マイナス金利の影響はどこまで及ぶか?

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マイナス金利は景気浮揚策か?

   
かねて日本銀行(以下「日銀」と言う)が発表したとおり、2月15日から「マイナス金利」政策が始まりました。

景気浮揚策と期待されましたが、思わぬ影響も出てきています。どこまで「マイナス金利」の影響は及ぶのでしょうか。

マイナス金利とは?

   
通常の場合、私たちが銀行に預金すると、微々たるものですが利子がつきます。

その利子も、少しずつ増えていきます。

これが、マイナス金利になると、預金している分の利子を、銀行へ払わなければならなくなります。

これがマイナス金利です。

しかし、今回の「マイナス金利」は日本銀行と各金融機関における金利の話であって、私たちが利用する銀行の預金利子がただちにマイナスになる、というわけではありません。

各金融機関は日本銀行に口座を持っており、お金を預けています。

今、預けている分には、これまで通り金利は付きますが、これから新規で預ける分についてはマイナス金利(-0.1%)が適用されるのです。

マイナス金利を導入すると

   
その「マイナス金利」になることで、どういう影響が出るのかという話になりますが、金融機関としては、日銀に預けていると、利子がつくどころか利子を支払わなくてはなりません。

そうであるなら、日銀にお金を眠らせておくよりも、企業へ貸し出して金利収入を得たり、他の投資に回したりしよう、という動きになるわけです。

つまり、市場にお金を出回らせて、企業の設備投資と賃上げを後押しし、景気を刺激しようということです。

最終的に、日銀は目標である物価上昇率2%に近づけていきたい、という意向があるわけです。アベノミクス3本の矢の1本ですからね。

マイナス金利の目的とは?

