ビール離れに歯止めはかかるか?

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ビールは復権するか?

発泡酒と第三のビールを含めた2015年のビール類販売は、11年連続で減少しました。

しかし、ビールだけを見ると、前年比0.1%増となって、実に19年ぶりの増加に転じました。

この数字を見て、各社は「期間限定品」などを積極的に投入した効果と見ています。

日本におけるビールの起源

  
世界で初めてのビールの誕生については、諸説があり、紀元前8000~4000年までさかのぼると言われていますが、いずれにしても文明とともに古くから人々に親しまれていたのは確かです。

一方、日本にビールが入ってきたのは、英米の船が来航してからのことです。

万延元年(1860年)、幕府の第一回遣米使節の一人、玉虫左太夫は初めてビールを飲んで「苦味ナレドモ口ヲ湿スニ足ル」と書いています。

それ以前、ペリーが来航した嘉永6年(1853年)に、蘭方医である川本幸民は蘭書の記載を見て、江戸の露月町の私宅でビールを試醸したといわれていますから、これが日本でのビール醸造の起源だと言えます。

そして明治3年(1870年)には、アメリカ人コープランドが横浜の山手居留地に「スプリング・バレー・ブルワリー」を創設してビールの醸造を開始し、主に居留外人向けに販売しました。

さらに明治5年に、大阪で渋谷庄三郎が日本人では初めてビールの醸造・販売を本格的に開始、翌6年には甲府で野口正章が、そして9年には札幌で北海道開拓使麦酒醸造所が創設され、中川清兵衛を中心に醸造を開始、翌10年には東京に出荷しています。

このようにして、日本のビール産業は黎明期を迎えたのです。

ビール市場の変遷

終戦を経て、昭和40年代はビール需要の伸び率が徐々に鈍化してきました。

それでも全国で10工場が新設され、製造量は10年間で約2倍に達しました。

また、現在使用されているプラスチック箱の導入やビールギフト券の発売も、この時期に行われました。

さらに、昭和50年代に入ると、昭和52年(1977年)に製造量が400万klに達したものの年率平均2.6%の伸び率となり、安定成長期に入りました。

その後、昭和62年(1987年)に製造量が500万klを突破し、平成元年(1989年)には600万kl、さらに平成6年(1994年)には700万klを超えました。

平成7年以降は、バブル経済崩壊後の景気低迷等の影響により、再び600万kl台の水準となりました。

平成6年に記録した713万5千klが、過去最高の製造量となります。

  このように、近年もビールの製造量は安定的に増え続けていますが、この要因としては、消費者の嗜好の多様化・個性化や女性の飲酒人口の増大に対応し、各種の新商品の発売を含め商品対策の活発な展開を行ったことにあります。

また、ビールをいつでも新鮮な状態で流通するためのフレッシュローテーションをはじめとする、一層の品質向上努力により、健康的な低アルコール飲料であるビールの特性が、消費者に幅広く浸透し、支持されたことによるものです。

最近のビール工場は、消費者の方々が見学できるように、色々と工夫がなされ、また外国ブランドビールの国内ライセンス生産を行っている工場もあって、国際的な広がりも出てきています。

さらに、規制緩和のひとつとして、平成6年4月にビール製造免許に係る最低製造数量基準が、年間2,000klから60klに引き下げられました。

これによって、日本でも地ビールであるマイクロブルワリーやパブブルワリーが各地で次々登場し、それぞれ個性あるビールを製造しています。

 

なぜビール離れになったのか?

最近の日本の若者、特に20代の若者を中心に、「ビール離れ」が顕著であると言われます。

ある統計によると、「家でビール、飲みますか?」の問いに、30~40代は「よく飲む・たまに飲む」が80%あるのに対し、20代では50%程度です。つまり20代の半分が「ビール飲まない派」に当たります。

ではなぜ、若者はビールを飲まなくなったのでしょうか。

 
先ず、若者がビールを苦手と思うのは、ビールの「苦さ」にあるようです。

もう少し詳しく言うと、「ビールの味が重くて嫌い」という意見が多いのです。

おそらく麦芽の味がたっぷりとした濃厚な飲みごたえある本格派ビールが、味が濃すぎて受け付けないのでしょう。

確かに、30代40代の好きなお酒がビールがトップなのに対して、20代は「チューハイ」、「サワー」、「カクテル」のように、フルーティーで口当たりが良く、抵抗なしに飲めそうなお酒がトップを占めています。

この意見を聞いて、多分大人たちは、「ビールはその苦いところがいいんじゃないか。」とでも言いたくなりそうですが、若者にすれば、苦い飲み物を敢えて飲みたくないという全く逆の意見もあるのです。

