消費税の改定に伴い軽減税率の導入が検討されている理由とは?

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日本での軽減税率は現実的か?

 2017年度から、消費税が現在の8%から10%に引き上げられる予定です。

これにより生活者の「お金がない」悩みに拍車をかけるのか?

そこで、俄然クローズアップされてきているのが、一定の商品に「軽減税率」を導入するかどうかという問題です。

既に欧米諸国では一般的な軽減税率ですが、果たして日本での導入は可能なのでしょうか。

そもそも軽減税率って何?

 消費税に限らず、日本には多くの種類の税金がありますが、一つの税金は同じ商品・サービスに対して、同じ税率で課税するのが一般的です。

例えば物価のバロメーターであるガソリンには、「ガソリン税」と「石油税」と「消費税」が課税されています。

具体的な課税額ですが、1リットル当たりのガソリン税が「53.8円」、石油税が1リットル当たり「2.54円」で、この税額は沖縄県を除いて全国一律です。

ちなみに、沖縄は他の都道府県よりも、1リットル当たり7円安くなっていますが、これは「沖縄の復帰に伴う特別措置法」が適用されているためです。

また、ガソリンにも当然ながら消費税が課税されていますが、その税率はガソリン税・石油税・ガソリン本体(原価)の合計額に対して8%です。

もちろん、これも同じ税率となっています。

 しかし今回、自民党・公明党の与党税制調査会において、商品に課税される消費税について、消費税を8%から10%に引き上げるタイミングで、今まで日本では当たり前だった「消費税一律課税」の原則を変更しようという意見が出てきています。

つまりある一部の商品に対して、他の商品の税率よりも軽くしようとしているのです。

これが、今議論になっている「軽減税率」と言われるものです。

そもそも軽減税率の狙いとは?

古今東西の国々の政治が担っている一番大きな役割は、広く国民から公平に税金を徴収した上で、必要な所に的確に配分するあるいは、公共・公益のために使うというと言えます。

言い換えれば、税金を徴収する際にも、また税金を使う際にも、極力国民の不公平感をなくし、国民の不平・不満が生じないように配慮するということです。

前に「一番の役割」と書きましたが、むしろ政治の国民に対する「ほぼ唯一の役割」と言ってもいいかもしれません。

もちろん、消費税を徴収されることに、国民は一定の理解をしていることは事実です。

しかし、現在「8%」の税率が「10%」に引き上げられた場合には、特に低所得者層から、新たな税率は重く感じるという声が出てくることも十分に考えられます。

過去の政権を考えればわかるように、新たな税を導入する、あるいは税負担を国民に対して口にした場合、政権の存続問題と直結した例は、数多くありました。

税に対する不満の声が大きければ大きいほど、国政選挙への影響が大きくなることが考えられますから、決して無視はできないわけです。

そこで、与党税制調査会は、ある商品に対する消費税の税率を据え置くか、あるいは引き下げることで、その不安や不満を解消しようと考えたのです。

このことが、まさに軽減税率導入の狙いというわけです。

海外での軽減税率の実態とは?

 それでは、いち早く消費税を導入している海外では、軽減税率の実情はどうでしょうか。

まず消費税の税額ですが、例えばイタリアは22%、フランス・イギリスは20%、ドイツは19%、ロシアは18%、アメリカは9.44%(売上税)と、いずれも日本よりも消費税は高い税率になっています。

そして、注目すべきことは、全ての国で軽減税率が導入されている点です。

食料品を例にとると、イギリス・ブラジル・インドは非課税(0%)、イタリアは野菜や砂糖は10%ですが、パスタ・チーズ・パンは4%です。

またフランス5.5%、ドイツ7%、アメリカ5%などの税率でいずれも軽減されています。

さらに、書籍・新聞・雑誌もだいたい食品並みの税率であり、フランスは2.1% の税率です。

ユニークなイギリスの軽減税率

 その中でも、特徴的な軽減税率を導入している国が数多くありますが、その中のイギリスの例を見てみましょう。

まず、お持ち帰り商品について「フィッシュ&チップスバーガー」には20%課税されますが、スーパーのお惣菜には課税されません。

なぜこのような違いがあるのかというと、それは商品の温度に関係しています。

つまり、温かい持ち帰り商品に対しては標準税率が設定されていますが、スーパーのお惣菜コーナーにあるような常温の商品については、軽減税率を適用するという考え方です。

言い換えれば、販売時点で気温より高い温度の商品に対しては、標準税率を適用しようという考え方なのです。

 またお菓子について、ケーキやビスケットには軽減税率が導入されています(0%)が、それ以外には適用されておらず、そのまま20%課税されています。

これはイギリスの食文化と関係があると言われています。

イギリスでは、アフタヌーンティーにケーキやビスケットを食べる文化があるため、その文化を守ろうとする意図があるのです。

しかし、ケーキ・ビスケット以外のお菓子は、ある意味で「ぜいたく品」という考え方があるので、課税をしようということです。

このように、軽減税率はその国の文化や習慣などを映す鏡のようなものだと言えます。

日本での軽減税率の問題点とは?

