最低限押さえておきたい「成年後見制度」の知識

shutterstock_137194688

成年後見制度の今後

   
世界でも有数の少子高齢化社会になった日本ですが、認知症高齢者も増加の一途をたどっています。

そのような認知症高齢者の財産を守るために出来たのが、「成年後見制度」です。

しかし、正しく理解した上で運用していかないと、金銭問題を含め思わぬトラブルが発生します。成年後見制度の今後どうなっていくでしょうか。

成年後見制度とは?

   
成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つの制度があります。

「法定後見制度」とは、精神上の障害(認知症、知的障害、精神障害等)を有する者の判断能力に応じて後見、保佐、補助の3つに分けられ、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって、本人を保護・支援する制度のことです。

後見は、本人が一人で日常生活を送ることができなかったり、一人で財産管理ができなかったりというように、本人の判断能力が全くない場合に本人を保護・支援する制度です。

保佐は、本人が日常的な買い物程度は一人でできるが、金銭の貸借や不動産の売買等 重要な財産行為は一人ではできない場合に本人を保護・支援する制度です。

補助は、本人が一人で重要な財産行為を適切に行えるか不安があり、本人の利益のため には誰かに代わってもらったほうがよい場合に本人を保護・支援する制度です。

成年後見人、保佐人及び補助人(以下「成年後見人等」と言う。)になるための条件ですが、未成年者、家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人又は補助人、破産者、被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族、行方の知れない者以外は、成年後見人等になることができます。

法定後見が開始されるまでの過程ですが、初めに申立人が後見等開始の審判申立の書類を作成します。

その際、後見、保佐、補助のいずれかの申立てをしなければなりませんが、後見、保佐、補助のいずれに該当するか明らかでない場合、診断書の内容に基づいて申立てを行います。

申立書類等の準備が整ったら家庭裁判所に申立日の予約を行います。

申立当日、家庭裁判所は、後見等開始の申立書類の審査、申立人、後見人等候補者及び本人の面接調査を行います。

また、補助開始の場合や保佐開始で代理権を保佐人に付与するには、本人の同意が必要であるため、家庭裁判所は本人への同意確認も行います。

家庭裁判所はその他親族への照会、鑑定(後見、保佐の場合)等を行います。

家庭裁判所での審理が終わると、審判により成年後見人等が選任されます。

審判から2週間が経過すると審判が確定し、全国の後見登記に関する事務を行っている東京法務局が本人の後見等の登記を行います。

審判確定後、成年後見人は1ヶ月以内に財産目録及び年間収支予定表を作成して家庭裁判所に提出します。

財産目録を作成している時点では、急迫の必要がある場合を除いて成年後見人は職務を遂行することができません。

「任意後見制度」は、本人が十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分な状態になった場合に備え、本人が予め選んだ任意後見人になる人(以下「任意後見受任者」と言う。)との間で、自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約(任意後見契約)を公証人の作成する公正証書で結び、本人の判断能力が低下した後に、任意後見人が、任意後見契約で決めた事務について、家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」の監督のもと本人を代理して契約などをすることによって、 本人の意思にしたがった適切な保護・支援をする制度のことを言います。

法定後見が開始されるまでの過程ですが、初めに、任意後見制度を利用する者(以下「任意後見委任者」と言う。)は任意後見受任者を選び、任意後見委任者の生活スタイル等に基づいて契約内容を決定します。

その後、公証人の立会いの下、任意後見委任者と任意後見受任者は任意後見契約の公正証書を作成します。

公正証書作成の手続が終わると、公証人は全国の後見登記に関する事務を行っている東京法務局に任意後見契約に関して登記の嘱託を行います。

成年後見制度の実務

成年後見人の権限は、日用品の購入その他日常生活に関する行為以外の成年被後見人の 法律行為を取り消すことができ、成年被後見人の財産に関する全ての行為に対する代理権があります。

そして、成年後見人の職務は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うこと、家庭裁判所又は成年後見監督人の求めに応じて後見事務の報告をすることです。

療養看護に関する事務(身上監護)とは、本人の意思を尊重し、本人の心身の状態や生活状況を配慮して、老人福祉施設入所に関する契約の締結、介護サービスの契約締結、治療及び入院の際の契約締結等をすることです。

