お金と期待その分かち難い関係―期待以上を提供しよう

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お金と「期待」の関係を正しく知ることがお金を呼び寄せる。

優れた事業家によって生み出されたビジネスは、自ら活動する生命体のように勝手に成長していくように見えます。

しかし当然のことながら、ビジネスそれ自身が勝手に意思決定などの活動を行っているわけではありません。

その原動力となっているのは、優れたビジネスシステムと何よりもそれを支える顧客の「期待」に他なりません。

人々がこの商品・サービスはすばらしいと考え、次の生産物にも「期待」することによってビジネスは拡大していきます。

つまり人々が「期待」するところに「お金」は集まるといえるのです。

そこで今回は、「期待」と「お金」の関係について掘り下げたいと思います。

  

「期待」以上を提供するからお金は集まる

 
皆さんは「夢をかなえるゾウ」という本を知っているでしょうか?

成功を望みながらもこれといった行動ができず悶々としている主人公の下に「ガネーシャ」というゾウの姿をした神様が現れ、成功して幸せな人生を送るための秘訣を説いていくというお話の小説です。

特に神様である筈のガネーシャの突飛なキャラ設定や、主人公との面白いやりとりが人気を呼び、シリーズ類型200万部以上のヒット作品となっています。
 
そんな笑いあり涙ありの本のなかで、ガネーシャが主人公に対して「期待」をよい意味で裏切ることの重要さを説く件(くだり)があります。
 
ガネーシャ曰く「お客さんの一番喜ぶんは『期待以上だった時』やねん。

お客さんいうのは『だいたいこれくらいのことをしてくれるんやろな』って無意識のうちに予想してるもんやねん。

で、その予想を超えたるねん。ええ意味で裏切んねん。

サプライズすんねん。

そうしたらそのお客さん喜んでまた来てくれるんやで」とのことです。
 
これはまさに商売の真髄といっても過言ではない言葉だと思います。

多くの成功者もこのことについて言及しており、「期待」以上を提供することがいかに成功への道であるかを証言しています。
 
しかし、この「期待以上を提供する」という行為は自分で商売をやってみると意外と難しいことがわかります。

そして、一度期待以上を提供することに成功してお客さんに喜ばれたとしても、継続的に期待以上を提供することは大変なことです。

途中で息切れしてしまったり、なかには挫折してしまう経営者も多いことでしょう。

だからこそ継続的に価値を提供する仕組みづくりが必要となるわけですが、特に会社を経営したりビジネスをするわけでなくても「お金」について興味のある人なら「期待」という言葉や「期待をする」ということについて正しい知識をもつことはとても重要なことです。

なぜならば、ひとことに「期待」といってもその度合いや使い方によって、実は薬にも毒にもなる場合があるからです。

私達が豊かで幸せな生活を送るために、「期待」と「お金」の関係について正しい洞察を得る必要があるのです。
 

経済の根幹は人々の「期待」にある? 

 
「期待」には様々なものがあります。私達が日常的に使うこともよくありますし、学問の世界やビジネスでもよく使われます。

たとえば統計学に「期待値」という考え方がありますし、人々が抱く「期待」を数値化して商品化に生かすといったマーケティングの考え方もあります。

そして「お金」について知るために非常に重要な学問である経済学にも「期待」という考え方が出てくるのです。

この代表的なものにいわゆる「リフレーション政策(リフレ政策)」というものがあります。
 
近年、アベノミクスの大規模金融緩和などの対デフレ政策に大きな影響を与えたのがこの政策であるといえます。

経済に詳しい人は聞いたことがあるのではないでしょうか。
 
この政策の勘所(かんドコロ)というべきものは、実はお金を刷るということではありません。当然、手段としては「金融緩和」ということで日本銀行がお金を刷ることを推奨するわけなのですが、本質は少し違います。

重要なのは、これからデフレを脱却して景気が回復するのだという「期待」を形成するというところなのです。

その手段としての金融緩和という色彩が強いのです。
 
逆にこれまで日本に蔓延していたのが「デフレ期待」とでもいうべきものでした。

ここでいう「期待」というのは無論、肯定的な意味ではありません。

これからもデフレが続いて景気が益々低迷していくという予測が、さらに実質金利などに影響し、益々消費や投資を抑制される方向に働いてきたのです。

そして消費や投資が抑制された結果、企業の売り上げが低迷し、我々の所得も低下します。所得が低下するものだがら、人々は益々消費行動を抑え、その結果さらに企業の売り上げが低迷し・・・といういわゆる「デフレスパイラル」が続いていってしまいます。
 
そのような状況を打破するため、人々のデフレ期待をよい意味で「裏切る」ことによって人々の心理に逆方向の「期待」を形成しようというのがこの政策の本質です。

そのために日本銀行が大規模金融緩和という思い切った政策が必要であると訴えたというわけです。

それによってデフレ期待とは逆の「インフレ期待」が高まっていきます。

その「期待」が金融市場や資産市場に影響を与えます。為替は円安傾向となり、株高になっていきます。

その後徐々にこの効果は実体経済にも影響を及ぼし始め、景気の拡大を「期待」した企業は投資を拡大しはじめます。その結果、失業率は低下し、雇用が改善していきます。
 
こういったプラスの流れを支えているのは、人々の市場に対する「期待」なのです

お金を刷る」という行為も「増税」も所詮は「手段」でしかありませんが、私達の「期待」は市場全体を動かしてしまう力をもつということです。

 

