「政府の借金」再考‐「税金」と「借金」その1

一般国民は金融システムを知っておくことが大切

今年は消費税が10%に上がるかもしれないといわれています。

様々なリスクが経済に現れるなか、安倍政権はどういう決断をするのか注目されるところです。

そして私達一般国民は、今の段階での増税が害悪であることを知ると同時に、現在の金融システムがどういうものなのかをよく知っておく必要があります。

まずもって「消費税」は論外です

 

以前、財務省の欺瞞によって税収が増えないにも拘らず消費税が8%に上げられ、さらに10%になるかもしれない状況は危機的だということを書きました。

なぜならば税収というのは簡単な式にすると「名目GDP×税率×税収弾性値」です。

この式だけを見ると、税率を上げると税収が増えるように見えるかもしれませんが、消費税を上げることによって「名目GDP(つまりモノやサービスの付加価値の合計)が下がってしまう」ので、長い目でみれば税収も下がってしまうのです。

つまり上記の式のうち、仮に名目GDPと税収弾性値が一定のままならば単純に税率を上げれば税収もイコールで増えるというのはすぐわかると思いますが、増税によって名目GDPと税収弾性値(僅かではありますが下がる場合があります)が下がってしまうため、長い目でみれば税収自体が減っていきます。
 
名目GDPとは、簡単にいえば私達の所得の合計です。私達は所得のうちの一部を消費に回します。

そして誰かの消費は回りまわって誰かの所得になるわけですから、国民がお金を消費に回すことができなくなれば、それが誰かの収入、即ち所得になることもありません。

従って国民がどんどん貧困化していくのはすぐにわかります。いわゆる「デフレスパイラル」というやつです。
 
増税は景気が加熱している時に行わなければ全くの逆効果になってしまうのです。状況としては、インフレが行き過ぎてバブルになる懸念が出てくる程度にまでならなければ基本的にやってはいけません。

むしろ、それぐらい名目GDPが伸びているような状態でなければ、長い目でみて税収自体も増えていかないのです。
 
ちなみに消費税のような税金を「付加価値税(VAT)」という場合があります。

付加価値の額に応じて課税されるのでこのように呼ばれるわけですが、要は消費者が最終的な商品やサービスに代金を払い、その提供に関わった各事業者が自分達がつけた付加価値の大きさに応じて、それぞれ分担して納税をするという仕組みになっているということです。

つまり、税金というのは「その付加価値に支払われるお金を問答無用で吸い上げるシステム」であるといえます。

さらに今の我が国はまだまだデフレの影響を抜け出せていません。基本的にデフレーションというのは、モノやサービスの付加価値がどんどん損耗しているような状態になります。
 
つまりデフレ下で増税するということは、ただでさえ付加価値が損耗している経済に対して、さらに付加価値を削り取るような政策で追い討ちをかけることに他ならないのです。

これは害悪以外の何者でもありません。

近年では「増税が付加価値を潰してきた」ために、付加価値に対価として払われるお金を政府が吸い上げる格好となってしまっています。

繰り返しますが、今の段階で消費税増税など絶対にやってはいけないのです。
 
しかし財務省などの増税派は「国の借金(正しくは政府の債務)」を返すために増税が必要だと嘯いています。

既にこれは欺瞞であると述べましたが、このことについてさらに詳しく見てみましょう。

「税金」で「政府の借金」は返せるか?

 まず定義を確認しておきましょう。世の中に出回っているお金の総量のことを「マネーストック」といいます。

「通貨残高」とか、かつては「マネーサプライ」などといいましたが、現在では「マネーストック」といいます。そしてこれは、どの範囲まで私達の預金を通貨に含めるかで、それぞれ「M1(エムワン)」「M2(エムツー)」「M3(エムスリー)」、そして「広義流動性」の4つの指標に分けられます。

