思いやり予算はなぜ増額されたのか?

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思いやり予算は増額する必要があるのか?

先日、日本とアメリカの両政府から、在日米軍駐留経費(以下「思いやり予算」と言う。)の今後5年間を現行水準に比べ実質増とすることで合意した、との報道がありました。

ご存知のように、日本の借金は現在1,000兆円を超えています。

そのような財務状態で、思いやり予算を増額する必要があるのでしょうか。


思いやり予算とは

思いやり予算とは、毎年度防衛省の予算に計上されている「在日米軍駐留経費負担」の一般的な言い方です。

この予算は、在日米軍の駐留経費における日本側の負担のうち、日米地位協定及び在日米軍駐留経費負担特別協定を根拠に支出されています。

但し、ニュースや討論番組等でしばしば「日本側負担駐留経費=思いやり予算」のように扱われることがありますが、思いやり予算は在日米軍駐留経費の日本側負担のうちの全部ではなく一部を示すものであり、この言葉の意味としては間違った使い方です。

思いやり予算の歴史

この思いやり予算の始まりは、1978年6月に当時の防衛庁長官・金丸信氏が、在日米軍基地で働く日本人従業員の給与の一部(62億円)を日本側が負担すると決めたことです。

日米地位協定の枠を超えている、しかも法的根拠のない負担に対して、円高ドル安などによってアメリカの負担増を考慮した金丸氏が、「思いやりの立場で対処すべき」などと答弁したことから、思いやり予算と呼ばれるようになりました。

当初は、米軍基地の従業員の労務費などを肩代わりすることを始まりましたが、その後は光熱水費や住宅などの提供施設整備費も加わりました。

ピークの1999年度には2,756億円に膨らみましたが、2000年度から減少傾向となっています。

英語表記でも「Omoiyari yosan」で通用していますが、公式表記には「Host Nation Support」(駐留国受け入れ支援、接受国支援、HNS)が当てられており、アメリカ政府の高官などは「負担」をイメージさせる「思いやり予算」という呼び名を好まず、日本の戦略的「貢献」という側面を強調する発言をしばしば行っています。

2011年1月21日、当時の外務大臣である前原誠司氏は
「米軍が(日本に)駐留しある程度必要な経費を日本が負担することは、日本の安全保障、外交における戦略的な特別協定であるという観点から、もはや『思いやり予算』という言葉は適当ではないというのが私(大臣)の思い」
と述べ、今後は「ホスト・ネーション・サポート」を使用する考えを示しマスコミ各社にも協力を呼び掛けました。

そして「思いやり予算」以外にも、日本が拠出している在日米軍関連経費は存在します。

防衛省公式サイトの「在日米軍関係経費(平成26年度予算)」によると、平成26年度の在日米軍関連経費の内訳は、「思いやり予算」が1,848億円ですが、それとは別に「基地周辺対策費・施設の借料等(1,808億円)」、「沖縄に関する特別行動委員会《SACO》関係費(120億円)」、「米軍再編関係費(890億円)」、「提供普通財産上試算《土地の賃料》( 1,660億円)」、「基地交付金(384億円)」があります。

2010年11月、「しんぶん赤旗」編集局が入手した「在沖縄米軍電話帳」で、キャンプ瑞慶覧の司令部内に「専門」、「担当士官」、「管理士官」がいる「思いやり予算」担当部署(HNS)が設置されている事が判明しました。

1990年代から娯楽・保養施設、果ては日本人従業員に貸与される制服や備品までも思いやり予算で処理されている事が指摘され、近年にはさらなる「不適切な支出」が明らかとなり、見直すべきとの声が多く上がってきました。

2008年度の予算について、野党であった民主党は「レジャー施設職員の人件費まで日本が負担するのはおかしい」などとして反対しました。

もっとも予算総額は1999年の2,756億円が頂点となったあとは総額の減少が続いており、2010年には1,881億円となっていました。

しかし同年、民主党菅直人政権は以後5年に渡って前年度水準を維持することで米両政府と合意しました。

上記の合意を受け2011年1月21日午前に、前原誠司外務大臣とジョン・ルース駐日アメリカ大使は外務省で会い、2011年度以降の「在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)に関する特別協定」に署名しました。