財産管理とは、預貯金の管理、株券や国債等の管理、毎月に必要な支払(家賃、ローンの返済、公共料金等)、本人に代わって契約の締結・解除等を行うことです。

保佐人の権限は、被保佐人の行為に対して同意権があります。

そして、保佐人の同意が必要な行為のうちその同意を得なかったものは保佐人も被保佐人も取り消すことができます。

また、家庭裁判所は必要に応じて、それ以外の行為(ただし、日用品の購入その他日常 生活に関する行為を除く)についても同意権を付与することができます。

代理権は、申立ての際、本人の同意を得た上で保佐人に付与されます。

保佐人の職務は、本人の意思を尊重し、本人の心身の状態や生活状況を配慮して同意をしたり、本人に不利益があれば取り消したりすること、及び審判で認められれば保佐人は本人の代理権を行使すること、家庭裁判所又は保佐監督人の求めに応じて 保佐事務の報告をすることです。

補助人の権限は本人の同意を得て一部行為の同意権があります。

また、代理権は申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定めた範囲で補助人に付与されます。

そして、補助人の同意が必要な行為のうちその同意を得なかったものは補助人も被補助人も取り消すことができます。

補助人の職務は、本人の意思を尊重し、本人の心身の状態や生活状況を配慮した上で、審判で認められた範囲内で本人の法律行為を同意したり、本人の代理権を行使したりすること、家庭裁判所又は補助監督人の求めに応じて補助事務の報告をすることです。

成年後見監督人の職務は、成年後見人の事務を監督すること、成年後見人が欠けた際の選任を家庭裁判所に請求すること、急迫の事情がある場合の必要な処分をすること、成年後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について成年被後見人等を代表することです。

成年後見制度と報酬

成年後見人の報酬については、民法で「家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる」と定められ、成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人及び任意後見監督人の各報酬についても準用されています。

報酬には、通常の事務によって付与される基本報酬と、本人のために必要とされる特別な行為をした場合に基本報酬に加えて付与される付加報酬とがあります。

成年後見人等及び成年後見監督人等が報酬を受けるためには、成年後見人及び成年後見監督人等が家庭裁判所に後見等事務報告をする際に報酬付与の申立てを行う必要があります。

申立てを受けて家庭裁判所は報酬額の審判を行います。

一例として、東京家庭裁判所では成年後見人等の報酬の目安を、次のとおり示しています。

基本報酬については、成年後見人、保佐人、補助人の場合、月額2万円が目安とされています。

ただし、管理財産額(預貯金及び有価証券等の流動資産の合計額)が高額な場合には、財産管理事務が複雑、困難になる場合が多いため、報酬額の目安が高めに示されています。

・管理財産額が1,000万円を超え5,000万円以下の場合:月額3万円~4万円

・管理財産額が5,000万円を超える場合:月額5万円~6万円

成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人、任意後見監督人の基本報酬の目安は以下のとおりです。

・管理財産額が5,000万円以下の場合:月額 1万円~2万円

・管理財産額が5,000万円を超える場合:月額 2万5千円~3万円

なお、複数で成年後見人等の職務を遂行した場合には分掌事務の内容に応じて、適宜 の割合で按分されます。

付加報酬については、身上監護等に特別困難な事情があった場合は基本報酬額の50% 以内、不動産を売却した場合や本人が保険金を請求して保険金を取得した場合等は相当額の報酬が付加されます。

成年後見制度の今後

厚生労働省の調査では平成22年時点で「日常生活自立度Ⅱ」以上の認知症高齢者が約280万人であるという推計があり、ある研究では平成24年時点で認知症高齢者は約462万人であるとの推計もありますが、実際に成年後見制度を利用している人数は約 16万6千人にすぎません。

成年後見制度を利用していない高齢者の権利が侵害されるおそれは、成年後見制度を利用している高齢者に比べて大きいと考えられます。

例えば、配偶者を亡くした高齢者や親族との関係が疎遠で近くに身寄りのいない高齢者が高額な商品を無理やり購入させられたり、必要のないリフォーム契約をさせられたりといったトラブルが数多く伝えられています。

また、本人に対して施設の入所等の適切な処置がないまま放置されるおそれもあり、親族等の身寄りがいる場合でも、親族の一部が勝手に本人の財産を使い込むといったトラブルが生じることも考えられます。

成年後見制度を利用することでこうしたトラブルから本人を保護し、本人の代わりに適切な判断を行い本人の財産を守ることができます。

また、本人の健康状態等を考慮した上で必要に応じた施設等の入所やデイサービス等を利用することができ、本人自身の心身も守ることができます。

成年後見制度は他人の財産を管理するので注意が必要である

    成年後見人が被成年後見人の財産を無断で私的に流用したと言うニュースが、たびたび報じられています。 現在、弁護士や司法書士などの法律の専門家が成年後見人になるケースが多いのですが、他人の財産を扱う以上、細心の注意が必要ですし、無断で私的に流用する場合が増えるようであれば、制度を見直す時期に来ているかもしれません。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でお金が無い.jpをフォローしよう!

最低限押さえておきたい「成年後見制度」の知識
Reader Rating 1 Vote