これだけは知っておきたい「成年後見制度」

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高齢化と「成年後見制度」

2012年時点で462万人いる認知症の高齢者数は、2025年には700万人になると言われています。

認知症の高齢者の財産を管理する「成年後見制度」が注目されています。

そもそも「成年後見制度」とは、どのような仕組みになっているのでしょうか。

「成年後見制度」とは?

   
成年後見制度とは、意思能力にある継続的な衰えが認められる人にいる場合に、衰えを補い、その人を法律的に支援するための制度を言います。

これには、民法に基づく法定後見と、任意後見契約に関する法律に基づく任意後見があります。

「成年後見」の3つの

   
法定後見は、本人の判断能力が不十分になった場合に家庭裁判所の審判により後見人(保佐人・補助人)が決定され類型するものです。

本人の判断能力の程度に応じて後見、保佐、補助の3類型があります。

1 後見

精神上の障害により判断能力を欠く常況にある人を対象とします。

なお、未成年者の知的障害者が成年に達する場合には、法定代理人(親権者あるいは未成年後見人)がいなくなってしまうことから、その時に備えて申請を行う必要があるため、後見開始の審判の対象には、未成年者も含まれる点に注意を要します。

後見開始の審判の請求権者は本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人または検察官です。

なお市町村長も65歳以上の者、知的障害者、精神障害者につきその福祉を図るため、特に必要があると認めるときは後見開始の審判を請求することができることとされています。

家庭裁判所の後見開始の審判により、後見人を付すとの審判を受けた人を成年被後見人、本人に代わって法律行為を行う者として選任された者を成年後見人と呼びます。

家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で成年後見人を選任します。

成年後見人については、複数の人が選任されることがあります。

また、法人が成年後見人となることもあります。

後見開始の審判については、請求権者の請求に基づいてなされますが、成年後見人の選任は家庭裁判所の職権によります。

成年後見人は成年被後見人について広範な代理権と取消権、財産管理権、療養看護義務を持っています。

なお、成年後見人が成年被後見人に代わって、その居住用の建物・敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません。取消権については、成年被後見人の日常生活に関する行為については取り消すことができません。

また、身分法上の行為や治療行為などの事実行為に関する同意など、本人の意思のみによって決めるべき事項についても、取消権や代理権は行使できません。

なお、後見人が被後見人を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません。

同意権については、保佐人や補助人とは異なり認められていません。

成年被後見人は精神上の障害により、判断能力を欠く常況にあるため、成年後見人が予め同意をしていても、同意の直後に成年被後見人が判断能力を失ってしまうおそれがあるためです。

したがって、成年後見人には同意権がないので、成年被後見人の行為については、成年後見人が同意した行為であっても取り消すことができます。

2 保佐

精神上の障害により判断能力が著しく不十分な人を対象とします。

保佐開始の審判の請求権者は本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人または検察官です。

なお市町村長も65歳以上の者、知的障害者、精神障害者につきその福祉を図るため、特に必要があると認めるときは、保佐開始の審判を請求することができます。

ただし、精神上の障害により判断能力を欠く常況にある人については、後見開始の審判を請求すべきであるから、保佐開始の審判を請求することはできません。

家庭裁判所の保佐開始の審判により、保佐人を付すとの審判を受けたものを被保佐人、保佐の事務を行う人として選任された人を保佐人と呼びます。

保佐人は、重要な財産行為について同意権および取消権、追認権を有します。

なお、保佐人が被保佐人に代わって、その居住用の建物・敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません。

保佐人の同意を要するとされる行為は、保佐開始の審判の請求権者または保佐人もしくは保佐監督人の請求により、家庭裁判所の審判で拡張できますが、被保佐人の日常生活に関する行為にまでは拡張できません。

保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず、同意をしないときは、家庭裁判所は被保佐人の請求により保佐人の同意に代わる許可を与えることができます。

被保佐人が保佐人の同意を要するとされた法律行為を、保佐人の同意またはこれに代わる家庭裁判所の許可を得ずに行った場合は、当該法律行為を取り消すことができます。

代理権は、保佐開始の審判の請求権者または保佐人もしくは保佐監督人の請求に基づいて代理権付与の審判を受けている場合には、申し立てられた特定の法律行為についての保佐人が有します。

