鉄道会社の儲け口とは何か?首都圏 勝ち組鉄道 の話

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鉄道会社は、果たして儲かっているのか

日本の鉄道会社は、北は北海道から、南は沖縄まで 地下鉄 から モノレール に至るまで、200社を超える事業者によって運営されています。

その中には、旧国鉄から地域分割された「JR」から、国や地方公共団体と企業が共同で出資、経営する 第三セクター鉄道 までいろいろあります。

ちなみに、第一セクターとは「国営、県営、市営」などの公企業。

第二セクターは、民間企業を指します。

そして、第三セクターですが、もっとも多いのが「かつては国鉄路線」だったところが、廃線されることになり、地域住民の足が無くなることを危惧した自治体と、民間が出資して存続させている鉄道です。

鉄道に詳しい「鉄ちゃん」ならば、全国津々浦々の路線や、車両についての専門ガイドを披露できますが、ここでは、あくまでも、全国200もの鉄道会社の「経営」について、話を絞っていきたいと思います。

鉄道会社は、果たして儲かっているのか?

ずばり、そこに焦点を当てて見ましょう。

JRグループ7社で、黒字なのは4社だけ

社員数40万人、鉄道の総延長は地球の円周の半分の 約20,000Km、戦前(1920年〜1943年)には 鉄道省 という国鉄のためだけの役所があり、鉄道大臣が任命されていました。

日本の鉄道は、明治時代に欧米列強と言われた、イギリス・アメリカなどの技術が導入され、広まっていきます。

その後、急速に鉄道事業は全国で行われますが、全てが国主導というわけではありませんでした。

明治時代の日本は、開国したばかりで政府には資金がありませんでした。

民間の経済人が敷設した鉄道網が、炭鉱や港湾に伸び、都市間交通よりも発達していったのです。

国の資本が充実したのは、日清戦争(1894年-95年)に勝利し、当時の国家予算(8,000万円)の4倍もの賠償金(3億6千万円)を手に入れたことに依ります。

日本の鉄道事業は、次第に国に買収され、関東・関西・東海・九州などの一部の地域で私鉄が残ったまま、戦後を迎え、1987年には日本国有鉄道(国鉄)も、分割民営化されました。

現在、日本の鉄道事業は「JR = Japan Rail」7社、大手私鉄、準大手私鉄、第三セクター、モノレール、市営鉄道などに分かれています。

その中で、JRグループ7社は「東日本」「西日本」「東海」だけが東証一部上場の黒字経営であり、「九州」が2004年に黒字転換し、2016年内に上場。

残りの「北海道」「四国」「貨物」の3社は赤字経営です。

まず、JR3社の「体力」を見てみよう

具体的な数字ではじき出してみましょう。

2014年度期末決算からみた、鉄道会社の体力(営業力・資本力)についてです。

まず、鉄道事業とそれ以外の事業を含めた「営業収益」(売り上げ)と、経費を差し引いた「営業利益」、「総資産」
と「営業キロ」を比べてみましょう。

東証一部上場 (2015年)

  営業収益  営業利益  総資産  営業キロ 
「JR東日本」    2兆7,561億円 /  4,275億円 /  7兆6,056億円 / 7,512.6km  
「JR西日本」    1兆3,310億円 /  1,345億円 /  2兆6,878億円 / 5,012.7km
「JR東 海」    1兆6,525億円 /  4,042億円 /  5兆2,179億円 / 1,970.8km 

