AIIBは成功するか?

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AIIB設立が意味するものは?

   
AIIBの正式な名称は、「アジアインフラ投資銀行」です。

2016年1月16日、中国主導で設立されました。

名称のとおり、アジア諸国のインフラ整備を目的とした銀行ですが、日本は参加を見送っています。

この銀行設立の意味は何でしょうか。

AIIBとは何か?

 
 AIIBは、アジア向けの国際開発金融機関で、中国が提唱し主導する形で、2015年12月25日に発足し、2016年1月16日に開業式典を行いました。

57か国を創設メンバーとし、さらに30カ国が追加で加盟を希望しているとされていますが、一方で日本、アメリカ、カナダなどの国々は、参加していません。

資本金の目標は1000億ドルですが、設立時でその50.%の資本が集まっています。

AIIBの目的とは何か?

 
 AIIBの目的は、日米が主導するアジア開発銀行(ADB)では、対応できない増大するアジアにおけるインフラ整備のための資金ニーズに対して、代替・補完的に応えるということで、中国が設立を提唱したことが始まりです。

また、背景には中国が既存の国際金融秩序に対して、不満を持っていたことにあると言われています。

アメリカの経済博士マイケル・ハドソンによれば、米国が拒否権を持ち米国企業を優先する国際通貨基金(IMF)や世界銀行をおびやかそうとしているとされています。

また、中国国家主席である習近平は、2014年のボアオ・アジア・フォーラムで「アジア運命共同体」の構築を主張し、AIIBがその重要な手段となると説いています。

中国には、「シルクロード経済ベルト」として活性化することを目指す「一帯一路」構想があり、この構想を実現するためのインフラ整備の金融支援の役割をAIIBが担うと期待されています。

また、深刻な投資資金の不足に悩むアジア諸国にとっては、立ち遅れたインフラ整備を支援するというAIIBの提案を拒否する理由が全くなくため、2015年当初までは、参加国の大部分が支援を受ける側のアジア諸国でした。

一方、先進国や富裕国で名を連ねるのは一部にとどまっていました。

しかし、その動向が変わったのは、2015年3月12日に日米欧の主要7カ国会議(G7)で、初めて英国が参加方針を発表し、その後、ドイツ・フランス・イタリアなども参加方針を発表しました。

欧州の先進国が参加することによって、AIIBが信用力のある本格的な国際機関としての体裁が整い、創設後の資金調達でも高い格付けが得られる可能性が高まりました。

 
この欧州勢が参加した背景には、中国の積極的な働きかけがありました。

また、欧州諸国は日米に比べて、中国への警戒感が薄く、AIIBへの関与が成長市場のアジアでのビジネス拡大の好機になるという経済的実利があったのです。

一方で、既存のアジア開発銀行(ADB)を主導してきた日本や米国は、中国のアジア地域への影響力が強くなることを懸念し、さらにAIIBの組織運営や意思決定プロセス、審査基準などが不透明などとして距離を置いており、さらなる先進国の追随に警戒感を強めています。

 

AIIBの経緯

  中国の習近平国家主席が構想を唱えてから開業するまでの800日間、中国は矢継ぎ早に手を打ってきました。

中国から欧州への広大な地域をインフラで結ぶ「二つのシルクロード経済圏(一帯一路)」構想を発表し、巨大なインフラ需要が生まれるという青写真を示しました。

設立後に見込まれる利益が、発展途上国だけでなく先進国にももたらされるとして、先進国をひきつけ、英国、ドイツなど「アジア・太平洋域外」の各国も、次々に参加を表明しました。

 AIIBの初代総裁である金立群氏は、中国誌のインタビューで、さらに30ヶ国以上が参加を求めていると答え、「年内には、これらの国の参加問題も解決する」と強気の発言をしています。

意思決定の早い新銀行が、改革が進まずに硬直的だ指摘される既存の国際金融機関に対して、規模の上でも並ぶとの自信をのぞかせました。

AIIBの基本事項

 
 AIIBの本部は中国(北京)、資本金は1000億ドル(中国が最大拠出国)、事業内容は新興国のための「国際投資機関」であり、初代総裁は中国の元財務官・金立群氏です。

  
また、AIIBの創設メンバー57カ国で、内訳はアジア19ヶ国、旧ソ連7ヶ国、オセアニア2ヶ国、中東9ヶ国、アフリカ2ヶ国、欧州17ヶ国、中南米1ヶ国です。

具体的な国名は、以下のとおりです。

・アジア…中国、韓国、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス、インド、バングラデシュ、モルディブ、モンゴル、ネパール、パキスタン、スリランカ

