日本の国家予算は、およそ100兆円。
より正確に言うと、2015年4月に成立した一般会計予算の総額は、96兆3,420億円です。
国家予算は収入と支出が同額なので、およそ100兆円のお金が、財務省の金庫に入ったり出たりしているような感覚になりますが、実際にはこれだけのお金が「刷られている」わけではありません。
財務省の話では、収入(歳入と言います)が約54兆円。これは税金ですので、福沢諭吉の顔が入った1万円札が国に入ってきますが、残りの約42兆円は「国債」を売ったお金です。
国債には「利付国債」(半年ごとに利子がつくもの)と「割引国債」(額面より安く購入し、満期に額面同額の支払いを受けるもの)の2種類があります。
これは短期もの(1〜2年)から10年を超える長期ものまでいろいろあり、銀行や証券会社などで買うことができます。
面白いのは、国債を買っても「証書」が貰えない、という点です。
現在の国債は、電子マネーのようなもので、国は発行する印刷代さえ不要。
ですから、ジャブジャブ発行しても、誰も分からない可能性もあるわけなのですが、これを大量に購入しているのは、実は日本銀行なのです。
日本銀行の仕事は、まず全国の銀行にお金を貸すことです。
銀行は日本銀行からお金を借りて、それを元手に商いをするのですが、商い上手な銀行は安い金利で企業や個人に貸し付けることができ、回収もスムーズです。
反対に、商売があまりうまくない銀行の場合は、日銀からより多くのお金を借りなければならなくなります。
面白いのは、日銀も銀行からお金を借りることことがある、ということ。
これは、国内に流通するお金の量を一定の数値にすることで、極端なデフレやインフレを防ぐ調整を行う意味があるのです。
ところで、国の借金の話ですが、そもそもなぜ1,000兆円もの借金があるのでしょうか?
国債の中で大きいのは「建設国債」と呼ばれるもの。
つまり、道路建設費や橋脚、あるいは山を削り、土砂崩れに備える工事や、護岸工事などは毎年必ず必要になります。
また、昨今は阪神淡路大震災や、東日本の大震災、また全国で起こる気象異変による川の氾濫や、道路の陥没などで、100億円単位のお金が必要になっています。
ただ、これらは日本だけの現象でしょうか?実は中国や欧州、アメリカでも干ばつや大地震、ハリケーンや豪雪後の急な鉄砲水などで、様々な緊急工事が必要になっています。
こうした工事のほか、道路の補修や空港設備の拡張など、時代に合わせた出費はどの国でもかかっていきます。
現に、アメリカの借金は5,000兆円にも達する、という事実をご存知でしょうか?
その内訳は、ワシントンD.C.の連邦予算も多額の国債で賄われているのですが、隠れた債務の中でも、州や市が発行する債券が数多く存在しています。
2013年7月18日、アメリカ・ミシガン州のデトロイト市が財政破綻したことを覚えている方も多いでしょう。
かつては世界一の自動車メーカーであり、アメリカナンバーワンのゼネラルモーターズ、通称GMの本拠地として名高いこの街は、かつて1950年代は180万人もの人口を擁していましたが、現在は70万人とも言われるほど激減。
その理由は、紛れもなく自動車産業の衰退です。
1980年代の日本車ブームの影響の次に、GMの労働者によるストライキや年金と健康保険を巡る問題が浮上しました。
日本では考えられない話ですが、GMに勤めた人々の終身年金と医療費のために、年間70億ドルを支払ってきました。
70億ドルは日本円で8,400億円(1ドル=120円換算)です。
そのため、GMが生産する車1台には、1,400ドル余分に費用がかかっており、アメリカで生産するトヨタの場合の14倍にも及びます。
結果は当然のごとく、GMの破綻へと導きました。
アメリカ大統領、バラク・オバマは当時の日本円で8兆円をつぎ込み、GMを再生させましたが、デトロイト市は税収を失い、医療費や年金をGM退職者に支払う羽目に陥りました。
警察官の10人に4人はクビになり、郊外の住宅は廃墟と化しました。
現在のデトロイト郊外は、麻薬と犯罪の街となり、無人の家は警察の手で放火されています。
警察さえ、廃墟が犯罪の温床になる前に燃やしてしまうしか、方法がないのです。
日本では、北海道の夕張市が財政破綻したことが知られていますが、だからと言って、犯罪が激増したという話は聞きません。
理由は炭鉱収入が主だったことから、炭鉱閉鎖とともにどんどん人口流出が加速しましたが、デトロイトはアメリカ有数、いいえ、世界有数のGM本社ばかりでなく、フォードやクライスラーまでもが本拠地としている、モーターシティそのものなのです。
現在進行形の産業が、放漫経営と労働組合の傲慢といえる要求に、没落していく…その大きな原因は「年金」と「医療保険」だったのです。
特に、医療保険は深刻です。
日本の場合、誰もが保険証を持ち、1割から3割負担という制度を理解しています。
そのため、所得に応じて健康保険料を毎月払い続けなければなりません。
それは所得税や消費税などとは別枠、国民が支払った保険料収入で、病気治療費や怪我の処置費用などに当てられます。
年間の国民医療費…いまやその額、100兆円を軽く突破しています。
デトロイト市は、市民の医療費を予算の大部分に費やしている有様なのです。
2015年10月、突然降ってわいた「療養費詐欺」事件がマスコミで一斉に報道されました。
年間40兆円にも上る国民医療費。
そして50数兆円にも及ぶ年金と合わせて、生活保護費用など、日本の社会保障費は年間100兆円を超えています。
