追加緩和は必要か?その仕組みと影響を見る

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金融緩和について基本から学びつつ、最近の経済ニュースを読む

今月19日付けの産経新聞の記事によると、黒田日銀総裁が追加緩和の可能性について示唆したことが話題になっているようです。
 
よく「金融緩和」や「量的緩和」などという用語を耳にしますが、経済に興味のない人は意外と正しい言葉の意味を知らなかったりするようです。

特に日銀が「金融緩和」をすることが私達の生活にどのように関わってくるのかという疑問をもつ人も多いとききます。
 
そこで今回は、「金融緩和」や「量的緩和」などの用語の意味をおさえつつ、今回の追加緩和の是非に関して考えてみたいと思います。

ECBの追加緩和騒動と我が国の追加緩和

 
昨年の12月初旬、ECB(欧州中央銀行)による政策理事会が開催されました。

多くの投資家は「大規模追加緩和」への期待を募らせていたのですが、結果は特に追加緩和について言及されることなく終了。

以前からECBのドラギ総裁が大規模緩和について匂わせていただけに、周囲は落胆の色を隠せないでいたようです。

しかしその後、追加緩和の可能性を示唆したことで再び市場は俄かに活気立ってきていますが、それも結局どうなるかわからない状況になっています。
 
これに関して、我が国でも追加緩和の機運が高まっているといいます。実際、黒田日銀総裁の最近の発言によって為替相場が相当の影響を受けている状態です。
 
今般の黒田日銀による金融政策には賛否両論あります。

日銀はよくやっているという人もいれば、間違った道を歩んでいると批判する人もいます。

確かに満点をつける人はそんなに多くはいないようで、その理由としては日銀が当初想定していたようなデフレ脱却への経路を順調に進んでいるとは言い難いことが理由であるように思います。そして現在、さらなる評価の分かれ目ともいえるのが今回の「追加緩和」でしょう。
 
ECBの例でもわかりますが、中央銀行の政策によって多くの人々の進退に関わるほどの影響が出るのです。そこには様々な利害関係者の思惑もありますし、一般国民も無関係ではいられません。
 
では現状において我が国に「追加緩和」は必要でしょうか? 

ここでは基本に立ち返って考えてみたいと思います。

そもそも金融緩和とは?

「金融緩和(量的緩和)」とは、日本銀行が通貨を発行して貨幣の供給量を増やすことをいいます。

日本銀行が「お金を刷る」と表現しますが、実際は輪転機をグルグルと回しているわけではなくて、ほとんどがコンピューター上の帳簿に数字が計上されていくことになります。
 
ここからの流れとしては、日本銀行が発行した通貨が民間銀行へと回り、最終的に個人や企業へと回っていくわけですが、要は銀行が誰かに「お金を貸す」ことでお金が市中に出回って行くということなのです。

逆に言えば、誰かが銀行から「借金」をすることでお金が広まって行くということになるわけです。

いわゆる銀行の「信用創造」によって貨幣が広く供給されていくのです。(※「信用創造」については別記事参照)
 
そして「金融緩和」というのは、主に「量的緩和」のことを指します。

「量的緩和」とは日本銀行が(民間銀行の保有する)国債を買い取ることで民間銀行に貨幣を流出させることを意味します。

「流出」とあえて表現したのは、通常の売買のように買い手である日本銀行が自ら所持しているお金を代金として支払うのではなく、お金を「発行」して支払うからです。

新しくお金を発行するわけですから、世の中に出回るお金の量が増えるということです。

つまり民間銀行が日銀から受け取ったお金を「貸し出す」ことで、経済を回していることになるのです。

これが経済の原動力となり、成長の源泉ともなります。

デフレ不況時には特に「量的緩和」が重要な対策となります。

 

量的緩和の理論的根拠

 
歴史的に有名な学者も「量的緩和」について言及しています。それはジョン・メイナード・ケインズです。経済に詳しくなくても彼の名前は聞いたことがある人の多いのではないでしょうか。
 
ケインズは不況からの救済策として「貨幣量を増やす」ことを挙げているのです。

彼の最も有名な著書である『雇用、利子、お金の一般理論』には『資本の限界効率の変化とは別に、唯一の救済はお金の量の増大か、あるいはお金の価値を増して同じ量のお金が果たせる金銭サービスが改善される場合だけです』とあります。
 