高橋是清の使った不況乗り切りの「ウラ技」と人々の「期待」

 
他にも私達の抱く「期待」が大きな影響を与えたエピソードがあります。

それは私達も歴史の授業で馴染みのある、1929年から世界を襲った「世界恐慌」です。
 
実は世界恐慌から最も早く立ち直ったのは我が国でした。

1931年のことです。

その立役者ともいえるのが、当時大蔵大臣だった高橋是清でした。
 
彼は日露戦争の際に国債を売り払って資金調達をした人物であり、世界恐慌の影響を受けてデフレ状態にあった我が国を、金本位制を抜けたうえで大規模金融緩和と巧みな財政出動を行って、たった2年で我が国をデフレから脱却させた人物です。

彼は日本銀行に国債を買わせることで資金を捻出しました。

そして人々にデフレ脱却の「期待」を持たせることに成功したのです。

なぜか我が国の教科書にはアメリカがニューディール政策によって世界恐慌を乗り越えたという話しか載っていないのですが、実は世界で最も早くデフレ状態から抜け出したのは、高橋が大蔵大臣として活躍した我が国なのです。
 
敢えて極端な例を挙げれば、緩やかなインフレの状態(つまり経済が正常な状態)では、たとえ人々が怠慢に働いていたといしても緩やかに経済成長ができるという分析結果があります。それに対して、人々がいくら身を粉にして働いても経済成長できないというデフレ状態というのは、それほど異常な事態といえるのです。

 高橋はそのような状態を乗り切るために、なんと紙幣を表側だけ印刷させて裏側は白紙のまま銀行に置いておいたのです。

当然、そんな紙幣は市中に出回ったところで使えるわけがありません。

しかし彼はよく理解していました。「不況」というのは人々の「期待」が大きな要因となっており、この「期待」に裏打ちされた金融緩和(つまり市中にお金を回すということ)をすることがデフレ脱却の鍵であると。

事実、銀行に大量の紙幣が置いてあることは人々に安心感を与え、その結果景気回復の「期待」が醸成されていきました。別にその(実際は使用不可能な)紙幣の山が市場に出回ることがなくても、それによって生み出された人々の「期待」が景気回復の大きな要因となったのです。

無論、きちんと使用可能なお金が市場に供給されたのは言うまでもありませんが。
 
これも人々の「期待」が経済を正しい方向に動かした例です。
 

「期待」が裏目に出るとき

 
ただしこの「期待」という考え方も、場合によっては毒となる場合もあり、その典型例が「バブル」ということになります。
 
バブルというのは、市場の資産価格がその資産のファンダメンタルズを遥かに超えて値上がりしてしまった状態なわけですが、その背景には人々の客観的な根拠に基づかない、文字通り「泡」のような「期待」があるわけです。

当時は今のようにネットなどが全くなくて情報の伝達速度が今よりも遅かったわけですから、今はこのような事態が起こりにくいのは確かです。
 
しかしひとたびこのような状況になると、我々の心はどうしても隙を生み出してしまいます。事実、天井知らずに値上がりする株を見た当時の人々は、株の信用取引をさかんに行いました。そしてその多くが、根拠も無い噂程度の情報によってもたらされたものだったりしたのです。

しかし1989年の末に38000円以上の高値をつけた株価は、その後大暴落をはじめました。結果として、沢山の破産者を生み出し、数え切れないほどの自殺者が出てしまいました。人々の「期待」が完全に裏目に出たということです。

別な表現をするならば、初めはしっかりとした根拠をもとにした「期待」であったものが、徐々に根拠無き幻想へと変わってしまったのです。
 
ちなみにこのときのトラウマを引き摺るあまり、日本銀行や財務省はデフレ脱却の足を引っ張るよな政策に固執するようになるわけですが、要は人々の抱く「期待」が合理的なものか、ただの幻想であるか絶えず見極めることが重要であるということです。

「期待」はコントロールするもの。正しい「期待」を持たせることでお金が集まる

  人々の抱く「期待」がデフレ脱却の要因となったような正しい「期待」であるのか、あるいはバブル期のようなただの幻想であるのか。 判断の鍵はそこに人々の正しい判断に基づいた意思がはっきりしているかということです。 成功した起業家は魅力的な商品を顧客に与えることで、お客の正しい「期待」を醸成することができ、結果としてお金持ちになることができたのです。   私達は「期待」を正しくコントロールする必要があります。 それは能動的な場合でも受動的な場合でも変わりません。 もし判断を先延ばしにして惰性的に生きていると、正しい「期待」もただの「泡」となってしまうかもしれません。   ※参考文献 水野敬也(2012)『夢をかなえるゾウ』飛鳥新社

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