こうした費用は、残念ながら社会の格差が大きくなるにつれて、どうしても膨れ上がっていく傾向にあります。
特に、健康だった人が、交通事故に見舞われ障害者となってしまったり、がんに侵され、治癒したのにもかかわらず会社を退職せざるを得なくなることで、今まで普通にあった所得がゼロになってしまうケースが山のように出てきています。
こうした場合、民間の生命保険や損害保険は、一時的な収入源にはなりますが、30代・40代と働き盛りの世代は、その後40年も50年も長い人生を生きていかなければなりません。
そのためのセーフティネットは、非常に薄く、労災年金も十分な額ではなく、一般の雇用制度もこうした人たちへの理解が不十分なのです。
そんな中、起こったのが「医療費の詐欺」。
個人病院の8割が赤字経営、ともいわれる日本。
それも歯科クリニックの経営難は想像を超えたものがあります。
「内科」の看板を掲げた街中のクリニックで、冬場にもかかわらず患者がまばらなところは、まず倒産圏内といって間違いはありません。
それなのに、病院の壁には「ヤナセ」のカレンダーが掲げられていて、高級車ベンツのカタログなどが待合室に置かれているところなどは、特に問題大有りです。
今回の事件は、レセプト詐欺と言われるもの。
レセプト、とは診察した内容を、一つ一つパソコンに打ち込み、点数化して窓口で3割ないし1割を患者に支払ってもらい、その残りを国民健康保険団体連合会などに、請求するものを言います。
外科などは、医師が数人、看護師が数人で一人の患者に執刀を行いますが、その内容は全て記録役の看護師がメモしていきます。
ところが、一般内科の場合、医師も看護師もカルテの打ち込みは行っても、患者の容体全てを記録する義務はありません。
そのため、保険証を持った人を大勢集め、その保険証のコピーをもらって、診察したように見せかけて、パソコンに治療行為をでっち上げるのは簡単です。
毎日全国で数百万人ものレセプト、そして入院患者から通院患者まで、中には一人で何枚ものレセプト対象になる患者もいるのが現実。
だからこそ、手数料を支払って、保険証を借り集めて、医療費を国からバックさせるのはいとも簡単にできてしまいます。
医療が犯罪に付けねらわれる現実…これは国の借金よりも数倍も数十倍も恐ろしい現実だと言えるのです。
世界中見て、日本の医療制度は素晴らしいもの、と言えます。
その理由は、医師を育てる大学教育がしっかりしていること、そして医師といえども年収何億円という億万長者は非常に少ない現実です。
その点、アメリカの医療制度は、一部の医師が数十億円もの年収を稼ぎ、その患者もビリオネアですから、金持ちが金持ちにヘルスケアを行ってもらう一方で、州単位の健康保険や、キリスト教健康保険制度などに加入している人が、指定された病院で臨床してもらい、療養する…といったつつましい医療を受けている「医療格差」が現実です。
それどころか、黒人社会の多くは低所得者層がジャンクフードを食べ、満足な教育も受けられず、その結果健康という定義すら知らずに、肥満体のライフスタイルを謳歌するのです。
もちろん、人生と肥満とは一見なんの関係もありません。
アメリカは、国民医療費がいくらかかっても、連邦政府には関係がありません。
なぜなら、日本のような健康保険制度はないからです。
ならば、誰が国民の健康を守るのでしょうか?それは、州であり、群であり、市なのです。
ですから、連邦政府の国家予算が2,000兆円もの赤字で済んでいて、州や群や市の借金は3,000兆円にも及ぶのです。
欧州でも同じことが言えます。
イギリスでは、国民医療サービスがありますが、もし風邪をひいたと思えば、まずかかりつけ医院に通います。
そこでは、次回の診察日が決められます。
もし、自由診療を選ぶならば、翌週には紹介状を手にして、病院を選んで通院することが可能です。
ですが、国民医療サービスを選ぶ場合は、医療費は無料です。
ただ、次回の診察は指定病院で、半年後なのです。
実際に欧州各国の医療制度は、似たり寄ったりなのは、自由診療という制度があるからです。
国民に等しく医療制度を受けさせようとするのが、西洋の考え方。
ですが、これが国の膨大な借金を「生産」しているわけです。
日本国債を購入しているのは、誰でしょうか?その3分の1は日本銀行です。
そして、国債を購入しているのはほとんどが日本国民であって、国の借金は「国が国民からお金を借りている」というわけなのです。
これが、海外の銀行やら、海外の中央銀行ならば、債権者が外国企業や外国人です。
そうなると、絶対に借りたお金は返してしまわなければ、国債の価値は下がってしまいます。
日本の借金が1,000兆円あろうが1,500兆円あろうが、日本国民が自前で国債を購入しているならば、理論上は問題はありません。
問題を整理しよう。国民に稼ぐ力があれば、国の借金は関係ない
日本は本当に借金で破綻しそうなのでしょうか? 実際はそうではありません。 例えば、国債を低利で発行したとして、日銀がインフレ社会に持っていくと、市中金利が上がります。 そうなると、低利で発行していた国債の償還は、インフレによって、ただ同然の利子で済むわけです。 ですが、医療費や介護福祉費などは、次元の違う借金になりつつあります。 健康で長寿、というのは誰もが理想とするところでしょう。 ですが、日本社会で生きていくには「健康で働いて、長寿」でなければなりません。 お金の額ではなく、誰もが死ぬまでお金を稼げる術を持っていること、これが日本人の宿命なのです。
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