「ロスチャイルド」家の軌跡2‐ユダヤ人とお金シリーズ特別編

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ロスチャイルド家の発展を大英帝国の発展とともに見ていこう

前回はロスチャイルド家の始祖である「マイヤー・ロスチャイルド」の生涯と共に、彼らの発展の経緯をみてきました。

今回はその後のお話です。ポイントとなるのはマイヤーの三男である「ネイサン・ロスチャイルド」の活躍と大英帝国の興隆です。

マイヤーの息子達によるロスチャイルド・ネットワーク

1812年、ロスチャイルド家の始祖である「マイヤー・ロスチャイルド」が亡くなりましたが、その前に5人の息子達にヨーロッパの重要拠点に分家を創設させました。

即ち、中心拠点であったフランクフルトは長男である「アムシェル」が全て継承し、次男「ザロモン」はウィーンに、三男「ネイサン」はロンドンに、四男「カール」はナポリに、そして五男「ジェームズ」はパリにそれぞれ分家を創設したのです。

彼らは相互に連絡を取り合って投資を行うため、独自の駅伝網を確保しました。

つまり当時の大国全てに拠点を設けることで、どの国が優勢となってどの国が没落していったとしても、一家の安全を担保できるわけです。

これはある意味、典型的なユダヤ人のやり方であるともいえます。

以前の記事でも取り上げましたが、ユダヤ人は各地に離散(ディアスポラ)しているため、親戚縁者や知り合いが世界中にいることになります。

その繋がりを駆使して利益を上げるわけですが、ロスチャイルド家の場合は全てがその親族でなされるので、一層強固なネットワークを築けたわけです。

特に三男の「ネイサン・ロスチャイルド」こそ、このネットワークを生かしてロスチャイルド家を世界的な大富豪に仕立て上げた人物であると評されています。

彼は、父親であるマイヤーの盟主でもあったヴィルヘルム9世にも特に信頼されていた人物ですが、一般人の感覚からすれば、かなり「エグい」ことを沢山やった人物でもあるといえます。

当時のヴィルヘルム9世は、自らの資産をイギリスに送りネイサンにイギリス公債に替えてもらうように依頼していました。

ネイサンはそれを承諾したものの、それを元手に証券売買を始めました。つまり、彼は盟主ともいえるヴィルヘルム公の資産を元手にして証券取引で資産を増やしていたのです。

また、ヴィルヘルム9世はイギリスを中心にナポレオンと敵対している勢力に盛んに資金援助を行っていたのですが、それらは全てネイサンの名義で行われました。

なぜならば、自分の名で堂々と援助を行ってしまうと、ナポレオンからさらに追い回される危険があったからです。

このために「ネイサン・ロスチャイルド」の名は、イギリス国債における主要債務者の中にも出てくるようになり、財界にも広く知られるようになっていきました。

彼はさらにこの機会を利用して、次々と荒稼ぎを重ねていったのです。

「ワーテルローの戦い」とネイサン・ロスチャイルドのやりたい放題

このように、イギリスの財界にすら影響を及ぼし始めたネイサンですが、この頃にロスチャイルド家について知っている多くの人にとって「伝説」となっている公債の売買をやってのけます。

ナポレオン率いるフランス軍とイギリス軍が雌雄を決するべく戦ったことで有名な「ワーテルローの戦い」は1815年に起こりました。

このとき、ロスチャイルド家はイギリスの公債を大量に保有していました。

この戦いで仮にイギリス軍が負ければ、公債は大暴落して同家は大きな損失を被ることになります。

逆に勝てば公債は一気に値上がりすることはわかっていました。

まずネイサンは、これまで述べてきたような豊かな情報網によってイギリス軍が勝ったことをいち早く知りました。

ここで普通ならば、値上がりに期待して公債を保有したままにするか、さらに買い増すことを考えます。

しかし彼は違ったのです。

ネイサンは、イギリスの証券取引所で保有していたイギリス公債を一気に「売却」するという手に出たのです。

なぜならば、ここで買い増すとロスチャイルド家であるネイサンが買ったという事実から、周囲がイギリスの勝利を知ってしまうと彼は考えたからです。

そうなると多くの人が公債を購入し始め、価格が上がってしまいます。

しかし逆にここで売ったならば、周囲はイギリスが負けたと思い込むだろうとネイサンは考え、実際に大量の「売り」に入ったのです。

案の定、ネイサンによるイギリス公債の売却によって証券取引所は大パニックになりました。投資家達は彼の思惑通りにイギリス軍が負けたと思い、一斉に公債の売りに走ったわけです。

そうやってイギリス公債を暴落させたところで、ネイサンはそれを二束三文でほとんど買い戻してしまいました。

そして彼が買い戻したタイミングで、イギリスの勝利が正式に伝えられたわけです。

無論、ネイサンはこれで巨額の利益を上げることに成功しました。

現在でこそ、このエピソードは多少大げさに伝えられているとされていますが、いずれにせよ、ロスチャイルド家はこのような出来事を経て、ユダヤ系であるか否かということとは無関係に突出した存在となっていくのです。