・旧ソ連…ロシア、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、アゼルバイジャン、キルギス、グルジア

・オセアニア…オーストラリア、ニュージーランド

・中東…サウジアラビア、カタール、オーマン、クウェート、UAE、ヨルダン、トルコ、イスラエル、イラン

・アフリカ…エジプト、南アフリカ

・欧州…英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、スイス、ルクセンブルク、オーストリア、オランダ、デンパーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、アイスランド、ポーランド、マルタ

・中南米…ブラジル

AIIBの今後

AIIBの今後について、次の4点の懸念材料があります。

  まず1点目は、中国は各国と平等な立場でAIIBの在り方や運営方法を決定できるか、中国は自国の経済力に物を言わせて、反対を押しつぶすのではないかという基本姿勢に関する懸念です。

  次に2つ目は、各国の出資比率、AIIBの本部の所在地、総裁の人選などの問題です。

出資比率については50%とすることにこだわる可能性があります。

仮に中国が柔軟な姿勢を取るとしても、大幅な譲歩は望めません。

国内総生産(GDP)を見れば、中国は世界の12・7%(2013年)であり、これは我が国の2倍を超えていますが、米国の22・4%にはまだ遠く及ばず、EUの独仏英伊4カ国の合計とほぼ同じ額です。

国内総生産にしたがって出資比率を決定するのであれば、公平な解決となりますが、はたして中国はそのようなことを受け入れられるか心配です。

中国の本部を北京とすることは、中国が影響力を行使しやすい諸国との間で決定済みであり(2014年10月24日、北京で署名された創設に関する覚書)、それ以外の国にとってはその決定を受け入れるか、銀行の設立に参加しないかという選択肢しかありませんでした。

また、総裁についても中国人とすることに中国は今後もこだわる可能性があります。

以上述べたことが事実であれば、AIIBが国際機関であるというのは形式だけで、その実体は中国の「国内銀行」とみなすべきかもしれません。

次に3つ目は、金融の技術的な問題です。

人民元はまだ国際化が進んでおらず、AIIBは米ドルに頼らざるをえない状況です。

そうなると、AIIBはドルを管理している米国の政策の影響を受け、もし米国がドルを引き上げたとしたら、AIIBもドル不足となり運用がうまくいかなくなるおそれがあります。

米国はこれまで、ドルを国際的な基軸通貨として運用し、外国の機関がドルを活用することを自由に許容してきました。

この原則的方針は簡単には変わりませんが、万が一ドルの価値を防衛するために通貨政策を調整することは全くありえない話ではありません。

そうなった場合、ドルによるAIIBの活動も影響を受けるおそれがあります。

一方、中国国内では、金融は健全に機能しておらず、国有企業との癒着、非正規金融の横行などの問題があります。

外貨導入を再活性化するために、自由貿易区の建設が進められているのは、その証拠です。

AIIBは、このような中国国内の金融困難の影響を受ける恐れがあります。

出資比率、本部、総裁などAIIBの基本問題と金融の技術的問題をどのような解決するか、特に欧州は、強い関心を持つでしょう。

解決は簡単ではありませんし、協定締結の段階で、AIIBから脱退することも考えられます。

  最後の4つ目は、中国が以前から「海上シルクロード」とも「真珠の首飾り」とも「一帯一路」とも呼ばれる、ヨーロッパまで伸びる海上運輸ルート建設構想を打ち出していることです。

この構想は、中国の海洋大国化戦略と密接に関係していて、中国がAIIB構想に力を入れているのは、この戦略目標達成が重要課題だからです。

AIIBが日米に与える影響

今回、アメリカと日本はAIIBに参加していません。

日本は、AIIBが常設の理事会を設けず、融資基準などに懸念が残ることや、加盟には多額の出資金が必要なことから、慎重な姿勢を取り続けています。

麻生太郎財務大臣は、「今までと変わらない」と述べています。

  一方アメリカは、中国主導に対抗する新たな枠組み作りを急いでいます。

その一つが、日本などと2015年秋に合意した環太平洋経済連携協定(TPP)です。

アメリカ通商代表部のフロマン代表は、TPPが遅れれば「経済的にもアメリカの指導力にとっても代償は高い」と言っており、議会で早期の承認を求めています。

  しかし、アジアには多くのインフラ需要があり、AIIBを全く無視することはできません。

加盟国も重なる日米主導の国際金融組織を通じて、協調融資の道を探っていくことになります。

AIIBは今後に様々な課題を残している

   中国主導で設立されたAIIBですが、需要の大きさがある一方で、やや危うさを持ているのは事実です。

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