「お金」で「損」をしないために‐覚えておくと便利な民法3

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「遺産」や「相続」に関する条文を学ぼう

今回は「相続」や「未成年」などについての条文です。

特に「相続」や「遺言」については、私達の「財産」の直接的に関係してきますので興味のある人は是非関連条文を勉強してみましょう。
 

同時死亡の推定‐民法32条の2

以前「相続」や「遺言」に関する記事を書きましたが、この「相続」に関して民法には「同時死亡の推定」と呼ばれる考え方があります。

人が死亡すると相続が開始され、相続が開始するとその人の財産に属していた一切の権利や義務が相続人に承継されるようになります。

しかし、仮に被相続人が不慮の「事故」などで死亡した場合には、通常の相続とは違ったかたちで問題が生じることがあります。

たとえば、複数の人が船の沈没事故や飛行機の墜落事故などの危難に遭遇して死亡した場合などには、死亡時の「前後の証明」が困難であることが多く、その「死亡の前後」によって相続関係が大きく左右される場合があります。

なぜならば、民法には明文の規定こそないものの、相続に関して「同時存在の原則」という考え方があるからです。

これは「相続開始時に存在していなければ、相続人となれない」という原則のことです。

このため、死亡の前後で相続に関する権利関係に差異が生じる可能性があるのです。

仮に父と母、息子と娘の四人家族のうち、父と息子が飛行機事故で死亡したとします。

この場合、父と息子のどちらが先に死亡したかによって、残された家族の相続分が変わってきてしまうのです。

このような事態を避けるために、民法は「同一または格別の原因で死亡した場合、死亡した数人のうち、一人が他の者の死亡後もなお生存したことが明らかでないときは、これらの者は同時に死亡した者と推定される」としています。

該当条文は民法32条の2です。

※32条の2(同時死亡の推定):数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

さきの例では、この「同時死亡の推定」によって、父親と息子は同時に死亡したものとされます。

その結果、父の財産は母と娘で2分の1ずつ相続されることになるのです。

ちなみに、もしも息子にも子供がいた場合、その子供が「代襲相続」によって息子に代わり相続人となります。

関連条文は887条2項です。

※887条2項:被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、または第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

つまり、この「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき」という規定における「以前」というのは同時死亡の場合も含まれるということです。

また、「同時死亡が推定」されるということは、利害関係を有する人(さきの例では遺された母親と娘)が、一方(父親)の死亡と他方(息子)の死亡の時期が異なることを証拠を挙げて証明しない限り、双方は同時に死亡したものとして扱われます。

32条の2における「推定する」とはそういう意味です。

その結果、本来ならば被相続人(父親)と相続人(息子)の関係に立つ者同士の間でも相続は起こらないことになります。

「胎児」の「権利能力」に関して‐民法721条ほか

まず「権利能力」というのは、少し難しい表現をすると「私法上の権利義務の帰属主体となる地位や資格」であると定義されます。

要は、普段私達が認識するところの法律的な「権利」や「義務」をもつことのできる能力のことです。

この「権利能力」を有する者は私達自身(「自然人」)と会社などの「法人」に区別され、私達「自然人」が権利能力を取得するのは「出生」のときです。逆に「死亡」によって権利能力を失うことになります。

ちなみに「法人」の場合は「登記」によって権利能力を取得し、株式会社であれば「清算」によって権利能力を失ったと判断されます。

では「胎児」は権利能力が認められるのかといえば、認められません。3条1項で「出生」こそが権利能力の始期であるとしているからです。

※民法3条1項:私権の享有は、出生に始まる。

しかし「胎児」であっても、例外的に「不法行為による損害賠償請求」「相続」「遺贈」に関しては胎児は「既に生まれたもの」とみなされます。
該当条文は721条、886条1項、965条です。

※721条:胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。
※886条1項:胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
※965条:第886条(及び第891条)の規定は、受遺者(=遺言による贈与を受ける者)について準用する。

