「因果」と「相関」について‐「原因」と「結果」の法則その3

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「相関関係」と「因果関係」は違うことを理解しよう。

これまで「原因と結果の法則」についてみてきましたが、今回は「因果関係」を見極めるために重要なポイントのお話です。

このポイントをおさえることで、経済の状況や投資に関する諸々の決定要因の分析など、様々な分野に役立てることができます。

  

「因果関係」を正しく見極める

 
これまでの記事で物事の「原因」と「結果」を正しく認識することは、たいていの場合、容易ではないということを書きました。

だからこそ、私達が「因果関係」について判断する場合は、何か明確な基準に基づいて考えなければなりません。
 
その基準とは、即ち「相関関係」と「前後関係」と「他の選択肢の合理的な排除」です。

この3つの基準を満たして初めて、ある現象(出来事)が別の現象(出来事)の原因であるということができます。

逆に言えば、この3つのどれか1つでも欠けていれば「因果関係」があると断定することはできないということになります。

ですが、世の中を見渡してみると、意外にもこれらの評価基準が十分に検証されないままに、あたかも「因果関係」であるとされているものが多いことに気づきます。


「因果関係」見極めのポイント1‐「相関関係」とは何か?

 まず「相関関係」についてですが、言葉自体はよく聞くことがあるのではないでしょうか?

物事の「相関関係」について論じている文献も多いですし、ネットなどを見てもそのような表現を沢山見ることができます。

ですが、厳密に「相関関係がある」とはどういうことなのでしょうか?
 

「相関」とは、たとえばAという事象、そしてBという事象それぞの2種類データに関して、双方の間に関係性があるかどうかを判断する指標のことです。

言い換えれば、Aという事象が変化したならば、Bという事象も共に変化しなければならないということです。

AとBの間に「相関」があるならば、Aという事象の状態や観測された値が変わると、Bという事象の値も変わらなければなりません。

変化の方向はどちらでも構いません。
 
即ち、Aの観測値が上昇した際にBの観測値が上昇してもよいですし、逆にAの観測値が上昇した際に、Bの観測値が下降してもいいということです。
 
前者を「正の相関」といい、後者を「負の相関」といいます。

部活の練習にかける時間を多くすれば、おそらくそれに伴って試合に勝つ確率もUPするでしょう。

また、勉強にかける時間を増やせば増やすほど、赤点をとって補修をしなければならない時間は減少するかもしれません。

これらはいずれも「相関関係」であり、重要なのは「一方の値が変化をするならば、それに伴って他方の値も変化する」ということです。
 
この「相関関係」については、私達は日常的に様々な場面で経験則として知っていることが多いのではないでしょうか?

 雨の量が増えれば、傘を差す人の数が増えるのは容易に想像できると思いますし、身長が増えれば体重もそれに伴って増加する傾向があるのはわかるでしょう。

「相関関係」は日常の様々な場面でみることができますし、それらを厳密にデータをとって数値化してみれば、より多くのことがわかるようになります。
 
そして「相関」の強さを表現する手法として、「分散」や「相関係数」などという指標が統計学にあります。

細かい説明は省きますが、AとBの2つの測定値(変数)を座標平面上にプロットした場合に、両者の関係が1本の直線にどの程度当て嵌まるのか、という観点から相関を表現するのです。

より厳密には直線以外にも当て嵌まる相関もあるのですが、一般的にはこの方法で「相関関係」があるか否かをを判断します。
 
「相関」が強ければ強いほど、一方の測定値の変化から、他方の変化の予測可能性が高くなります。

つまりAとBの間の相関関係が強ければ、Aという変数の値が変化したときのBの変化について予測が立てやすくなるということです。

「比例または反比例の関係」=「相関関係」ではない

「比例」という概念を学生時代の数学の時間に勉強したと思います。

巷ではこの「比例関係」と「相関関係」を混同しているような言説がなされることがあるので注意が必要です。

「比例関係」と「相関関係」は違う概念です。より厳密にいえば、いわゆる「完全相関関係」が即ち「比例」または「反比例」の関係とイコールなのであり、それ以外の「相関関係」は「比例関係」とはいいません。
 
簡単に説明すると、数学の時間にやったように、「比例」または「反比例」という関係は、Xという変数とYという変数の値の比が一定のものです。

たとえばXの値が1、4、8のとき、Yの値がそれぞれ2、8、16ならばY=2Xの関係が成り立つと考えられます。

これが「比例関係」であることは言うまでもないでしょう。

「相関関係」とは、XとYの観測値が、いわばこのY=aXのグラフに「どれぐらい近いか」によって関係の強さを見るという考え方に近いです。

別にY=3XでもY=1/2Xでも構いませんが、要は完全な「比例」または「反比例」の直線グラフに、XとYの観測値がどれぐらい近いかを見るということです。

「相関関係」の理想形が「比例」または「反比例」の関係と捉えてもいいかもしれません。
 
巷では「あの2つの現象は比例している」と軽々しく言われることがありますが、厳密には「相関関係がある可能性が高い」という程度であり、完全な相関を表している「比例」または「反比例」の関係であることはまず無いといっていいのではないでしょうか。
 