なお、保佐人は身分法上の行為など、本人の意思のみによって決めるべき事項については同意権・取消権・代理権は行使できません。

3 補助

精神上の障害により、判断能力が不十分な人のうち、後見や保佐の程度に至らない軽度の状態にある者を対象とします。

補助開始の審判の請求権者は本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人または検察官です。

なお市町村長も65歳以上の者、知的障害者、精神障害者につきその福祉を図るため特に必要があると認めるときは補助開始の審判を請求することができることとされています。

ただし、精神上の障害により、判断能力を欠く常況にある者及び精神上の障害により判断能力が著しく不十分な者については、後見開始の審判もしくは保佐開始の審判を請求すべきであるから、補助開始の審判を請求することはできません。

家庭裁判所の補助開始の審判により補助人を付すとの審判を受けたものを被補助人、本人の行う法律行為を補助する者として選任された者を補助人と呼びます。

補助は事理弁識能力の低下が後見や保佐の程度に至らない軽度の状態にある者を対象としており、自己決定の尊重の観点から、後見・保佐とは異なり本人の申立て又は同意を審判の要件とします。

補助開始の審判には、必ず併せて同意権付与の審判あるいは代理権付与の審判の一方又は双方の審判がなされます。

補助人の権能は補助開始の審判を基礎としてなされる同意権付与の審判や代理権付与の審判の組み合わせによって内容が定まります。

したがって、被補助人に同意権付与の審判と代理権付与の審判の双方がなされている場合には、その補助人には同意権・取消権・代理権が認められ、同意権付与の審判のみの場合には同意権・取消権のみが、代理権付与の審判のみの場合には代理権のみが認められることになります。

ただし、いずれの場合も身分法上の行為など、本人の意思のみによって決めるべき事項については、同意権・取消権・代理権を行使できません。

なお、補助人が被補助人に代わってその居住用の建物・敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません。
 

「成年後見制度」の問題点

後見人の担い手は広がりつつありますが、一方で家族が後見人となり財産管理をする傍らで、本人の財産を侵奪したり、悪徳リフォーム業者が認知症高齢者の任意後見人になり高額の契約を結んだりする等の事例があるのも事実です。

年金生活である知的障害者の家族が、年金収入を家族の生計に充てている事例があるとの指摘もされています。

監督人がいない場合、後見人を家庭裁判所が監督する建前ですが、裁判所の人的資源の限界もあって十分な監督ができていません。

具体的な事例としては、後見人である親族による金銭の着服が発覚し刑事事件となるケースとして、福岡県で知的障害の実兄2人の成年後見人であった実弟が、ヤミ金業者らと共謀して多額の預金を引き出したとして、業務上横領罪を適用し、福岡地方検察庁特別刑事部によって逮捕・起訴されたことが、報じられています。

また広島高裁で、財産管理能力を考慮せずに親族の一人を成年後見人とした結果、財産を着服されたとして、広島家裁の過失を認める判決が出されています。

このような財産着服は、最高裁家庭局によると、2010年6月から2011年3月の10ヵ月間だけでも182件に及ぶと言います。

最高裁は、信託制度を活用する形での財産保護策を検討しています。

一方専門職による職業後見人が、不当な報酬額を取得し、財産を侵奪したりするケースとして、社団法人成年後見センター・リーガルサポート東京支部の元副支部長である司法書士が、任意後見契約において設定された報酬額に加えて日当等を請求し、結果的に年間500万円程度の多額の報酬額を不当に取得したとして問題となりました。

この司法書士は、2006年春に成年後見に関する書籍を発行するなどの活動を行っていました。

また、東京弁護士会元副会長の弁護士が、2009年から12年までの間に、成年後見人として管理していた千葉県に住む女性の定期預金を解約し、約4200万円を自分の口座に入れるなどして横領しました。

これら職業後見人による財産着服についても、信託制度の活用が最高裁判所から求められましたが、日弁連の反対により頓挫しています。

このような状況を踏まえて、後見人としての資質の向上や倫理観、懲罰制度についての議論が起こっており、特に裁判所では、士業者団体による後見人候補者名簿の作成に当たっては、名簿提出をする団体の研修内容や組織体制を重視してきました。

また士業者団体に対し、裁判所が適切な懲罰制度を設けることなどを求める例もでています。

また民間団体による市民後見人が後見業務を行う場合には、複数の法人で相互に活動をチェックする体制をとるなど、権限の濫用を防止するための試みも行われているとの報道がなされています。

「成年後見制度」の整備が求められる

認知症の高齢者を守るはずの「成年後見制度」ですが、不具合が生じているため、早急な法的整備が求められています。

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