東日本大震災の後の「トモダチ作戦」による親米感情の高まりの影響もあり、2011年3月31日には、民主、自民などの賛成多数で、「在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)に関する特別協定」が国会で可決され、有効期限は従来の3年から5年に延長され、今後5年間、日本は米軍に現行水準(2010年度予算で1,881億円)を支払い続けることが決定しました。

思いやり予算の現状

2015年12月16日に日米両政府は、思いやり予算の今後5年間の水準を現行水準に比べて実質増とすることで合意しました。

2016~2020年度の総額は、9,465億円とのことです。

この額は2015年度までの5年間を133億円上回る数字です。

日本は安全保障関連法成立による自衛隊の任務拡大などを理由に減額を求めましたが、結局アメリカに譲歩した形です。

実質増となるのは、日本が肩代わりする人件費が全体で553人分増えるためです。

米軍の戦闘機などの整備に当たる労働者や事務職員の負担人数の上限を1万8,217人から1万9,285人に増やす予定です。

一方、米軍基地のレストランや売店など福利厚生施設の従業員の負担上限を4,408人から3,893人に減らす予定です。

米軍施設の光熱水費の日本負担割合は72%から61%に引き下げ、各年度の負担上限を249億円としています。

防衛省は、「米軍の機能発揮を直接支える労働者への負担を増やし、福利厚生施設は減らし、メリハリをつけた」と言っています。

日本は当初、年間数百億円の減額を要求しました。

財政難に加え、安保法成立により米軍への後方支援など自衛隊の任務が拡大することも理由としました。

一方アメリカは、アジアを重視する再均衡(リバランス)政策で最新鋭で追加配備することなどへの見返りとして増額を要求しましたが、最終的には日本が譲歩しました。

思いやり予算の問題点

思いやり予算の問題点は、国民が、思いやり予算が自分たちの税金であると認識していない点です。

つまり国民は納税者の立場として、果たしてこれだけの額の支出が必要なのか、それを支持できるのか、ということを考えるべきだと言うことです。

しかし、自分には関係ないというのが一般的な感覚と言えるかもしれませんが、税を負担している国民の意識が非常に重要ですから、米軍の思いやり予算の支出項目に無関心ではいけません。

また、日本の会計検査院が精査して具体的な支出を国民の前に明らかにし、その結果を受けて日本政府は「このような問題があったので、次年度からは予算を削減します」というような対応を行う方法も考えられます。

実際には支出の内容が不透明であり、日本政府の説明責任が果たされているとは言い難い状態です。
思いやり予算は国民の税金ですから、「財政民主主義」を確立していくことが急務です。

また、安全保障関連法が成立したことで今後ますます沖縄の負担が増大していくことが予想できます。

今回の安全保障関連法の根幹となっている「集団的自衛権」は、米軍との協力が大前提です。

つまり、海外に展開する場合に米軍基地と自衛隊との活動が問題となってきて、例えば米軍基地を自衛隊が使用する際には、特に沖縄の基地を使用する頻度が増大するでしょう。

元々沖縄は、米軍基地の問題が沖縄県民の生活に大きく影響しているというのが大きな課題でした。

しかし今回の関連法成立により、沖縄の負担を軽減したり米軍が本土へ移動したりということはなく、米軍はそのままで自衛隊の方が沖縄の米軍基地へ来るという構図になることが考えられます。

既に自衛隊の基地を宮古島、石垣島、与那国島に建設するという動きが出てきています。

しかし沖縄県民としては、沖縄戦の経験から、自衛隊と米軍とが生活の中に入ってくることに対する住民の抵抗感は大きいと予想できます。

一方で本土の状態は従来とあまり変化ないと思われます。

それは日米共同訓練を考えると、本土の演習場を含む自衛隊基地は広大であるため、その基地の存在そのものは市民生活にさほど影響を与えないと予想できるからです。

沖縄では今回の安全保障関連法が成立する前から、既にこの法律を先取りしたような日米共同の軍事訓練による事故が頻発しています。

そしてこの法律の成立によって今後は同様の事故が増えることが考えられ、ますます沖縄の負担が大きくなります。

今回、思いやり予算の増額が実質的に決定しましたが、今後予想される沖縄の負担と予算の増額は決して無関係ではないということです。

思いやり予算の増額は安保関連法と連動していた

今回日米両政府が、思いやり予算の増額を決めたのは安保関連法が成立したことで、今後増加が予想される日米軍事演習への対応だと考えられます。

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