無論、「相関関係」があるからといって、それだけでは「因果関係」があるということにはなりません。以下に述べる2つの基準も加えて考えなければなりません。

「因果関係」見極めのポイント2‐時間的前後関係

 
「因果関係」を証明するための2つ目の基準は「時間的前後関係」です。

これは単純な話で、Aという事象がBという事象の原因となっているならば、AはBより先に起こっていなければならないということです。

一見すると当たり前の話に感じられると思います。
 
たとえば、ある人が家の庭で焚き火をしていたとして、その火が隣の家に燃え移って火事になってしまったとします。

この一連の流れを見ていた人にとっては、火事の原因は一目瞭然なわけで、焚き火と火事の因果関係も容易に特定できるわけです。

間違っても、隣の家が火事になったから焚き火の火が燃え上がっているのだとは思わないでしょう。
 こ
のように「時間的な前後関係」によって因果関係がわかる例は、日常生活にたくさんあることがわかるでしょう。

当たり前といえば当たり前の話に感じられると思いますが、実はこの順序関係が容易に特定できないような複雑なケースも存在します。
 
たとえば、「ゲームの影響で子供達の成績が下がっている」というような言説が一時期マスコミなどを賑わせていたことがあります。

つまり、この言説に従うならば、「ゲームのやりすぎ」のために「成績が下がった」という順番であるということになります。
 
しかし敢えて逆に考えてみましょう。元から勉強が嫌いだったり、あるいは成績が芳しくなかったりした結果として勉強が嫌いになった可能性は皆無なのでしょうか?

それに、前後関係が証明されていない以上、可能性としては「成績が下がってしまったショックでゲームばかりするようになってしまった」ことも考えられます。

無論、こじつけの感は否めないでしょうし、そんな子供は常識から考えても少数派でしょう。

しかし上記の「ゲームの影響」が、必ず「成績が下がっている」という現象の原因であると特定されない限りは、可能性としては有り得ることになります。
 
意外にも、この手の因果関係がはっきりしない例というのは沢山あるものです。

いわゆる「鶏が先か、卵が先か」という有名な命題ですが、私達が因果関係を考える場合、Aという事象がBという事象よりも本当に先に発生していたものなのかどうか、もしかすると逆の可能性はないのかということについて、しっかりと考慮に入れる必要があるということです。

「因果関係」見極めのポイント3‐他の選択肢の合理的な排除

 
最後の基準は、ある意味最も見極めが困難な基準です。

ある事象Aが事象Bの原因と考えられている場合、それ以外にBの原因と「合理的に」考えられる事象がない場合にのみ、AはBの原因であるといえるということです。
 
言い換えれば、AとBの間に「別の変数が存在していないか」検証して、問題なければ因果関係を認めるということです。

「第三変数問題」などといわれます。
 
二つの事象A、Bがある場合、私達はどうしても、両者に因果関係があるものと思い込んでしまいがちです。

しかし、実際は別の事象がAとBの両方に影響を与えた結果、A‐B間に相関関係が認められることになったなどというケースは多くあります。
 
たとえばある調査で、「タクシー業者が忙しい日は、都内でビールの消費量が増える」というデータがあったとします。

この場合、「ビールの消費量が増えた」という現象の原因が「タクシー業者が忙しい」ことだとは考えにくいことはわかると思います。

この場合、たとえば「雨」が降ったせいで会社から直接タクシーを利用して帰宅する人が増えた結果として、タクシー業者が俄かに忙しくなった可能性が考えられます。

また同時に、雨宿りを兼ねて居酒屋で一杯飲む人が増えた結果として、ビールの消費量が増えたということも考えられるのです。

無論これは単なる推測であり、厳密に調査をしなければそうとはいえません。

しかし仮にそうだったとすると、「ビールの消費量増加」の原因は「雨」だったことになり、さらに「タクシー業者繁忙」の原因も「雨」だということになります。

この「雨」こそが「第三変数」だったわけです。
 
これはかなりわかりやすい例です。しかし経済現象など現象が複雑になってくると、私達はこの「第三変数」の存在を考慮することなく、2つの現象の間に勝手に因果関係をもたせてしまうことがあるので注意が必要です。

9)

「因果関係」を導き出すためのポイントを抑えよう。

「因果関係」を正しく認識するためには、「相関関係」「前後関係」「第三変数など他の選択肢が排除できるかどうか」の3つのポイントを意識する必要があります。   これらをしっかりと検証することで、物事の「原因」と「結果」を見極めましょう。これは経済現象などの分析や証券分析などで大いに役に立ちます。 ※参考文献一覧 E.B.ゼックミスタ・J.E.ジョンソン(1996-2002)『クリティカルシンキング‐入門編』(宮元博章・道田泰司・谷口高士・菊池聡訳) 北大路書房. E.B.ゼックミスタ・J.E.ジョンソン(1997-2002)『クリティカルシンキング‐実践編』(宮元博章・道田泰司・谷口高士・菊池聡訳) 北大路書房.

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