日本には実に21社もの「東証一部上場」の鉄道会社がありますが、2015年12月現在、JR8社のうち東証一部に上場できているのは、以上の3社しかありません。

東証一部上場の条件のひとつは、資本金10億円以上。

ここで、まずいくつかのポイントを考えてみましょう。

ひとつは、営業力です。

営業収益には、鉄道収益のほか、ホテル経営や旅行会社、駐車場経営などの不動産や百貨店経営なども含まれます。

JR3社を比較すると、営業キロが長い東日本の場合は、営業収益から営業利益の割合が、20%、西日本の場合は10%です。

ところが、JR東海の場合は26%にも上り、営業力が三社の中でずば抜けていることがわかります。

JR3社を比較した場合、営業キロが7,500kmにも及ぶ 東日本 は、新幹線や首都圏内の路線で黒字を叩き出していますが、東北地方では軒並み赤字経営です。

JR西日本の場合も条件は同じです。

西日本の場合、鉄道事業は収益の64%に及び、その47%は新幹線に頼っている計算です(2014年3月)。

つまり、顧客単価の高い新幹線でしか、収益は上げられないのが実情なのです。

これに対し、JR東海の場合は、東京ー名古屋ー大阪間の東海道新幹線を独占していますから、収益は非常に高く、黙っていても利益率25%を稼げるのです。

それだけではありません。

JR東海は海外への新幹線輸出にも著しい成果を上げ始めています。

2015年5月、JR東海はタイのバンコク ー チェンマイ間の新幹線開発を受注。

2007年に初めて台湾での新幹線輸出を行い、欧州各国や中国が国主導で鉄道輸出を進める中、民間企業だけでセールスを行うほど実力が付いているのです。

JR東日本の場合は、東北新幹線、上越新幹線などがあり、東京 ー 仙台間は航空路線がありませんので、高速移動手段は新幹線の独占市場です。

これに対し、東京大阪間は空路もあるにもかかわらず、JR東海は一人勝ちを収めています。

理由は、いくつか挙げられますが、羽田から伊丹までの所要時間は 2時間9分、伊丹空港から大阪駅までの所要時間は直通バスで40分ですが、鉄道の場合は、大阪モノレールに乗車し、途中駅で阪急・北大阪急行などに乗り換えなければなりません。

これに対し、駅ビルを再開発しているJR東海の利便性は高く、東海道新幹線 新大阪駅と東京駅の一日の乗車数は30万人に上ります。

まさに、地の利を生かした経営力は、日本一といって過言ではありません。
 

首都圏の東証一部上場 私鉄9社の「体力」「営業力」を見てみよう。東急と西武を診断する

私鉄経営の場合は、高速鉄道を持てないという不利な条件を、いかに克服するのかという点にあります。

その多くは、定期券収入という3ヶ月先、半年先、1年先という顧客確保と、100円200円ではなく、数千円数万円という大きな定期券収入を営業収益の柱にします。

新幹線の場合は、片道きっぷで1万円、2万円と正規料金を確保できますが、都市近郊路線ではそれは望めません。

そのため、私鉄は一人でも多くの顧客を乗せ、鉄道収入を増やすために、沿線開発を積極的に行います。

  営業収益  営業利益  総資産  営業キロ 
「東急電鉄」 1兆0,670億円 /  715億円 /  2兆0,025億円 /  104.9km
「東武鉄道」   4,304億円 /  443億円 /  1兆5,777億円 /   463.3km
「西武鉄道HD」    4,734億円 /  467億円 /  1兆4,204億円 / 176.6km
「京成電鉄」   2,490億円 /  243億円 /  7,822億円 / 152.3km 
「京急電鉄」   3,177億円 /  267億円 /  1兆0,699億円 / 87.0km
「京王電鉄」        4,080億円 /  338億円 /  7,824億円 / 84.7km
「小田急電鉄」  5,187億円 /  498億円 /  1兆2,538億円 /  120.5km
「新京成電鉄」 197億円 / 30億円 / 743億円 / 26.5km
「相鉄HD」 2,523億円 / 255億円 / 5,686億円 / 35.9km

・営業キロのデータは「一般社団法人 日本民営鉄道協会」公式サイトより抜粋

東急、西武のケースをまず見てみましょう。

東急の場合、営業キロは104km、営業収入は1兆円を超えています。

内訳では、営業利益715億円(2015年3月期)のうち、鉄道事業は258.5億円に対し、不動産事業は333.5億円に及びます。

東急グループでは建設、ホテル、百貨店、不動産などの企業がありますが、これらは東急電鉄とは別会社であり、連結決算ではありません。

つまり、東急電鉄の場合は、駅ビルなど、電鉄所有の不動産事業を核に、再開発事業を永続的に行い、鉄道事業を2次収入として経営しているのです。

これに対し、西武鉄道の場合は事情が異なります。

西武鉄道は長年、創業家が不動産、ホテル、レジャー施設、百貨店、スーパーマーケット、ファッションビルなどを手広く手がけ、独特な文化を育成しました。

ですが、現在は西武鉄道が主体となるホールディングスとして、東証一部に再上場し、住宅地の開発と販売を行っています。

本拠地の埼玉県の他、東京、千葉、神奈川と所有する不動産は日本有数と言われ、日本全国にあるリゾート地を含めると、総資産は1兆4千億円。

ですが、これは開発によって付加価値が上がるわけですので、西武鉄道の鉄路のない場所での不動産収入やビル開発は株主にとって目が離せないものになっています。

ところで、西武鉄道沿線には古くから「パチンコ店」があることをご存知でしょうか?

実は、西武鉄道では「コンサートホール」というパチンコ店を経営するグループ企業「コンチェルト」を傘下に持っています。

大きなレジャーランドを持つかたわら、実際には地道なレジャー施設で沿線開拓をしていたわけです。

首都圏の隠れた実力派、京急と京成

新宿を起点とする 京王 と 小田急、池袋発着の東武、渋谷の東急に、地下鉄に乗り入れを果たす西武、と山手線をかすめるルート作りが悲願の私鉄各社ですが、その中で独自の経営を貫いているのが、京急と京成です。

京急と京成、同じ東京の「京」の字を持つ私鉄は、実は同じ路線でつながっているのをご存知でしょうか?