 このような海外での実態を踏まえれば、日本でも軽減税率を導入しようという発想が出てくるのも、十分理解できるところです。

しかし、今の日本の現状をよく考えると、越えなければいけないハードルが三つあるのです。

 まず一つ目のハードルは、軽減税率をどの範囲に限定するのかということです。

当然ながら、その範囲が広ければ広いほど、税収が減少することになります。

かりに食料品に限定して軽減税率の導入を考えた場合でも、色々なパターンが考えられます。

現在税制調査会が考えているパターンは8とおりですが、税収の減少額は、全ての飲食品を対象とする最高の「1.4兆円」から、精米だけの場合の最低「400億円」までと、かなりの差が生じてしまいます。

どのパターンにしても、この税収の減少をどこかで穴埋めしなければならなくなり、与党はもちろん政府も頭の痛いところです。

さらに、この8とおりうちのどれにするか、自民・公明両党でその思惑も相まって議論が紛糾している状態です。

もちろんこの裏には、業界団体からの要望などがあります。

当然税率が上がれば、その商品の売り上げが落ちることが考えられます。

そこで、各業界としては、「うちの商品については、軽減税率の導入を検討していただきたい」と思うのは、当然のことです。

 二つ目のハードルは、食料品だけに軽減税率の範囲を限定することに反対の声がある、ということです。

前述の外国の例のように、「新聞・雑誌」などにも導入したらどうかという意見も根強いのです。

また、新聞や雑誌などという文化的なものはもちろん、教科書・辞書・文具といった教育に関するものについても、一律に消費税を課税するのはどうかという意見も少なくありません。

特に、低所得層を救済する考えからすれば、子どもに必要となる教育関連商品に課税することには、ためらう意見もあります。

 そして三つ目は、同じ消費税が複数の税率になった際に、特に中小企業、個人商店の負担が大きくなるのではないかという危惧があることです。

例えば、個人商店で税率の違う商品を一度に購入した場合、レジでの計算はもちろん、帳簿記載や税申告の際の煩雑さは想像以上のものだと考えられます。

ご承知のように、消費税は、税を負担する人と納税をする人とが異なる「間接税」です。

消費税が課税された商品を販売した業者は、一端購入者から消費税を預かり、それを税務署に申告・納税するというシステムになっています。

この一連の流れの中で、消費税率が一律であればそれほどの問題は生じないのですが、もし税率が複数あった場合には、徴収するにしても申告・納税するにしても、業者の抱える負担は想像して余りあると言えます。

もしこれが、イギリスの例のように、同じ商品が温かい場合と常温である場合との税率が異なるとなったら、業者はますます混乱することでしょう。

 以上の三点から考えると、思った以上に軽減税率導入のハードルは高いと言えます。

軽減税率の導入時期は?

 以上のような難問を克服してまで、今このタイミングで軽減税率を導入するメリットが、果たしてあるのかと言う声も少なくありません。

確かに、課税率を10%、軽減税率を5~8%とした場合、業者の設備投資やマンパワー等を負担するというデメリットは、軽減税率導入のメリットよりもはるかに大きいのではないかと言えるでしょう。

また、海外の例を見ればわかるように、ほとんどの国で消費税の税率は、10%台後半から20%台です。

この税率だからこそ、軽減税率を導入する意味があるのかも知れません。

今後日本で消費税が10%になって、ある商品が8%に据え置かれたとしても、それに対してどれだけの「軽税感」を感じるか疑問です。

その2%の差額のために、販売業者などに負担を強いて、軽減税率を創設するメリットはあるの否か、今一度考える必要があります。

軽減税率の導入は時期尚早か?

国民にとって、税金、特に消費税は日常生活に直結する問題ですから、出来るだけ国民に負担がなく、国民の多くから理解される「軽減税率」の導入が望まれます。

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