次に、20代の若者の意見としては、「美味しさがわからない」、「他にも飲むお酒がある」など、真っ向からビールを否定する考え方があることです。

確かに、初めてビールを飲んだ時の印象が「とてもおいしい」のはわずか9.4%という調査結果があります。

つまり、ほとんどの人にとって、初めはビールという飲み物は美味しくないという印象を持ったことになります。

多くの人が、人生で初めてビールを飲むのは、大学などの「サークル」、「クラブ」、「コンパ」や会社での「飲み会」の席だと思います。

最初は、苦くて何が美味しいのかわからずに飲んだり、無理に飲まされたりという形から始まった人も少なくないはずです。

先輩や上司から無理矢理すすめられて飲むようになり、「苦い」が徐々に「旨い」に感じられるようになるのが一般的です。

このように、後でビールの美味しさに気付いた人が、圧倒的な意見のようです。

根本的に考え方が、「コーヒー」や「ピーマン」などの「苦味食品」の好きになるその過程と、大差が無いように思えます。

さらに、個人の楽しみの多様化が進む現在、飲み会での「とりあえずビール」の風潮は徐々に減り、最初の一杯からそれぞれが飲みたいものを頼んで飲む傾向が強くなっているのも事実です。

また、そもそも「飲み会」自体の回数も減少しています。

従って、居酒屋でアルコールをとことん飲むという「飲み放題」というシステムは、今の若者にはなかなか受け入れられず、喜ぶのは中高年のサラリーマンだけという状態になりがちなのです。

上記のように、ビールを飲む必然性がなくなった若者に、ビールを好きになるきっかけはかなり減っています。

初めて参加する飲み会などで、無理やり飲まされたり、瓶ビールでのお酌を強要されたりと、ビールに関するいい思い出がないのも事実です。

但し、飲みの強要もお酌も、ビールに限ったことでなく発生するはずです。

それにも関わらず、何故ビールが槍玉の様に挙がるのでしょうか。

それは、最初の乾杯での「ビール強要」が原因だと考えられます。

多くの人が体験しているかも知れませんが、「よし、みんな席に着いたか?一杯目はみんなビールで乾杯だ!」というこの「最初の一杯=ビール」が、どうも受け入れられない若者が多いのも事です。

飲み会の1杯目から、本当は別のものを飲みたかったが、空気を読んでビールにしたことが人は、約30%に及ぶと言うことです。

さらに自分の飲むものを、周りに強制されてビールにさせられたことがある人は、約20%になります。

確かに飲み会で、最初の乾杯ビールがテーブルの上で手をつけられないまま、ポツンと置いてあるのをよく見かけます。

そもそも飲み会は、みんな自分の好きなものを飲んでこそ楽しいはずです。

そこで「全員ビール!」や「お前もビールな」などと強要されるのは、甚だ迷惑だと想像できます。

ビール市場の今後

今回の19年ぶりの増加について、ビールメーカー各社は、期間限定品などを積極的に投入した効果とみています。

さらに、商品の多様化や若者層へのアピール強化で「ビール復権」を狙っています。

 
キリンビールは2016年5月から10月にかけ、都道府県別に味を変えた「47都道府県の一番搾り」を順次発売していく予定です。

高価格ながら若年層にも人気があり、コンビニエンスストアなどで限定販売されているクラフトビール「グランドキリン」も刷新していきます。

布施孝之社長は「ビールをもっと魅力的にする」と需要の掘り起こしに闘志を燃やしています。

 
またサントリービールは、「ザ・プレミアム・モルツ」を軸に、定番の「ザ・モルツ」、高価格帯の「マスターズドリーム」の3ブランドで攻勢をかけます。

水谷徹社長は「苦味や辛口より、今は味わい」と話し、香りやうま味をアピールする考えです。

 
さらにサッポロビールは、2015年主力の「黒ラベル」の味を変えるリニューアルを実施しました。

これが功を奏し、黒ラベル販売量は21年ぶりに前年実績を上回りました。

2016年は初の派生商品も投入する予定で、尾賀真城社長は「ビールに傾注する1年としたい」と意気込んでいます。

 「スーパードライ」の15年販売が前年を割り込んだアサヒビールは、2015年3月に糖質50%オフの「アサヒ ザ・ドリーム」を投入し、挽回を目指します。
 

ビール各社は様々な戦略を練っています

   今後人口減が想定される日本では、酒やビールの消費量が減少していくことは止むを得ませんが、ビールメーカー各社はそれぞれの特性を生かして戦略を練っています。

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