日本の玄関口、羽田空港に乗り入れる「京急羽田線」と「東京モノレール」ですが、羽田空港駅に乗車した電車の行き先は、なんと「成田空港」というアクセスがあります。

むろん、羽田空港からは京急に乗りますが、そのまま都営浅草線を通過し、京成本線とスカイアクセスの2通りの行き方で、二つの空港を直結しているのです。

実は、これには訳があります。

京急と京成は、JRと並行して走る区間が多く、首都圏では珍しくJRと料金、速度を競い合っています。

つまり、特定の地域を独占している鉄道ではないため、周辺都市開発が望めません。

そのため、京急は平和島ボートレース場、大井競馬場に近い 立会川駅 、川崎や横浜の駅には場外馬券場などがあり、花月園駅は、今は亡き「花月園競輪場」の前にありました。

京成は中山競馬場近くに複数駅を持ち、船橋競馬場駅というものもあるほどです。

こうした公営ギャンブル場は、軒並み売り上げが低減している今日では、乗客数の伸びは見込めません。

ですが、空港に乗り入れているということが、唯一の収益のチャンスにつながる、と見ているのです。

年間2,000万人もの海外観光客を迎える玄関口は、何と言っても成田、羽田のシェアはずば抜けています。

京急と京成は、そこを捉えているのです。

神奈川ローカル線が、とうとう渋谷・新宿乗り入れる相鉄、沿線に大学を確保する新京成

 
横浜駅周辺の大地主である、相鉄グループ。

わずか36kmほどの路線だけで、横浜起点のローカル私鉄としては、地道な鉄道事業が光っていた相模鉄道ですが、バブル時代にも積極投資などをしなかったことが、現在の東京進出へと路線開発が確実になった理由です。

平成30年にJR線乗り入れ、31年には東急線に乗り入れと、数少ない東京乗り入れ未達組から、脱出することになります。

不動産事業が本業であるため、都内乗り入れは、新たな顧客を呼び込むことになるのは必至。

いよいよ、神奈川と東京とのパイプがもう一本増えることになります。

もうひとつ、京成グループの中で一路線だけの営業を行っているのが、新京成です。

新京成は京成千葉線に乗り入れを行っていますが、あくまでも千葉県北部、いわゆる「東葛(とうかつ)」地域に限定されています。

この地域は、日本大学薬学部・千葉工業大学・東邦大学・千葉大学園芸学部など、理工系の大学・学部だけが存在しています。

これは、非常に珍しいことで、大学が力を入れる理科系に新京成周辺が選ばれているのは、理系に即した広い土地があること、もうひとつは東京からも埼玉からも千葉からも様々な路線で通学できる「最終路線」が新京成、という側面があります。

新京成はその事業規模から、これ以上の新たな乗り入れなどが可能になることはない、と言われます。

利用者から見れば、京成と新京成は同じグループなのに、料金体系が違うことでデメリットが少なくありません。

新京成の営業力とは一体なんでしょうか?

ずばり、JR線との連絡に他なりません。

常磐線、武蔵野線、総武線に加え、京成の2線と連絡していることで、東京とも埼玉とも通勤圏、通学圏になっていることです。

ローカルに徹していることから、私鉄では珍しい「ローカル線勝ち組」と言えるのです。

鉄道は個人を乗せるものではない。集団を乗せるものだ

JR3社は、元々が国鉄という大きな鉄道遺産を引き継いでいます。 その中でも、新幹線という金のなる木を携えており、10両以上もの車両が専用路線で高速移動する、という特殊な環境にあります。 これに比べ、私鉄各社は地の利で勝負するにしても、乗客を増やすにしても限度というものがあります。 そのため、東急も京王も小田急も京成も、都内を走る営団地下鉄(現 東京メトロ)との乗り入れを図りました。 それと同時に、営業収益の半分以上を「鉄道以外」で稼ぐように経営を変えて行ったのです。 百貨店やバス会社を持つ、京王と小田急。 駅ビル開発や、グループ各社でまちづくりを行う東急。 不動産開発を大規模に行いながら、パチンコホール経営までする西武。 空港というマーケットに執念を傾ける京急と京成。 そして、首都圏ローカルの新京成と、万を持して東京へ乗り入れる相鉄… 実は、東証一部上場ならではの、私鉄経営の方向性が、非常に特色あるものということがわかってくるでしょう。 鉄道会社は、全国に200余り。 首都圏で経営をし続けるには、常にキャッシュフローを健全にしなければなりません。 便利さの裏には、それだけの戦いも隠されています。 鉄道事業を知ることは、実は時代を生きること、そのものの知恵が溢れている、と言えるのです。

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