オリンピックは「無駄使い」なのか?夢を追うための投資は絶対に必要だ

shutterstock_270427904

現在のオリンピックは何種目あるのか?

2020年、東京で開催される予定の、第32回夏季五輪大会。

東京は1964年に開催していますので、56年ぶりということになります。

前回の第18回大会の参加国は93ヵ国、163種目。

ちなみに、この年の国連加盟国は累積で115ヵ国ですから、約80%の国連加盟国家が参加したことになります(ただ、スイスは2002年に加盟したばかり)。

さて、問題は競技数と種目数です。

2012年のロンドン大会では、26競技・302種目にまで増やされました。

26競技とは、次のものです。

陸上(男女とも約51競技)★
体操(体操競技、新体操)★(トランポリン)☆
ウエイトリフティング★
自転車競技☆
馬術☆
近代五種競技☆
トライアスロン☆
射撃☆
アーチェリー☆
水泳(競泳・飛込み・水球・シンクロナイズドスイミング)★
ボート(14種目)★
セーリング(11種目)☆
カヌー☆
フェンシング(3種目)☆
レスリング(2種目、階級別)★
ボクシング(男女10階級)☆
柔道★
テコンドー☆
テニス☆
サッカー☆
ホッケー★
バスケットボール☆
バレーボール★
ハンドボール☆
卓球☆
バドミントン★

上記では★はオリンピックがメイン大会、☆が独自の世界大会を有し、人気が高い、という分け方にしています。

オリンピックは世界中の選手が同じ期間、同じ場所で競技を行うわけで、そのための施設や競技場などを整備しなければなりません。

また、種目によっては、五輪後に利用されない競技場も出てくる可能性があります。

特に、☆の競技はオリンピックよりもワールドカップ、あるいは欧州だけ、北米だけといったプロリーグなど、開催地には馴染みのない場合もあります。

競技人口が極端に少ないにもかかわらず、過去からの伝統でどうしても開催しなければならない競技、については、開催国の五輪後の施設維持費をどうするのかも検討しなければなりません。

確かに、オリンピックには多額の財政負担が生じる「負」の面は必ず付きまとうのです。

アテネも北京も、五輪後の競技会場は悲惨な状況に

2004年アテネ五輪、2008年北京五輪は、まだまだ記憶に新しいシーンが残っている方も少なくないでしょう。

水泳の北島康介選手、女子柔道の谷本歩実選手など、16もの金メダルを獲得した日本選手の活躍後、アテネは深刻な経済不況に見舞われます。

そもそも、アテネ五輪の開催費用はいくらかかったのでしょうか?

アメリカの経済誌「Fortune」(2012年6月11日号)によれば、直近の3大会は以下になります。

2004年 アテネ五輪 約140億ドル(約1兆4,000億円)
2008年 北京五輪 約430億ドル(約4兆3,000億円)
2012年 ロンドン五輪 約400億ドル(約4兆円)

レートは1ドル=100円で計算したもの(ロンドン五輪ではこの程度の為替レートだったことを考慮する必要があります)。

まず、アテネ五輪の開催費用ですが、実はこれはオリンピック関連費用のみであり、アテネの国際空港整備や地下鉄建設といったインフラ整備費用は含まれていません。

アテネ五輪後、多くの競技場の中でも野球場は雑草が生い茂り、廃墟と化しています。

その他の競技場の「宴の後」の悲惨な状態は、見る影もありません。

ですが、アテネは「オリンピック費用」の重さに耐えきれなくなって、破綻の道へと転がっていったのでしょうか?

現実は違うのです。

アテネ2004年の負債額(国家赤字)は1,831億ユーロ(22兆8,875億円=1ユーロ125円で換算)です。

つまり、オリンピックで生じた費用は、赤字財政の22分の1にしか過ぎませんでした。

アテネは、そもそも赤字財政の蔓延と国家経営の「ゆるさ」に浸っていたため、五輪で経済浮上を狙えると甘く見通しを立てていたため、当然の結果が生じたに過ぎなかったのです。
 

中国はオリンピックを利用して、国のレベルアップを図ったが、その後の国家運営は難しい状況だ

さて、2008年の北京五輪ですが、中国の政局に絡む大変難しい問題があります。

中国初のオリンピックは、成功裏に終わったのですが、中国では2010年に上海万博を行い、世界からの観光客を集める、という仕掛けにしようとする経済運営に一役買ったのは正解、と言えるでしょう。

ただ、問題は中国にとって北京も上海も「西方の一都市」に過ぎず、中国全土の経済が潤ったという結果にはならなかった、という問題が出てきました。

例えば、北京オリンピックのメインスタジアム「鳥の巣」は、建設費500億円でしたが、これはあくまでも中国の人件費と日本の人件費を比較した場合、当然差が出ることは予想されたことです。

また、北京五輪に関して、総費用の計算は大変難しくさせているのは、複雑な理由によります。

まず、大きな成果としては「中国国民が自信を持った」という点です。

五輪大会を主催することは、世界の選手や観客、首脳レベルの来賓を迎えるという、一大イベントであり、中国の歴史を見れば「朝貢(外国の使節が来訪して、貢物を持ってくること)」そのものに映ります。

そのため、北京政府は大きな建物を作ろうが、五輪後のことなどは考えることを必要としないわけです。

中国の場合は、2008年、2010年の大イベントですっかり建設ブームになり、北京や上海に追いつけとばかり、各省(日本の県にあたる)政府が開発に莫大な予算を費やします。