しかし今回はその分類はどうでもよいです。このうち比較的よく使われる指標であるM2は約800~850兆円で、M3はおおよそ1100兆円程度になっています。

つまり私達一人ひとりの預貯金を全部足し合わせると、大体これぐらいの額になるということです。
 
しかし驚くべきことに、実際に世の中に「現物」として出回っている紙幣の総額は約80~85兆円程度しかありません。

つまり私達のお財布の中に入っている実際の紙幣を全部足し合わせてもこの程度の額にしかならないということです。
 
その差額である1000兆円以上の「お金」はどこにあるのかといえば、その多くが銀行の口座にある「ことになって」います。

どういうことかといえば、ほとんどのお金は各銀行が「信用創造」によって作り出したお金だからです。

「信用創造」の仕組みについては別記事に詳しく書きましたので割愛しますが、要は「お金」が全て実際の「現物」として存在するわけではないということです。
 
実は、そのほとんどは銀行の「電子情報」として存在しているということができます。

それらの合計が約1100兆円となっているに過ぎません。国立印刷局による紙幣の発行という行為は、別に「お金」を発行していることを意味するわけではありません。

「信用創造」システムに則っていえば、実質的には「お金」を発行しているのは各民間銀行であるということになります。
 
また、もう一つ「信用創造」の仕組みを理解すると浮かんでくる事実があります。

即ち、「誰かの所得はほとんどの場合、誰かの借金である」という事実です。

なぜならば世の中のお金のほとんどは、民間銀行が誰かの「借金」として増やしてきたものだからです。
 

そして「借金」には当然「金利」が伴いますので、全体としてみると世の中のお金は、その「金利」分だけ多く存在しなければならないことになります。

これは「信用創造」によってお金がつくられ、それを基盤として私達が生活している以上、継続的に誰かが「借金」をし続けて「お金」が増え続けなければならないということを意味します。

 

「税金」では「政府の借金」はなくならない

 
繰り返しますが、現在の金融システムというのは、誰かが借金をしてお金を増やし続けないといけないシステムになっています。

そして極端な話ですが、銀行が民間にお金を貸さなくなれば、残るは政府が借りるしかなくなります。

民間と違って、政府はお金を借り続けることが可能です。

換言すれば、行き場所を失った借金の矛先が一番最後に回ってくるのが政府であるということができます。
 
ここまで見てくるとわかるように、「信用創造」によって民間銀行が「お金」を作り出すというシステムが根幹にある限り、「政府の借金などなくなることはない」のです。

これは別に我が国だけではなく、世界のほとんどの先進国でそうなっています。
 
特に最近までは、長引くデフレで国民が「借金」をしないマインドが形成されてしまっていました。

そうすると代わりに政府が借金をしなけばならなくなります。

そして「増税」はデフレを促進するので、「増税」で政府の負債を返済するのは不可能どころか、さらに政府の負債を増加させることになるということです。
 
実は、似たようなことが歴史的に何度か起こっています。代表的なものは「昭和恐慌」です。

「世界恐慌」の煽りを受けながら、我が国もこの時デフレに陥っていました。

デフレ対策として一番有効なのは金融緩和です。

しかし時の濱口雄幸内閣や若槻礼次郎内閣は、「デフレの処方箋としてデフレ政策」をするという馬鹿げたことをやってしまいます。
 
結果として、ますます我が国の経済の傷口を広げてしまいました。

繰り返しますが、昭和恐慌は世界恐慌と同じでデフレ不況です。にも拘らず、彼らはさらにデフレを促進する政策をやってしまったのです。

そのせいで東北などでは身売りなどが続出する恐ろしい事態になってしまいました。
 
そして、その後任となった犬養内閣の大蔵大臣である「高橋是清」は、赤字国債を発行して、日銀に国債を引き受けさせることによってマネタリーベース(現在のマネーストック)を拡大させました。

また、政府支出の拡大をして景気回復の呼び水としたのです。

これこそが正しいデフレ対策でした。結果として、日本経済はデフレから世界一早く脱却することができました。
 
私達も高橋の政策に習って、いち早くデフレを脱却する政策こそが重要なのであり、デフレを促進してしまう「増税」などもってのほかであると主張し続けなければならないのです。
 

財政問題の本質は「お金」の「発行」の問題である。「税金」の問題ではない

 
既にみてきたように、「お金」というのは「融資」という形を通じて、民間銀行が作り出してきたものです。

日本銀行などの各国中央銀行は、それをコントロールするという役割をもっています。そしてその中央銀行の監督の下、民間銀行がたくさんお金を貸せばその分だけマネーストックは増えます。
 
そしてこのシステムを続ける限り必然的に「お金」は増え続けなければならないことになり、民間が「借金」できない分は政府が肩代わりしているような状態になっているのが現状です。

つまり財政問題の本質はこの「金融システム」の根本の問題なのです。

決して税金が足りないからというわけではありません。

既に述べたように、税金で政府の債務をなくすことなどできないのです。

私達はまずこの事実を知っておく必要があります。

実は危うい金融システム

「経済」ということばの本来の意味は「経世済民」であり、その本質は「価値を交換」することで国全体を豊かにしていくことです。 「お金」というのは、いわばその媒介物に過ぎません。 したがって起業家などが付加価値を生み出すチャンスを増やしたり、その種類を増やして行くことこそが、本質的な意味での経済の成長ということなのです。   しかし現在では「信用創造」によって銀行が実質的に「お金」をつくっており、それが常に借金を続けて行かなければならないシステムの原因となっています。 私達の生活を支えているこのシステムですが、常に危険性を孕んでいるということだけは覚えておく必要があります。

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