ここでいう「お金の量の増大」とは即ち「量的緩和」に他なりません。

そして「資本の限界効率」とは、この著書でケインズが導入した概念で、事業を行う者が資本資産の1単位を増やした場合に得られると予想される収益率のことです。
 
例えば10万円持っている人がいたとして、これを投資に回すと5000円の利潤が得られるならば、予想利潤率は5%となります。

3000円しか得られない場合は予想利潤率は3%ということです。

仮にこの場合の利子率が4%だとすると、5%のときは儲けが見込めるわけですが、3%では利子率以下で損をするので投資はすべきでないということになります。

つまり、投資を増加させた場合の利益率がα%で利子率がβ%であるとすると、常にαがβより大きくなるように投資家は投資をするわけです。

投資信託などプロが運用する場合も主にこの部分に注目して運用します。
 
そして、重要なのは「量的緩和」によってこの「資本の限界効率」が改善されるということです。

その背景にあるのは人々の「期待」です。つまり「量的緩和」によって人々の投資意欲が増大し、結果として企業の設備投資などが増えていくのです。

これがデフレ脱却の源泉となっていくのです。
 
たとえば、現日銀副総裁の岩田氏は不況時の量的緩和の効果について以下のような説明しています。

『(インフレ「期待」を受けた人々の)行動が、そういった予想のもとでの行動に変わってくるということです。

するとだんだん需要が増えてきて、だんだんデフレギャップが無くなってきて、物価が下げ止まって上昇に転ずるということですが、その時に足許では、マネーストックが増えていないところに注目して頂きたいと思います。
 
つまり、インフレやデフレは貨幣的現象だという場合に、足許でのマネーストックと物価上昇率との関係があると言っているのではないのです。

これは、市場が非常に長期の予想をして、貨幣供給の経路はどうなるだろうと予想して、そして、将来は貨幣供給がどこかで増えてくることを予想し、「ということは将来インフレになるのだから、例えば今のうちに買っておいた方が良い」という行動が出てくるのです。

そのようにして、足許の物価下落が止まっていくということです。

(2013年総裁・副総裁就任記者会見要旨より抜粋)』
 
つまり、長期的にみれば、量的緩和による貨幣供給の増加率と物価上昇率は相関関係が高いということです。

そして金融政策による量的緩和により、デフレ期待からインフレ期待に変わることで、自己資金や増資によって企業が設備投資を増やして行くということなのです。

これによってデフレを脱却して経済成長できるということであり、長期的にみれば私達の所得も改善されていくことを示唆しています。
 

さらなる量的緩和の必要性

 
では、現状さらなる「量的緩和」は必要なのでしょうか? 

 一部マスコミなどは中国の実質GDP成長率が7%を切ったことなどを理由に、日銀による追加緩和の機運が高まっているといっていますが、15日の衆院予算委員会で「追加緩和の必要はない」とした黒田総裁の発言を受けて、円相場は円高にシフトしました。そのためか、黒田氏は再び追加緩和の可能性を示唆し始めています。

現状ではどう転ぶかわからない状況といえます。
 
しかし原油に関わる一連の騒動や、現時点での「中国リスク」は全て我が国の株安・円高への圧力となってしまっています。

経済界や一部エコノミストからは「効果はあまり期待できない」からやめておくべきだという声も聞こえてきますが、実は厳密に試算をして定量的に効果を否定している人は今のところいません。

逆に、頼みの綱ともいえる予想物価上昇率は上昇傾向にあるようには見えないため、さらなる施策が必要であることは自明だと思います。
 
そして何より現時点で、我が国の経済にもっとも悪影響を与えているのは消費税です。

このマイナス効果を払拭するには増税と同じように「持続的に効果がある」追加緩和というのはうってつけだと思います。

そもそも当初の目標であった「2%」のインフレ目標も達成されていない状態です。

何よりも増税による負の影響の「予想間違い」を払拭するためにも、やはり追加緩和は早急に必要だと思います。

日本銀行の動向に注目しよう。

  普段、経済に興味のない人には無視されがちな日本銀行ですが、私達の生活の大本となるお金を供給する源ともいえる存在が日本銀行です。   経済用語について勉強しつつ彼らの動向を追うことで「お金」についての深い洞察を得ることができるようになります。 初めは難しいかもしれませんが、様々なメディアや書籍などを参照しつつ観察することが重要です。 ※参考文献一覧 J.M. ケインズ(1995)『雇用・利子および貨幣の一般理論』塩野谷祐一訳,東洋経済新報社; 〔普及版〕版. 滝川好夫(2008)『ケインズ経済学を読む―「貨幣改革論」・「貨幣論」・「雇用・利子および貨幣の一般理論」』ミネルヴァ書房. 日本銀行(2013)『総裁・副総裁就任記者会見要旨』 [online]〈https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1303e.pdf〉

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