つまり、これらについては本来権利能力を有さない「胎児」であっても、同じ権利能力者として扱うということです。

ただし「胎児」の場合問題となるのが、母親が胎児を代理して示談や遺産分割、あるいは損害賠償の請求をすることができるかどうかということです。

なぜなら仮に「死産」だった場合、請求した胎児の分の損害賠償額を返さなければならないのかという問題が生じる場合も考えられますし、胎児が相続人となるとしても、どの時点で
相続権を行使できるのか、仮に「胎児」が死産となって生まれてこなかった場合にどう扱うべきかなどの問題が生じます。

この問題に関する考え方には2つありますが、判例はいわゆる「停止条件説」という立場をとっています。

これらについては詳しくは述べませんが、結論だけをいうと、判例は「胎児の間は権利能力を有しないが、無事に生まれると、相続の開始や不法行為の時に遡って権利能力を取得する」という立場をとっているということです。

ただしこの場合、無事に生まれるまでは権利能力が認められないので、胎児に法定代理人をつけることはできないことになります。

つまり母親が代理して損害賠償の請求はできないということです。

特に「遺産」に関しては、胎児の出生まで「遺産の分配」を文字通り「停止する」と介する方が現実的であり、また胎児に法定代理人を置くことが必ずしも胎児の利益に繋がるとは限らないというのが裁判所の見解のようです。

未成年者の法律行為‐民法5条

未成年者が法律行為をするには、法定代理人の同意が必要となります。

これは誰でも知っていることと思います。

同意を得ずにした法律行為は取り消すことができますが、親など法定代理人の同意がある場合は「契約が完全に有効」となり、後から取り消すことはできなくなります。

ちなみに、法定代理人の同意は明示でも黙示でも有効であり、取引の相手方に対してなされても構いません。

関連条文は5条です。

※5条(未成年者の法律行為)
1項:未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。

ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

2項: 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

3項:第1項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

5条2項にいう「取り消す」ことができるというのは、未成年者またはその法定代理人の一方的意思表示によって、その行為が初めから効力を有しなかった(つまり「無効」)なものとすることができるという趣旨です。

つまり、取り消されて初めて遡って無効となり、取り消されなければ有効なままということを意味します。「とりあえず有効」などといったりもします。

この「取り消し」には「遡及効」がありますが、例外として、未成年者の利益を害しないか、または法定代理人の包括的同意があると認められるような行為は、未成年者であっても単独で行うことができます。

これらは未成年者が単独で行っても完全に有効となるのです。

たとえば1項における「単に権利を得、義務を免れる行為」とは、即ち負担のない贈与を受けたり、負担のない遺贈を受ける、あるいは債務の免除を受けるなどです。

これらは未成年者の利益を害しないと考えられるので、未成年者単独でやってしまっても問題ないということです。

ポイントとしては、この辺りの条文のほとんどが「未熟な20歳未満の者は保護する」という考え方を前提にしているということです。多少不公平であっても、きちんとした法律行為のできる「大人」よりも「子供」の権利保護を優先する傾向が民法にはあるのです。

成年擬制‐民法753条

「成年擬制」とは、未成年者が婚姻したときに、これによって成年に達したものとみなすことです。

婚姻した未成年者は法定代理人の同意なくして有効に法律行為をすることができるようになります。

※753条:未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。

この制度は、自由な婚姻生活への過度な法律の干渉を排除することで、夫婦生活を自主的に営ませることにあるされています。

なお、仮に離婚などで婚姻が解消されたとしても、成年擬制の効果は一部例外を除いて消滅することはありません。

ただし、民法以外の法適用に関しては成年擬制が適用されない場合が多くあります。

たとえ未成年で結婚してその後に20歳になる前に離婚したからといって、ほとんどの場合「未成年」として扱われることはないということだけ注意しましょう。

「同時死亡の推定」や「胎児」に関する法律は覚えておこう

滅多にあることではありませんが、不慮の事故によって相続が開始されてしまうことがあります。その場合は「同時死亡の推定」がはたらくことを覚えておきましょう。 また「胎児」が相続人となる場合もあるので、今後出産を予定している人は関連する条文を知っておくとよいでしょう。

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