「担保は大英帝国?」‐スエズ運河の買収とロスチャイルド家

これまで述べたように、ナポレオン戦争を利用して巨額の富を得たロスチャイルド家ですが、イギリスを中心とした大同盟側だけでなく、ナポレオン側にもそれなりに色目を使っていました。彼らは戦争でどちらが買ってもいいように保険をかけていたわけです。

それでも、ネイサンのもとで世界一の海運国であったイギリス政府に「貸し」をつくることで、ロスチャイルド家はその名を世界に知らしめたといえるでしょう。

その代表例がイギリスによる「スエズ運河」の買収です。

スエズ運河は、フランスのレセップスという人物がエジプト総督(パシャ)の許可を得て、双方の出資によって1869年に完成した運河です。

これはヨーロッパとアジアを結ぶ最短の航路であり、後に世界貿易の中心的な航路になりました。

当時インドのムガール帝国領を植民地とするなど、世界一の海洋国家となっていたイギリスにとって、同運河の存在は脅威でした。

なぜならば、スエズ運河を利用している船舶の70%以上はイギリス船籍だったからです。ここを往年のライバルであるフランスに握られることは死活問題となるのであり、事実、フランスではイギリスをスエズ運河から締め出そうという動きもありました。

そんななか、イギリスにとってチャンスが訪れます。

スエズ運河の大株主であったエジプト政府が財政難に陥り、その持ち株の売却を考え始めたのです。

その知らせを聞いたイギリスの首相ディズレイリは、フランスより先にと同運河の株を買収することを決めます。

奇しくも、彼がロスチャイルド家での夕食に招かれているときのことだったといいます。

フランスが手を打たないうちにどうしてもスエズ運河の株を取得したかったディズレイリは、議会に諮問することなく独断で取引を行いました。

当然、資金はロスチャイルド家が融資することになり、イギリスはスエズ運河の44%の株式を手に入れることに成功したのです。

これによってイギリスのエジプト支配はフランスを押しのけて進むことになりました。後にこの出来事は、イギリスこと大英帝国による帝国主義政策の奔りともいわれています。

そこにロスチャイルド家が関わっていたというのは、彼らが覇権国家であるイギリスに貸しをつくり、さらなる飛躍を遂げる象徴的な出来事だといえるでしょう。

ちなみにディズレイリ首相もユダヤ系の人物であり、ロスチャイルド家とも懇意にしていました。

ディズレイリがスエズ運河買収のための資金提供を「我が国のために」とロスチャイルド家に求めると、彼らは「それではそちらの担保は何ですか?」と問うたらしいです。

それに対して交渉にあたっていた秘書官は「担保は大英帝国です」という有名な回答を残したとされています。

その辺りの細かい真実はどうであれ、このようにしてロスチャイルド家は大英帝国そのものを担保として大量の資金を融資し、その後の世界に多大な影響を及ぼしていったのです。

ロスチャイルドによる陰謀はどこまで本当か?

19世紀から20世紀にかけて、様々な方向から囁かれてきたいわゆる「ユダヤ陰謀論」ですが、ロスチャイルド家はその主役として扱われることが本当に多いようです。

簡単に言えば、世界の経済はロスチャイルドによって牛耳られており、戦争ですらも彼らの手中にあったというものすらあります。

確かに彼らは世界でも有数の資産家であり、特に20世紀前半にかけては世界一の金融一家であったことは間違いありません。

彼らの資金が回りまわって戦争に繋がっていたというのは否定しきれるものではないでしょう。

しかし、彼らが積極的に戦争などの加担していたと考えるのは無理があると考えるのが妥当であると思います。

ロスチャイルド家のようにヨーロッパ全体に拠点をもつ資産家の場合、どの国が勝利してどの国が負けても、それなりに被害を被ることになるのは明らかでしょう。

無論、彼らはナポレオン戦争で見せたように、その状況を利用して富を増やすことも忘れなかったでしょうが、損害もかなりの規模にわたることが予想されます。

損得勘定にシビアな彼らが、積極的に戦争を欲する理由などほとんどないと考えるべきではないでしょうか?

事実として、その後の二度にわたる世界大戦で、ロスチャイルド家はかなりの損害を受けました。

一部の者はナチスによって拘留されたり、身代金を支払わされたりしました。またある者は国を追われ、収容所で亡くなった人もいます。

身内にそこまでの思いをさせてまで、陰謀を企てる理由はないように思います。

やはり根拠の薄い陰謀論を無闇に語るよりは、等身大の彼らについて学ぶ方がお金についての様々な知識を得るためには有効ではないでしょうか?

ロスチャイルド家と「お金」について学ぼう

様々な陰謀論とともに語られることの多いロスチャイルド家ですが、その真実の姿に近づくことで見えてくるのは、抜群の商売のセンスと「お金」についての優れた考え方であるといえるでしょう。 安易な陰謀論に傾倒するよりは、この辺りの考え方や哲学を日頃の資産運用などの参考にすることが重要であると思います。 ※参考文献一覧 デリクウィルソン(1995)「ロスチャイルド(上)(下)―富と権力の物語 (新潮文庫)」本橋たまき訳,新潮文庫. 大村大次郎(2015)『お金の流れでわかる世界の歴史』KADOKAWA.

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