日銀の黒田総裁は、どうして今、「マイナス金利」を導入したのでしょうか。

日本の金融政策は2008年のリーマンショックからゼロ金利政策を導入してきており、もう金利はこれ以上下げられないと考えられて来ました。

だから、金利はもういじれないから、量的緩和と質的緩和で対策を講じてきたわけです。

量的緩和というのは、日銀が金融機関から国債を買い取って、銀行が自由に使えるお金を増やして市場に出回らせようとする政策です。

質的緩和というのは、日銀が金融機関から買い取る資産の対象を広げて、超長期国債やETFなどの金融商品も買い入れようとする動きのことです。

どちらも、結局のところ、市場にお金を出回らせることが目的です。

   
しかし、この量的質的緩和には、もう限界が来ていました。

今回の日銀会合でも金融緩和自体は予想されていましたが、「日銀に手持ちのカードは残っているのか?」という疑念がありました。

緩和すると言っても、次の政策はという疑問がありました。

そこで黒田総裁が放ってきたのが、マイナス金利です。

そもそも、金融政策というのは、金利を動かすことが正当なやり方です。

しかし、日本はゼロ金利政策と取っていたため、動かしようがないと思われていました。

黒田総裁が今回マイナスの壁を破ってきたことによって、金融政策は3次元になり、非常に幅を持つことになりました。

これは、今後の日銀の金融政策に大きな可能性を持たせる舵取りだと思います。

マイナス金利の影響

   
日銀と金融機関との間でマイナス金利になったということは、少なからず我々と金融機関との間の金利にも影響してきます。

すぐにマイナスということにはなりませんが、これまでより引き下げられ、将来的にはマイナスになることもあるかもしれません。

具体的には、住宅ローンや自動車ローンの金利もさらに低くなり、もちろん預金利子の金利も低くなる可能性があります。

各企業にとっても大きな影響があります。

この金利変動は、良い影響を受ける業界と、厳しい環境に立たされる業界があります。

   
 まず基本的に銀行は苦しくなります。

金利が低くなり、金利収入が減少するのであれば当然のことです(しかし、銀行は日銀からも借入をしているので、その利子がなくなると考えれば良い面もあります)。

今回の発表を受けて、銀行株は軒並み下落しました。

逆に良い影響を受けるのは、不動産業界です。

住宅ローンの金利が下がるのであれば、住宅ローンを組みやすくなり、不動産の販売がスムーズになります。

それから、観光業界や航空業界にとっても良い環境になります。

金利の引き下げというのは、円安に繋がるのです。

円を持っていても金利がつかないのだから、たくさん持っている人は他の通貨に両替したり、とにかく円で持っていても仕方がないので売ったりします。

そうすると、円安になるわけです。

実際、年明けから円高傾向にあった為替が、一気に120円を大きく超える円安方向への動きとなりました。

円安になれば、今流行のインバウンド需要で、海外からの観光客が増えます。

そのため、観光業界や旅行業界も、昨今ずっと続いているように良い環境が続くわけです。

マイナス金利の意外な影響

   
マイナス金利の導入が発表された後で、銀行、特に地方銀行の経営が厳しくなり、地方の人口減と相まって、地銀再編が加速するのではないかという論評がありました。

そして、その考えが現実味を帯びるニュースが飛び込んできたのです。

「ふくおかフィナンシャルグループ」と長崎の地銀「十八銀行」と統合が発表されました。

   
ふくおかフィナンシャルグループ(FG)と十八銀行の経営統合に対し、金融庁内では評価する声が上がっています。

地元顧客のニーズをとらえ、県域を超えた統合を決断したからです。

日銀のマイナス金利政策や人口減で、地方銀行の事業環境は厳しさを増していますが、金融庁幹部は今こそ運用の高度化や成長企業への融資ビジネスを構築する好機ととらえています。

「金太郎飴」のような横並び体質を脱することができるか、地銀の経営トップの手腕が問われています。

   
「非常に前向きな動きだ。期待している」――。

金融庁のある幹部は、九州を地盤とするふくおかFGと十八銀行が経営統合に踏み切ったことを評価しました。

その幹部は、長崎県を地盤にする十八銀がふくおかFGの傘下に入れば、県域を超えたビジネス展開を考える地元企業へのメリットが大きいばかりでなく、長崎の地域経済活性化にもプラスに働くとみています。

特に長崎県南部で十八銀と競合するふくおかFG傘下の親和銀行が、2年後に合併予定であることも、市場では意外感をもって受け止められました。

ある地銀の幹部は「当行は、1県の中で地銀一番手、二番手地銀、信用金庫、信用組合が『序列化』され、身動きがとれない。営業先の新規開拓は非常に難しい」と話します。

この地銀幹部には、十八銀と親和銀の合併構想が旧来のしがらみを打ち破る動きに映ったと言います。

日銀のマイナス金利政策を受け、事業環境が厳しさを増すなかで、今後のビジネス展開をどうするか考えあぐねている地銀もあります。

「日銀のマイナス金利政策で『外堀』は埋まった。だが、ここで統合に動けば、経営状況が非常に悪いのではと勘ぐられる」(地銀幹部)との声が聞かれます。

   
しかし、金融庁幹部は金融政策を口実に手をこまねいている地銀に厳しい視線を送ります。

「いつも日銀の金融政策のせいにしていないか。緩和政策がなければ、低金利環境がなければ儲かっているとでも言うのか」と疑問を投げかけています。

担保・保証に過度に依存しない事業性評価に基づく融資の実現、超低金利下での運用の高度化、運用におけるリスク管理体制の構築、5年―10年先を見据えた経営戦略の構築――。

デフレ脱却を目指し、日銀がマイナス金利政策を打ち出してきた今こそ「金融庁が長らく掲げてきたこれらのテーマに早急に取り組むべきではないか」というのが、同庁幹部の思いです。

   
ふくおかFGと十八銀の統合が発表された2月26日、総務省は2015年国勢調査の速報値を発表しました。

1920年の調査開始以来、初の人口減少となりました。

九州での地銀再編劇は、人口減の長崎を地盤とする十八銀が人口増の福岡を本拠にするふくおかFG傘下に入る構図でもあるのです。

人口減少が始まった日本では、減少幅の大きな地方ほど急速にビジネス圏が縮小しています。

従来型のビジネスモデルにしがみついていては、じり貧は目に見えています。

金融庁幹部は「地銀のビジネスは『金太郎飴』では意味がない。望ましいビジネスは地域によって異なる。経営統合だけが答えではない。再編は目的ではなく、あくまで手段だ」と話しています。

マイナス金利の今後

   
今回、マイナスの壁を突破した黒田総裁は、今後どのような金融政策を打ち出してくるのでしょうか。

一度マイナスに突入した金利は、さらなる引き下げがあるのか?

元日銀副総裁の岩田さんの話では、現金通貨(いわゆるタンス預金)で持つコストは、大体2%ぐらいだそうです。

現金で持っていると、盗難や紛失のリスクがあるからです。

そう考えると、2%ぐらいまでは可能性的にあるのではないか、と話していました。

今が-0.1%ですから、まだまだマイナス金利の幅は存分に有ります。

日銀は物価上昇率2%の目標を、2016年後半から2017年前半へ後ろ倒ししました。

黒田総裁は、この目標をなんとしてでも達成しようという、強い意識があるように思います。

今後が非常に楽しみです。

マイナス金利だけの問題ではない

    マイナス金利は、銀行が個人や企業に対して積極的に貸し出しを行うように働きかける目的で行った政策でした。 しかし、人口減に悩む地銀にとっては、銀行再編の呼び水になる可能性も出てきます。

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