フィンランドでは、どのようにして「子どもを産み、育てやすい環境」を作り出しているのでしょうか。

フィンランドの社会保険庁事務所(以下、「Kela」と言う)が運用するホームページでは、「Benefits for families with children」というタイトルのもと、10を超える手当や各種の休暇制度などが紹介されていて、必要な情報を探すことができます。

利用できる制度については、雇用契約法に基づく家族休暇の取得、子の介護に関する休暇、入学1年目・2年目の親を対象とした手当、妊娠交付金(140ユーロ)または育児パッケー ジの取得、育児手当、特別育児手当(子どもが3か月になるまで)、父親手当 、子ども手当(子どもの誕生後、17歳になるまで)、家庭での育児手当(3歳未満、保育サービスを 受けていない世帯を対象)などで、実に厚遇されていることがわかります。

また、ヘルスケアサービスの提供は、住民に近い 地方自治体の義務と定められ、出産する親、子育て をする親をサポートする体制が確立されていることも、出産に対する前向きな感情を育むことにつながっています。

また、フィンランドにおいて切れ目のない家族支援を行っているのが「ネウボラ」です。

ネウボラは、フィンランドの自治体が提供している子育て支援施設とそのサービスを指し、「クリニック」と英訳されることもあります。

日本では妊娠が分かったら病院で受診することになりますが、フィンランドでは地方自治体が提供するネウボラに向かうことになります。

ネウボラには、特別な教育を受けた保健師、助産師が在籍し、親の妊娠から子どもが6歳になるまでの間、幅広い育児支援サービスを提供します。

妊娠した親は、出産こそ病院で行うものの、その他の育児に関する相談や検診はネウボラのサービスを利用することになります。

ネウボラの特徴の一つに、サービスが無料であることが挙げられます。

ネウボラによるサービスは、1920代、新生児の死亡率が高かったころ、母子の命の安全確保、乳幼児の健康を守るために小児科医 や看護師、助産師らの有志によって無料で始められました。1944年に国によって制度化され、全国で800か所を超えるネウボラがある現在においても、所得の多寡にかかわりなくサービスは無料です。

もう一つの特徴は、きめ細かなサービスです。

ネウボラで受診した親に対し、原則一人のネウボラ保健師が担当することになります。
親への支援を同じ施設の同じ担当者が担うことによって、利用者にとってはたらい回しされることなく同じ説明を何度も行わなければならないという煩わしさも回避できます。

利用者は、妊娠期間中の検診、保健師や助産師などのプロによるアドバイス、出産後の定期的な面談などを受けることになりますが、プライバシーへの配慮のもと面談は個室で行われます。

こうした丁寧な面談を積み重ね、利用者との信頼関係を構築することができます。

フランスの合計特殊出生率の高さは先進国の中で目を引きます。

フランスが2.0である一方、イギリス1.9、中国1.6、ロシア1.5、日本、ドイツ、イタリア、韓国は1.4です。

人口減少対策が喫緊の課題である日本からすれば、フランスの諸制度・政策に関心が向くところですが、まずフランスの特長としては、「フランスには、子ど もを安心して産み育てられる『環境』がある」ということと、逆に、いくつか日本においてはフランスの状況について「誤解」が生じているのではないかということです。

「環境」というのは、例えば、乳幼児期でいえば保育所はもとより、保育ママ、ベビーシッターの充実(これらに対する支援の充実)、ほぼ全入でほぼ無料の幼稚園、基本的に高等教育まで学費が無料、学用品のための手当てもあり、子どものいる家庭への家族手当もあります。

またフランスの特徴的な取り組みに「保育ママ」という制度があります。

「保育ママ」というのは、フランスのデパルトマン(=県。海外県も含めて100ある)が認定したベビーシッターのことで、自宅に子どもを最大4人預かれるというものです。

保育ママになるために専門的な資格は必要ありません。

ただ、子どもを受け入れる前に60時間、子どもを初めて受け入れてから2年以内に60時間、計120時間の研修を受けることが義務付けられています。

保護者は保育ママと子どもの保育について直接契約を交わす場合も、定期的なメディカルチェック、自宅訪問などは地元のコミューン(フランスの基 礎自治体=市町村)によって管理されています。

保護者と直接雇用契約を結ぶ保育ママと、市町村やNPO法人に雇用される保育ママとがいます。

また「保育ママセンター」という施設が設置されていて、 そこでは常駐の保育士が保育ママに対する研修を実施したり、保育ママ・保護者に対して子どもの睡眠・食事・遊びにかかわる講習会を開催したり、といった行事が定期的に開催されている。

また、保護者との問題の解決など保育ママに対する相談・指導や、保育ママになりたい女性・保育ママに預けたい保護者に対する相談業務も行っています。

子どもの一時預かりも実施しており、さながら「子どもよろず相談所」の様相を呈しています。

子育て政策の課題

2012年の資料ですが、就学前人口(0~5歳)のうち保育所を利用している子どもの割合(保育所利用率)は34.2%です。

この数字は毎年伸び続け、最終的には40%以上にまでなるのではないかと考えられます。

都市部では保育園が足りない一方、地方では少子化以上に「過疎化」が進み、自治体で1カ所の保育施設しかないといったところも増えてきています。

待機児童解消は重要ですが、本格的な少子化が進む地域のこともきちんと考えていかなければなりません。

もちろん、家庭で子どもを育てている世帯に対する支援も必要になっています。

この支援は、金銭的な手当てとフランスのように子どもを国・地域で育てていくと言う考えです。

少子化の時代に、日本の子育て対策として規制緩和、幼保一体化、子ども・子育て支援法などによる保育新制等々、さまざまな政策が考えられます。

子育ては物心両面での支援が必要

子育て先進国を参考にして、日本も手当などの金銭的な支援と、女性が安心して子どもを産んで育てられる環境を作る必要があります。

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