その結果、過剰な鉄鋼生産や石炭火力発電など、大気汚染が深刻になり、2008年に国家副主席になった習近平氏は2013年に主席になった途端に「綱紀粛清」を始めます。

もう、五輪も万博も終わったのだ、賄賂や贈賄で私腹を肥やした企業幹部、政府幹部は粛清せよ、と大号令をかけ、経済を一気に「冷やして」しまいます。

ここまでの時系列を見れば、中国には中国の事情があり、大きなイベントに乗じて政府は海外の自由な風に警戒し、費用対効果を読みにくくしている、という見方もできるのです。

2020年の東京大会は、日本の国土保全に一石を投ずる可能性が高い

アテネ、北京に続いて、ロンドンはすでに3回目の五輪、ということでその運営には非常に手慣れたものがありました。

アテネや北京が「国家を挙げて」開催したのとを比べると、ロンドンは「ロンドン市」主催といった風合いが強く、ロンドンの様々な観光地や景色をいかにスポーツ競技にマッチさせ、ロンドンのPRに努めたか、という点が非常に高かったのが特徴でした。

マラソンコースに、国会議事堂(ビッグベン)近くを選んだのもそのひとつ。

ロンドンはすでに、世界の大都市なのにもかかわらず、もっと観光客を呼び込み、都市景観を放映させることで、ロンドンへの投資や不動産、総じた経済効果を狙った総合企画であったことは、容易に想像が付いたといえ、それが成功したと考えるべきです。

さて、東京です。

2020年のオリンピックについては、ロゴマークやメインスタジアム問題ばかりがクローズアップされてきましたが、実は着実に東京と首都圏の交通網の整備、あるいは東京を発信する観光庁が、非常に頑張っていることを知っておくべきでしょう。

まず、五輪競技場の建設費用ですが、1,500億円になろうが、2,500億円になろうが、大事なことはそれが7月という夏の暑さと降雨の季節に開催できる建物に仕上がる、というメリットをまず考えるべきでしょう。

ここ数年の地球温暖化の結果、日本に上陸する台風、局地的に発生する豪雨や竜巻、洪水、強風など、自然の猛威に耐えうるだけの建築物をいかに作るか、をまずは競技場で作ることで、日本のゼネコンや建築士は大きなノウハウを手に入れることになるでしょう。

もう一つは、アクセスという問題です。

道路網の整備、鉄道網の利便性の向上は、単に駅を作り、改札を整備するだけではなく、いかに世界の人に複雑な鉄道利用をうまく伝える情報技術を確立させるか、大変な仕事になっていくでしょう。

これは大きなビジネスチャンスでもあり、日本人の能力が問われることになります。

もう一つは、逆説的な問題です。

「費用を安く抑えるだけのオリンピックでよいのか」、という命題です。

東京は2度目の開催であり、アテネや北京とは五輪を開催する「意味」が異なります。

ロンドンは世界に開かれた大都市として有名ですが、東京は「極東のエキゾチックタウン」という面がまだまだぬぐえません。

歴史的な建物が多く、海外に比べ治安が良く、空気も水も安心できる数少ない1,000万人都市。

そして、世界の先進諸国の中で、地域間の対立が最も少ない(イギリスとイングランド、カナダのフランス語圏と英語圏、アメリカの民族間の対立など)国であり、地域によって歴史も風土も違うにもかかわらず、日本語が通じるという特殊な国でもある、という面があります。

東京五輪では、競技に入る前に全国でキャンプインが行われるわけですが、これも地方のスポーツ振興や施設建設に大変役立つきっかけとなります。

むろん、政府予算から、かなりの出費は必至ですが、五輪に掛ける費用は無駄とは言えないのではないでしょうか。

地震に強く、災害に強いインフラの再整備、国土保全の面でも、今の日本を見直すよい機会になるのは間違いありません。

政府が勝手にやるのが「五輪」ではない。みんなが興味を持つことで、新しい文化ができる

ここまで、いいことづくしのような論評を連ねてきました。 もちろん、五輪をやるなら福祉予算に回せ!という方も大勢いるのは無理もありません。 ですが、オリンピックが一過性のものである、と考えるのではなく、作った後何に利用するのか、という知恵やアイデアを出すのは、国民自身の問題と言えるでしょう。 1972年に札幌で冬季五輪が開催されましたが、その後札幌の五輪施設の中で、最も有名になって残っているのが「ジャンプ台」です。 長野五輪で日本選手が金メダルを取ったあと、現在葛西選手が「レジェンド」と呼ばれ、世界で大活躍しているのは、札幌の中心部から車で15分から20分ほどにある「宮の森シャンツェ」「大倉山シャンツェ」です。 この2つのジャンプ台は、札幌の企業が主催する大会にも毎年使われ、葛西選手をはじめ、世界のトップ選手が次々と生まれています。 葛西紀明選手の所属は、札幌の住宅メーカー「土屋ホーム」。 地元の住宅メーカーは不況倒産が多く発生しましたが、葛西選手の活躍はこの企業を安定飛行に導いています。 つまり、こういうことが言えるでしょう。 地元経済にも大変な恩恵を与えるのが、オリンピックであり、それが続いていくことこそが「レジェンド」となるのです。 施設を生かすも殺すも、私たち国民の知恵と行動に委ねられる、それがオリンピックなのです。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でお金が無い.jpをフォローしよう!

オリンピックは「無駄使い」なのか?夢を追うための投資は絶対に必要だ
Reader Rating 4 Votes